第二章

第52話 一度目の進行

 ハンマーを振るう。そして、雑魚が舞う……。


「……ふう~。切りがないな」


 今俺は、魔物に囲まれていた。

 今いるこの森は、魔物が跋扈している。そして、俺は駆除対象となるみたいだ。

 昼間であれば、魔物との遭遇率は低いので問題ないんだけど、夜間になると遭遇率が高くなる。

 俺には、結界術という防衛手段もあるけど、流石に一晩放置すれば破られてしまう。

 そういうわけで、今は近寄って来た魔物を片っ端から屠っている。


 今俺は、大岩を右背にし、結界術を左背にして、前と左右からの襲撃に対して迎撃を行っている。

 一応、怪我を負ったら結界術内に逃げ込む予定だ。

 幸いにも、今のところ雑魚しか来ない。攻撃される前に倒せている。

 今はまだ、森の外縁部なんだ。当然と言えば、当然か。

 しかし、数が尋常じゃない。数十匹はいると思われる。


「森の中心部から出る時は、できるだけ戦闘を避けて移動したんだけど、森の中心部へ向かうとなると、魔物の方から寄って来るのか……」


 俺には、一応〈スキル:隠密〉があり、遭遇率を下げられた。

 気配を消して進んでいたのだけど、気が付いた時には囲まれてしまっていた。

 ただし魔物の方も、気づいていなかったので、偶然の遭遇……エンカウントになるんだろう。

 それで戦闘になったのだけど、音を聞きつけてか、他の魔物が寄って来た。その後は、雪だるま式だ。

 そして、今の状況に至る。


 まあ、愚痴っていても仕方がないので、迎撃を行う。

 しかし、この襲撃は何時まで続くんだろうか……。





 朝日が昇る頃になると、魔物は来なくなっていた。

 俺は結界術の中に入り、座り込む。


「ふぅ~……。森の中心部へ向かうとなると厳しいかもしれないな……」


 異世界転移直後に遭遇した、熊やクワガタ、ナメクジ等を思い返す。それと、アンデットとゴブリンだ。

 あの時は、『遺跡の池の水』というアドバンテージがあった。

 ただし、食糧不足という問題も抱えていた。

 今は、大量の食糧を持って来ている。遺跡にさえ辿り着ければ、なんとかなると思ったんだけどな……。


「……一人では無理があるのかもしれないな」


 正直俺のスキルビルドは、単独ソロ向きじゃない。

 盾役や、拘束系の魔法の補助があって、始めて安全に討伐が行える。そして、連戦が可能となる。

 女王蟻討伐のために、そのようにステータスを決めたからだ。

 ライサさんに着いて来て貰うのが正解だったのかもしれない。

 だけど、ライサさんは、正直消耗し過ぎている。全身傷だらけと言っても良い状態だった。

 多分だけど、全盛期の半分程度しか動けていなと思う。

 一年くらいは、静養を兼ねてクラウディア様の護衛を続けて貰いたいと思い、同行を拒否した。


「……正直、俺の盾になって死にたいんだろうな」


 今のライサさんには、目的がない。女王蟻の討伐という最大の目的を達成してしまったからだ。

 死に場所を求めている……。そんな雰囲気があった。


「……ダメだな。やはりライサさんには頼れない。新しい目標を見つけて貰うのが良いだろう。

 日常生活を送る分には不自由のない体も手に入ったのだし、時間が解決してくれると思おう。

 それに、シリルさんとヒナタさんも、新しい道を歩んでいるんだ。

 道は見つかると思う……」


 地面の上に横になった。


「……少し寝よう」





 目が覚めた。陽はまだ高い。

 水筒の水を少し飲み、喉を潤す。


「ふぅ……。さて行くか」


 明るい内に、少しでも距離を稼ぎたいのが本音だ。

 日が暮れたら、魔物が出るのだろうし。周囲を見渡すと魔物はいなかった。

 そして、魔石とドロップアイテムが散乱していた。


「……回収は面倒だな。やっぱり、闇魔法を取っておくべきだったか?

 ヒナタさんは、アイテムに自分の影を落とせば回収出来ていたんだよな……」


 少し考えて、大きめの魔石だけを回収することにした。

 全部回収となると、また日が暮れそうだ。

 技能石もありそうだけど、雑魚の魔物だったし有用なものはないと思う。

 こうして、その場を後にした。


 〈スキル:隠密〉を発動させる。

 周囲に人がいれば、俺は森に溶け込んでいるように感じると思う。

 それは、魔物とて同じはずだ。

 そう思ったのだけど、蛇と目が合ってしまった。

 かなり大きい。鰐くらいの口を開けて、俺を威嚇して来た。

 それと毒液も見える。


「そう言えば、聞いたことがある。蛇は熱感知出来るとか……」


 学のない俺だったけど、蛇の知識だけはあったりする。

 何故なら、嫌いだからだ。俺は蛇を見た瞬間に、悪寒を覚えて結界術を発動させていた。

 嫌な汗が止まらない。


「……無駄な戦闘は避けたいんだけど。逃げてくれないかな?」


 そう思った瞬間に、蛇は噛みついて来た。

 大あごを開き結界術に噛みついている蛇……。感電もなんのそのだ。

 動かないので、格好の的なんだけど、正直怖い絵ずらだな。

 俺は、ハンマーを振るって蛇の頭を爆発させた。


 ここで少し考える。


「……明らかな準備不足だよな。一度、クレスの街に帰ろうか」


 森に入って三日目で撤退を決断した。

 もちろん戦略的撤退だ。〈スキル:警報〉も働いている。これ以上進むと、怪我を負う恐れがある。

 出来れば、塹壕跡と思われる場所まで行きたかった。あの場所で、討伐を行い、空間魔法系統の技能石を落とす魔物を調べたかったのだ。だけど、現状では無理がある。

 歩きながら考える。


「レベルを上げれるだけ上げて、ステータスを充実させるか。

 それとも、パーティーを組むか……。それ以外の方法……、〈スキル:飛翔〉とかあれば、あるいはいけるか?」


 そんなことを考えていると、魔物が寄って来た。

 それを見た俺は走り出した。この森には、俺のスピードに付いて来れない魔物がほとんどだ。俺とは相性が良いのかもしれない。

 振り切れない魔物がいた場合は戦闘だ。そのほとんどを、一撃で屠る。


 こうして、一度目の森への進行が終了した。



『ステータス』


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名前:ショート・シンドウ

職業:魔導闘士

レベル:7

HP:300(+100)

MP:501(+100)

STR(筋力):200(+100)

DEX(器用さ):160(+100)

VIT(防御力):260(+100)

AGI(速度):200(+100)

INT(知力):336(+100)

スキル:スマホ所持、結界術、生命置換、空間障壁、

    身体強化、隠密、鑑定阻害、警報

ユニークスキル:裏当て、雷鎚トールハンマー

魔法:雷、回復

称号:異世界転移者、大物食いジャイアントキリング

スキルポイント:35

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