第二章
第52話 一度目の進行
ハンマーを振るう。そして、雑魚が舞う……。
「……ふう~。切りがないな」
今俺は、魔物に囲まれていた。
今いるこの森は、魔物が跋扈している。そして、俺は駆除対象となるみたいだ。
昼間であれば、魔物との遭遇率は低いので問題ないんだけど、夜間になると遭遇率が高くなる。
俺には、結界術という防衛手段もあるけど、流石に一晩放置すれば破られてしまう。
そういうわけで、今は近寄って来た魔物を片っ端から屠っている。
今俺は、大岩を右背にし、結界術を左背にして、前と左右からの襲撃に対して迎撃を行っている。
一応、怪我を負ったら結界術内に逃げ込む予定だ。
幸いにも、今のところ雑魚しか来ない。攻撃される前に倒せている。
今はまだ、森の外縁部なんだ。当然と言えば、当然か。
しかし、数が尋常じゃない。数十匹はいると思われる。
「森の中心部から出る時は、できるだけ戦闘を避けて移動したんだけど、森の中心部へ向かうとなると、魔物の方から寄って来るのか……」
俺には、一応〈スキル:隠密〉があり、遭遇率を下げられた。
気配を消して進んでいたのだけど、気が付いた時には囲まれてしまっていた。
ただし魔物の方も、気づいていなかったので、偶然の遭遇……エンカウントになるんだろう。
それで戦闘になったのだけど、音を聞きつけてか、他の魔物が寄って来た。その後は、雪だるま式だ。
そして、今の状況に至る。
まあ、愚痴っていても仕方がないので、迎撃を行う。
しかし、この襲撃は何時まで続くんだろうか……。
◇
朝日が昇る頃になると、魔物は来なくなっていた。
俺は結界術の中に入り、座り込む。
「ふぅ~……。森の中心部へ向かうとなると厳しいかもしれないな……」
異世界転移直後に遭遇した、熊やクワガタ、ナメクジ等を思い返す。それと、アンデットとゴブリンだ。
あの時は、『遺跡の池の水』というアドバンテージがあった。
ただし、食糧不足という問題も抱えていた。
今は、大量の食糧を持って来ている。遺跡にさえ辿り着ければ、なんとかなると思ったんだけどな……。
「……一人では無理があるのかもしれないな」
正直俺のスキルビルドは、
盾役や、拘束系の魔法の補助があって、始めて安全に討伐が行える。そして、連戦が可能となる。
女王蟻討伐のために、そのようにステータスを決めたからだ。
ライサさんに着いて来て貰うのが正解だったのかもしれない。
だけど、ライサさんは、正直消耗し過ぎている。全身傷だらけと言っても良い状態だった。
多分だけど、全盛期の半分程度しか動けていなと思う。
一年くらいは、静養を兼ねてクラウディア様の護衛を続けて貰いたいと思い、同行を拒否した。
「……正直、俺の盾になって死にたいんだろうな」
今のライサさんには、目的がない。女王蟻の討伐という最大の目的を達成してしまったからだ。
死に場所を求めている……。そんな雰囲気があった。
「……ダメだな。やはりライサさんには頼れない。新しい目標を見つけて貰うのが良いだろう。
日常生活を送る分には不自由のない体も手に入ったのだし、時間が解決してくれると思おう。
それに、シリルさんとヒナタさんも、新しい道を歩んでいるんだ。
道は見つかると思う……」
地面の上に横になった。
「……少し寝よう」
◇
目が覚めた。陽はまだ高い。
水筒の水を少し飲み、喉を潤す。
「ふぅ……。さて行くか」
明るい内に、少しでも距離を稼ぎたいのが本音だ。
日が暮れたら、魔物が出るのだろうし。周囲を見渡すと魔物はいなかった。
そして、魔石とドロップアイテムが散乱していた。
「……回収は面倒だな。やっぱり、闇魔法を取っておくべきだったか?
ヒナタさんは、アイテムに自分の影を落とせば回収出来ていたんだよな……」
少し考えて、大きめの魔石だけを回収することにした。
全部回収となると、また日が暮れそうだ。
技能石もありそうだけど、雑魚の魔物だったし有用なものはないと思う。
こうして、その場を後にした。
〈スキル:隠密〉を発動させる。
周囲に人がいれば、俺は森に溶け込んでいるように感じると思う。
それは、魔物とて同じはずだ。
そう思ったのだけど、蛇と目が合ってしまった。
かなり大きい。鰐くらいの口を開けて、俺を威嚇して来た。
それと毒液も見える。
「そう言えば、聞いたことがある。蛇は熱感知出来るとか……」
学のない俺だったけど、蛇の知識だけはあったりする。
何故なら、嫌いだからだ。俺は蛇を見た瞬間に、悪寒を覚えて結界術を発動させていた。
嫌な汗が止まらない。
「……無駄な戦闘は避けたいんだけど。逃げてくれないかな?」
そう思った瞬間に、蛇は噛みついて来た。
大あごを開き結界術に噛みついている蛇……。感電もなんのそのだ。
動かないので、格好の的なんだけど、正直怖い絵ずらだな。
俺は、ハンマーを振るって蛇の頭を爆発させた。
ここで少し考える。
「……明らかな準備不足だよな。一度、クレスの街に帰ろうか」
森に入って三日目で撤退を決断した。
もちろん戦略的撤退だ。〈スキル:警報〉も働いている。これ以上進むと、怪我を負う恐れがある。
出来れば、塹壕跡と思われる場所まで行きたかった。あの場所で、討伐を行い、空間魔法系統の技能石を落とす魔物を調べたかったのだ。だけど、現状では無理がある。
歩きながら考える。
「レベルを上げれるだけ上げて、ステータスを充実させるか。
それとも、パーティーを組むか……。それ以外の方法……、〈スキル:飛翔〉とかあれば、あるいはいけるか?」
そんなことを考えていると、魔物が寄って来た。
それを見た俺は走り出した。この森には、俺のスピードに付いて来れない魔物がほとんどだ。俺とは相性が良いのかもしれない。
振り切れない魔物がいた場合は戦闘だ。そのほとんどを、一撃で屠る。
こうして、一度目の森への進行が終了した。
『ステータス』
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名前:ショート・シンドウ
職業:魔導闘士
レベル:7
HP:300(+100)
MP:501(+100)
STR(筋力):200(+100)
DEX(器用さ):160(+100)
VIT(防御力):260(+100)
AGI(速度):200(+100)
INT(知力):336(+100)
スキル:スマホ所持、結界術、生命置換、空間障壁、
身体強化、隠密、鑑定阻害、警報
ユニークスキル:裏当て、
魔法:雷、回復
称号:異世界転移者、
スキルポイント:35
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