第49話 中級職
なんとか生きて街に帰って来れた。4人で出発して、全員帰還だ。まあ、上出来かな。
──ピロン
ここでスマホが鳴った。
メールを開く。
『教会に来てください。神様より』
かなり消耗しているんだけど……。今座ったら、動けなくなりそうだ。
「すいません。俺は教会に行ってから宿屋に直行します」
「そうかい? なら私は冒険者ギルドに行こうか」
「……それでは、アタシは商業ギルドに報告に行きます」
「うニャ? ならワタシは、労働者ギルドニャね」
討伐証明は、ヒナタさんが持っている。魔石はライサさんが持っているし、報告は任せて大丈夫だろう。また、各ギルドにも報告は必要だ。
クラウディア様への報告は、ライサさんに任せれば大丈夫だと思う。
そして、俺がなぜ教会に行くかは、聞いて来なかった。察してくれたのかな?
「打ち上げは、明日でも良いですか? 流石に消耗が激しいし」
「あはは。皆同じだよ」
こうして別れることになった。
◇
教会に着いて、シスターさんに女王蟻の報告を行った。それと、金貨を一枚お布施にする。
教会内は、俺だけになった。
敬礼のために、片膝をつく。
眼を開けると、一面白い世界だ。前回と同じだ。
まあ、呼び出しておいて、面会なしもないか。
「おつかれさまでした。女王蟻の討伐は、凄い功績ですよ?」
突然、ヒストリア様が目の前に現れる。驚きもしなくなったけど、もうちょっと、演出とかして欲しいな。神様としての威厳を見せて欲しい。
まあ、いいか。俺の考える事じゃない。話を始めよう。
「……母親と妹の状況を教えてください」
「あなたは、開口一番それですか? まあ良いですけど。
お母様は、自宅療養中で、少しずつですが炊事洗濯を行っています。妹さんは、真面目ですね。アルバイトを続けながら、学校に通っています。成績も優秀ですよ」
この言葉を鵜呑みには出来ないけど、ホッとしてしまった。
後で、グループチャットアプリを開いて、確認しよう。それよりも今しなければならないこと……。
「異世界生活の終わり……、というわけではないのですよね?」
「う~ん。元の世界に帰すには、今の功績だけでは不十分ですね」
「……魔王でも倒して来ますか?」
「それよりも、中級職へ上がってください。レベルも999でカウンターストップしていますよ」
「……場所に縛られたくないんです。この世界のシステムには組み込まれずに生きて行こうと思います」
神様がため息を吐いた。
「はぁ~。あなたと言う人は……。神からの恩恵を受け取らない人は、始めてですよ。スキルポイントも溜め込んでいたし。それでも生き抜くのですから、不思議なんですけどね」
「恩恵ですか? この世界の人達が独占しているみたいですが、個別には貰えないでしょうか?」
「……まあ、良いでしょう。貢献度もそこそこですし、あなたにだけは特別に職業を授けます。でも、ギルドカードと鑑定スキルには注意してくださいね。目立ちますので」
「ありがとうございます……、なのかな? 俺だけ特別待遇ということですよね?」
「まあ、そうなりますね。それと、死んで欲しくないといのが、神の意向になると考えてください」
生きろと言うことか……。命令されるまでもない。簡単に死んでやるつもりはない。
足掻くだけ足掻いてやろう。そして、元の世界に帰ってやる。
「それでは、中級職について説明をします。普通は無職の状態での活動内容と、ステータスの割り振り、スキルと魔法を考慮して、数種類の候補が上がるのですが、あなただけは一種類とします」
職業を選べないのか……。商業ギルドに登録した時に、安全に街中で生きて行こうと思ったのだけど、それも叶わなかった。
「あなたの職業は、『魔導闘士』とします」
「……」
これからも、魔物の討伐を行えと言うことか。鍛冶師とかを期待したのだけど、まあ選ばれるはずもない。
だけど、特に不満もない。この世界に来てからの俺の行動からすれば、似合っている言葉のような気もする。
「転移場所が街中だったら、鍛冶師にでもなっていたのでしょうね。もしくは、建築関係の仕事を選んだのかもしれません。鈍器を扱う仕事が俺には似合ってそうですけど、これからも討伐メインで行けということでしょうか?」
「この世界での生き方を縛る気はないですよ? 上級職と最上級職もありますしね。
でも正直、期待以上の働きをして貰っています。これからも期待していますので、もう少し頑張ってみてください」
「家族に貢献出来るのであれば、不満はありませんよ」
「……そうですか。それでは、これで終わりとします。それと、教会に戻ったら、スマホを確認してみてくださいね」
言われるまでもないのだけど……。何かあるのかな?
そこで、意識を失った。
◇
再度、目が覚めた。周囲を見渡すと教会だった。戻って来たみたいだ。
ギルドカードを見ると、『職業:魔導闘士』が付与されていた。
ステータスを確認する。
「レベルが1になっている。これからは、レベルが上がる毎に、ステータスポイントが5貰えるんだよな……」
そして、スマホを取り出す。
その画面に驚いた。
「……電話機能が使えるのか!?」
妹の愛美の電話番号が、画面に表れていた。電波も繋がっているみたいだ。
これが、神様からの褒美ということか? 異世界間で話せる?
頭が混乱している。だけど、躊躇う必要はない。
俺は、震える手で『発信』のボタンを押した。
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