第44話 防衛5
冒険者ギルドを後にして、宿屋に帰って来た。
まず手早く、食事と入浴を済ませる。
とりあえず、明日から本格的な蟻の巣への攻撃が始まる。
今日中に考えなければならないことがあるので、早めに部屋に籠った。
ステータスを眺めて考える。
「レベル827で、ステータスポイント390か……」
そう、俺はステータスポイントを溜めていた。
異世界転移したスタート地点に比べれば、城塞都市クレスの周辺の魔物は雑魚と言える。転移場所が悪すぎたせいか、街の周辺の魔物には、それほどの脅威は感じなかった。
まあ普通は、レベルが上がったらステータスポイントをすぐに割り振るんだろうけど、俺はスキルと魔法でなんとかなってしまっていた。
自分の方向性が決まらなかったので、保留としていたのだけど、慢心とも言える。
そういえば、鑑定されてバカにされていたな……。気にもしていなかったけど。
明日からは、かなり危険な戦闘となるはずだ。今日中に自分の方向性を決めなければならない。
まず攻撃力だが、俺のスキルは鍛えられない内臓への直接攻撃を行えると言える。現状のSTR値100で十分だ。
ヒナタさんが足止めしてくれるので、DEX値も正直必要ない。まあ、命中が低すぎる懸念はあるけど、一応保留。
結界術があるので、スピードも不要といえる。特に明日からは防衛戦なんだ。AGI値も上げる必要はない。撤退する場合は、俺がしんがりとならなければならないとも思うし。
INT値の知性は、回復魔法と雷魔法の威力が上がると考えられる。今は中級程度だけど、これも十分と言えた。
「そうなると……、HPとMP、VITかな」
俺の生命線ともいえるMPは、とにかく増やしたい。魔石の補助があるといっても無限ではないんだ。
HPとVITは、レベル的に低すぎるかもしれない。下手をすると不意打ちを受けた時点で即死の可能性もある。
特に明日からは、複数に囲まれることも考慮に入れなければならない。
安全に一匹ずつ討伐とはいかないだろうな……。
「MPは、ライサさんが持っているマナポーションに期待すれば、回復するはずだ。欲しいといえば欲しいけど、今は極振りするほど上げなくても良いよな。そうすると……」
『DEX+50、HP+100、MP+150、VIT+90……』
魔力特化型なのは変わらないけど、MPに全振りは避けることにした。
これでとりあえず、ステータス値が決まった。
だけど、今回はパーティーを組む前提でのステータス修正だ。
今後、ソロになる場合は、ライサさんみたくDEXとAGIが重要になると思う。
今までは、博打を打ち続けたのかもしれない。勝ち残って来れたけど、明日は俺一人の問題じゃないんだ。街の人達の命運もかかって来る。
複数に囲まれても立ち回れる強みは、必要だと思えた。
今の俺は、重鈍ではあるけど、結界術と空間障壁の防御を兼ね備えた防御重視の近接戦闘型と言える。ただし、HPが低いので盾役は向いていない。あくまで、
今日までは、逃走の選択肢がなかったので、運良く生き延びたとしか言えない。
やはり格上対策は、何かしら必要だと思う。それは、アイテムでも良い。資金的な余裕もあるのだし。
移動型のアイテムや、技能石を買うのも良いかもしれないな。
今日は、蟻を百匹以上倒して疲れている。そして、今頭も使った。
正直疲れた。
そのまま、眼を閉じて眠りに着いた。
『ステータス』
-----------------------------------------------------------------------
名前:ショート・シンドウ
レベル:827
HP:200(+100)
MP:401(+150)
STR(筋力):100
DEX(器用さ):60(+50)
VIT(防御力):160(+90)
AGI(速度):100
INT(知力):236
スキル:スマホ所持、結界術、生命置換、空間障壁、身体強化、言語理解、隠密(NEW)
ユニークスキル:裏当て
魔法:雷、回復
称号:異世界転移者、
スキルポイント:0
-----------------------------------------------------------------------
◇
朝起きて、三人で朝食だ。
二人は特に何時もと変わらない。俺は少し緊張している感じだ。ゆっくりと咀嚼して飲み物で押し流す。
食事を済ませてから、ライサさんと合流するために領主の館へ向かう。
領主の館の守衛にライサさんを呼び出して貰うことにした。
俺達は、門の前でしばし待つ。
しばらく待つと、ライサさんが現れた。
二日酔いのように見えるんだけど……。緊張感が全くない。
領主代理といる時は、キリっとした、いかにも『騎士』という感じだったんだけど、これが素なのかもしれないな。
これから、この街の命運をかけた戦いに赴くというのに、大丈夫なんだろうか?
俺だけが、心配し過ぎている?
「ふぁ~。三人共、おはよう……」
「ライサさん。おはようございます。っというか、大丈夫ですか? 二日酔いに見えるのですが?」
「ああ……。怪我が治ったからね。クラウディア様が大喜びでさ。昨日も宴会になってしまったよ」
二日続けての宴会なのかな?
昨日も飲んでいた?
「今日は少し待ちますか? アルコールが抜けていないようですし……」
「いや、大丈夫だ。魔物を見れば、酔いは醒めるようになっているから」
信じても良いんだろうか?
シリルさんとヒナタさんを見ると、二人共に笑顔だ。
二人が反対しないのであれば、実績があるんだろうな。いや、信頼かな。
こうして、少しの不安を抱えて街を出ることになった。
◇
「……蟻が、森の中に一杯いるニャ。魔物同士で戦っているニャ」
シリルさんが、獣耳をピクピクさせている。
「ああ、予定通りだね。巣から出始めたようだ」
昨日の百匹の蟻討伐には、意味があったのか。
ライサさんは、蟻の魔物の習性を知っているんだな。
女王蟻は数が減ると巣から出て来ると言っていたけど、それは兵隊蟻でも同じなのかもしれない。
「数を減らし合ってくれるのであれば、少し待ちませんか?」
「いや、それだとラージアントが大量に生まれてしまう。私達は、魔物が戦っている場面に出くわしたら横槍をいれて、両方討伐する方法を取るよ」
なるほどな。安全に討伐数を稼ぐ方法を編み出しているということか。
さすが上級職だけのことはある。
反対する理由もない。
「シリルさん。索敵をおねがいしますね」
「任せるニャ」
こうして、俺達の蟻の巣攻略が始まった。
まずは、森に蔓延っている兵隊蟻の掃討からだな。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます