第38話 討伐3

 とりあえず、商業ギルドでオーガの報告を行うと大騒ぎとなった。

 証明として、魔石と斧を出すと、今度は静まり返る……。


 その後、街を厳重警戒態勢に移行させると言って来た。

 だけど、再度騒がしくなる。

 誰かが入って来て、大声で騒ぎ立てたのだ。


「冒険者ギルドで、大怪我を負った奴がいる。回復魔法の使い手は手を貸してくれ!」


 ギルドは対立しているんじゃなかったのか?

 まあ良いや。見に行ってみるか。この街の回復魔法のレベルも知りたい。

 それと、二人に確認だ。


「冒険者ギルドに行きますけど、一緒に行きますか?」


 二人は頷いた。





「……重傷者は二人か」


 一人は、腕を切断されている。もう一人は、鎧ごと潰されているが、息はしているみたいだ。

 まず、ポーションが使用された。

 俺が森で取って来たポーションよりかなり色が薄い。低級みたいだ。

 効果は、血が止まる程度だ。あそこまで重症だと、あってもなくても変わらないな。

 その後、回復魔法が施される。水魔法と組み合わせているみたいだ。こちらは、目に見える効果が見られた。これならば助かりそうだな。

 そう思ったのだけど、次の瞬間に術者が血を吐いた。魔力切れみたいだ。いや、限界以上にMPを使ったのかもしれない。

 回復魔法の術者が、別室に運ばれて行く……。

 その後、誰も名乗り出ない。野次馬だけだ。


 俺は、重傷者に近づいた。


「自信はないのですが、俺は回復魔法が使えます。このままでは、どの道終わりだと思うので、手を貸しても良いですか?」


「お願い! 助けて!」


 重傷者の手を握っている人は、懇願するように俺を見た。


 まず、千切れた腕からだな。〈スキル:生命置換〉を発動させる。

 腕の傷口を合わせて、魔力で細胞を再現して行く。一分ほどで繋がった。出血も収まっている。

 止血のために強く縛られた布を取り、脈を診ると、血液が流れていることが分かった。先ほどの人の回復魔法もあったので、この人は大丈夫だと思う。腕が動くようになるかは、ポーション次第かな。

 問題は、鎧ごと潰されている人だ。

 俺は、両手に雷魔法を纏った。


「無理やりでも、鎧を脱がせてください。出来るだけ速く傷口を焼きます」


 俺の言葉を聞いて、周囲の人が鎧を脱がせ始めた。接続部分の紐を切って行く。

 鎧が外れると共に、大量の出血が見られた。聞いたことがある、血圧だかなんだかで、圧迫された箇所があると、一気に血が流れるとか……。この後、噴水の様な出血が予想される。

 俺は、瞬時に腹の大きな傷口を焼いた。その後、折れた肋骨を修復する。

 内臓のダメージは、今の俺には修復は不可能だ。とにかく出血を止めて応急処置を施して行く。


「……応急処置ですが、これで大丈夫でしょう。俺のMPも限界ですので、ここまでしかできません。後は……、専門職の方に診て貰ってください」


 女性が涙を流して俺の手を取り、感謝してくれた。

 それと、他の人から赤い液体の入った瓶を渡される。


「低級だが、マナポーションだ。飲んでくれ。MPが回復する」


 ありがたく受け取り、飲んでみた。多少楽になる。

 今日は、ここまでにして宿に帰るか。

 少し足がもつれると、シリルさんとヒナタさんが俺を支えてくれた。


「にしし。今だけは、ビリビリなしニャよ?」


 ……まあ、良いか。





 部屋に運んで貰って、寝ることにした。一応、あの二人の容態が急変したら教えて貰うことになっている。


「……寝るので、二人共出て行って貰えませんか?」


「ここにも、動けない人がいるのニャ。看病が必要なのニャ」


「襲われたくないのですが……」


「もうその気はないので、心配しなくて良いニャ」


 本当かな……。


「魔力を限界まで使ったのです。とにかく休んでください」


 忘れる前に聞いておくか。


「……吐血した人がいましたが、あれは限界以上にMPを使ったということですか?」


「いいえ、自分の生命を分け与えるスキルと魔法の組み合わせですね。〈献身〉というスキルが関係しています」


 MPが尽きたら魔法は発動出来ないのか。限界以上はないんだな。

 限界以上を行う場合は、スキルが別途必要になると……。

 それと気になることがある。


「ヒナタさんは、回復魔法が使えないのですか?」


「使えますけど、ショートさんほどの効果は望めません。私の魔法は、広く浅くなんです」


 俺とは、真逆のスキルビルドだな。だけど、だからこそ相性が良いのもあるんだろう。

 そして、索敵に優れたシリルさんもだ。


「それと、鑑定を使われていましたよ」


 あ~……、前に言っていたあれか。


「まあ、知られても問題ないのですけどね……」


 そう言うと、睡魔に勝てずに眠りについた。

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