第38話 討伐3
とりあえず、商業ギルドでオーガの報告を行うと大騒ぎとなった。
証明として、魔石と斧を出すと、今度は静まり返る……。
その後、街を厳重警戒態勢に移行させると言って来た。
だけど、再度騒がしくなる。
誰かが入って来て、大声で騒ぎ立てたのだ。
「冒険者ギルドで、大怪我を負った奴がいる。回復魔法の使い手は手を貸してくれ!」
ギルドは対立しているんじゃなかったのか?
まあ良いや。見に行ってみるか。この街の回復魔法のレベルも知りたい。
それと、二人に確認だ。
「冒険者ギルドに行きますけど、一緒に行きますか?」
二人は頷いた。
◇
「……重傷者は二人か」
一人は、腕を切断されている。もう一人は、鎧ごと潰されているが、息はしているみたいだ。
まず、ポーションが使用された。
俺が森で取って来たポーションよりかなり色が薄い。低級みたいだ。
効果は、血が止まる程度だ。あそこまで重症だと、あってもなくても変わらないな。
その後、回復魔法が施される。水魔法と組み合わせているみたいだ。こちらは、目に見える効果が見られた。これならば助かりそうだな。
そう思ったのだけど、次の瞬間に術者が血を吐いた。魔力切れみたいだ。いや、限界以上にMPを使ったのかもしれない。
回復魔法の術者が、別室に運ばれて行く……。
その後、誰も名乗り出ない。野次馬だけだ。
俺は、重傷者に近づいた。
「自信はないのですが、俺は回復魔法が使えます。このままでは、どの道終わりだと思うので、手を貸しても良いですか?」
「お願い! 助けて!」
重傷者の手を握っている人は、懇願するように俺を見た。
まず、千切れた腕からだな。〈スキル:生命置換〉を発動させる。
腕の傷口を合わせて、魔力で細胞を再現して行く。一分ほどで繋がった。出血も収まっている。
止血のために強く縛られた布を取り、脈を診ると、血液が流れていることが分かった。先ほどの人の回復魔法もあったので、この人は大丈夫だと思う。腕が動くようになるかは、ポーション次第かな。
問題は、鎧ごと潰されている人だ。
俺は、両手に雷魔法を纏った。
「無理やりでも、鎧を脱がせてください。出来るだけ速く傷口を焼きます」
俺の言葉を聞いて、周囲の人が鎧を脱がせ始めた。接続部分の紐を切って行く。
鎧が外れると共に、大量の出血が見られた。聞いたことがある、血圧だかなんだかで、圧迫された箇所があると、一気に血が流れるとか……。この後、噴水の様な出血が予想される。
俺は、瞬時に腹の大きな傷口を焼いた。その後、折れた肋骨を修復する。
内臓のダメージは、今の俺には修復は不可能だ。とにかく出血を止めて応急処置を施して行く。
「……応急処置ですが、これで大丈夫でしょう。俺のMPも限界ですので、ここまでしかできません。後は……、専門職の方に診て貰ってください」
女性が涙を流して俺の手を取り、感謝してくれた。
それと、他の人から赤い液体の入った瓶を渡される。
「低級だが、マナポーションだ。飲んでくれ。MPが回復する」
ありがたく受け取り、飲んでみた。多少楽になる。
今日は、ここまでにして宿に帰るか。
少し足がもつれると、シリルさんとヒナタさんが俺を支えてくれた。
「にしし。今だけは、ビリビリなしニャよ?」
……まあ、良いか。
◇
部屋に運んで貰って、寝ることにした。一応、あの二人の容態が急変したら教えて貰うことになっている。
「……寝るので、二人共出て行って貰えませんか?」
「ここにも、動けない人がいるのニャ。看病が必要なのニャ」
「襲われたくないのですが……」
「もうその気はないので、心配しなくて良いニャ」
本当かな……。
「魔力を限界まで使ったのです。とにかく休んでください」
忘れる前に聞いておくか。
「……吐血した人がいましたが、あれは限界以上にMPを使ったということですか?」
「いいえ、自分の生命を分け与えるスキルと魔法の組み合わせですね。〈献身〉というスキルが関係しています」
MPが尽きたら魔法は発動出来ないのか。限界以上はないんだな。
限界以上を行う場合は、スキルが別途必要になると……。
それと気になることがある。
「ヒナタさんは、回復魔法が使えないのですか?」
「使えますけど、ショートさんほどの効果は望めません。私の魔法は、広く浅くなんです」
俺とは、真逆のスキルビルドだな。だけど、だからこそ相性が良いのもあるんだろう。
そして、索敵に優れたシリルさんもだ。
「それと、鑑定を使われていましたよ」
あ~……、前に言っていたあれか。
「まあ、知られても問題ないのですけどね……」
そう言うと、睡魔に勝てずに眠りについた。
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