第37話 討伐2
朝日が昇ったので、一階の食堂へ。
三人で朝食をとっている時だった。不意に質問された。
「シュートさんは、空間魔法を使えるのですか?」
空間魔法? 結界術と空間障壁のことか?
「魔法ではないですね。ステータスには、スキルの欄に空間障壁と出ています。不破壊の盾と考えています。それと、雷魔法を応用した結界術ですね」
「……どの魔物が落としたか、分かりますか? レアスキルですよ?」
記憶を辿る……。
「森の中で、塹壕がありました。その時に、色々な魔物に襲撃されて、一晩中迎撃したのですが……。どの魔物からのドロップかは、分かりませんね」
「そうですか……。未登録の技能石であった場合は、功績になります。それと、未発見の空間魔法に繋がるかもしれません。また一つショートさんへの指名依頼が増えそうですね」
「……また?」
「そのうち分かります。今は、ギルド長達が話し合っている頃でしょう。いえ……、もう領主にまで届いている頃かな。それと、私達の依頼書が発行されているので、今は大丈夫です。心配しないでください」
良く分らない。
シリルさんを見る。
「ん? 大丈夫ニャよ?」
なにが大丈夫なんだろうか? そのうち分かると言うことか? まあ、良いや。まず、蟻百匹の討伐を終わらせてしまおう。
◇
二日目も順調だった。
ゆっくりとだが、数を熟して行く。
だけど、順調と思った時に落とし穴がある。
「……ニャ」
シリルさんが固まった。俺もその異常な気配に気が付いた。
間髪入れずに、結界術を足元に起動させる。
それが、ゆっくりと近づいて来た……。
このパーティーの欠点だな。逃走を選択する場合は、機動力にバラツキが出る。ヒナタさんが真っ先に餌食になるだろう。
俺は、攻撃力と魔法防御特化だし。余りAGI値には振っていない。
悪い思考を続けていると、それが現れた。
「……最悪だな。あの時の赤い鬼か」
「オーガファイターです。なんでこんなところにオーガがいるの……」
ヒナタさんは真っ青だ。
「強いですよね?」
「蟻十匹より強いニャ! 森のもっと深い所に集落があるはずニャのに……」
逃げられないのであれば、戦うしかない。退いてくれそうな様子もないし。
「まあ、身体強化による物理攻撃しかしてこなかったので、大丈夫でしょう。足止めをお願いします」
二人が驚いた表情で俺を見る。
その隙を突いてか、オーガが消えた。そして、左側からの斧による一撃……。耳を覆いたくなるほどの轟音が響き渡る。結界術の魔力をごっそりと持って行かれた。
ここでヒナタさんが動いた。影縛りでオーガの脚が止まる。
その一瞬を見逃さずに、俺は一撃を放った。
だけど、オーガに俺のハンマーは届かなかった。斧の柄とハンマーの柄がぶつかり、裏当てが発動しなかったのだ。
柄の部分を止められると、致命的かもしれない。
力勝負となったが、かなり分が悪い。弾き飛ばされて結界術の外に弾き出されたら、一瞬でミンチだと思う。
ここで、シリルさんが動いた。俺の陰からの一撃。吹き矢だ。その矢が、オーガに刺さる。
オーガの動きが悪くなった。痺れているんだろうか?
迷っている暇はない。
俺は、ハンマーを引いて、振りかぶり、オーガの頭を打ち抜いた。数秒後、塵が舞い上がる。
◇
「オーガって鬼ですよね?」
俺の間抜けな質問に二人が、あっけに取られた。
「鬼の認識で合っていますが、この辺には滅多に出ない魔物です。オーガ一匹で、街が壊滅することもありあえますよ?」
「魔法は使って来ますか?」
「広範囲に炎をまき散らすことが知られています」
固まっていたので幸いしたか。結界術は、物理に強いが魔法に弱い。炎を使われたら破られていたな。
「シリルさんの、吹き矢はなんですか?」
「特別製の毒矢なのニャ。本当の奥の手なのニャ。ちなみに植物毒ニャ。ある植物の棘を刺したのニャ」
そう言うと、力なく座り込んだ。恐怖が襲って来たのだろう。震えている。
俺は結界術を解いて魔石を回収した。ヒナタさんも動けそうになかったので、魔石をマジックバッグに入れる。
それと、また斧がドロップアイテムとして残った。
「……また斧か」
「またって……。まさか、以前に討伐しているのですか? 遭遇しただけではなくて? 逃げなかった?」
「二匹目になりますね。前回はかなり油断してくれたので勝てましたが、本当に偶然でした」
二人は驚愕の表情で俺を見ている。
その後、相談して、本日は撤退することにした。
オーガが出た事をギルドに報告した方が良いのだそうだ。
まだ、陽は高いんだけどな……。
今日は、蟻七匹で終わった。
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