第19話 移動6
汗が噴き出る。
現在、結界術の内部にいて助かったかもしれない。
それほど、異様な魔物が俺の前に現れた。
体長は3メートル程度。二足歩行をしており、斧を持っている。
人に……いや、霊長類に近い体だ。肌は赤色……。ゴブリンに近いと思われるけど、明らかに違う。
クジラとイルカくらいの違いがある。あえて特徴を上げるのであれば、角があることだろうか。
目の前の魔物が、斧を構えた。俺も呼応するようにハンマーを握る。
次の瞬間に目の前から消えた。
──ガン
右側からの大きな音と衝撃。結界術が揺れる。
慌てて右を見ると二撃目が撃ち込まれていた。
「まずい。スピードが桁違いだ。いや、ステータス値全てが高い可能性もある」
結界術の魔力は、物理攻撃だけで次々に削られて行く。あまり長くは持たない。
俺は、ハンマーで足払いを行った。だけど当たることはなく、魔物はその場から離れた。
視線が合わさる。数秒の対峙……。
本来であれば瞬殺だったと思う。だけど、スキルのおかけでかろうじて生き延びている。魔力が尽きた時点で終わりだけど。
魔物が足に力を溜めた。
次の瞬間にまた飛び込んで来ると予想できる。
俺は、反射で自分の四方に空間障壁を発動した。
──ガン
今度は、左側からの攻撃だった。だけど、結界術の外側に張られた空間障壁で防がれている。
そして、斧がすっぽ抜けた。
「不破壊の空間……、盾としては優秀だな」
魔物は、両腕の痛みで硬直している。両手が痺れているみたいだ。折れているかもしれない。
不破壊……、かなり硬い物を全力で叩いたんだ。そうなるだろうな。
そんな魔物に、俺は躊躇いなくハンマーを振るった。魔物が、頭突きで受けようとして来る。俺の攻撃は、舐められているみたいだ。
攻撃が当たった瞬間に、膨大な雷魔法を流し込んでやった。
魔物が、内部から焼かれて行く……。
魔物は、口から塵を吐き出して、倒れた。俺は、止めを刺す。
◇
「危なかった。魔法特化……いや、防御特化でなければ負けていたな」
明らかに格上だった。目にも止まらぬ速さで動き、一撃でも貰えばミンチになる攻撃力。三撃目は、防げなかったかもしれない。そして、俺のハンマーを頭突きで迎撃するという、油断があった。幸運が重なったな。
それと、魔法を使って来なかったことも、幸運としか言いようがない。
ドロップアイテムは、技能石と斧だった。
斧はソリに括り付ける。
そして、俺は、技能石を割った。何時ものように、頭に声が響く。
『ステータスに〈スキル:身体強化〉を付与します』
俺は、ステータスボードの〈身体強化〉に触れてみた。
再度、頭に声が流れ込んで来る。
『魔力を使い、任意ステータスを大幅に上昇させることが出来る。複数のステータスを上昇させることも可能。威力と時間は、魔力量に依存する』
当たりかハズレかも分からない。
これも検証が必要だな。だけど、魔力依存のスキルでなくて良かったかもしれない。
雷魔法・結界術・空間障壁の運用だけでもMPがギリギリだ。
俺は、その場に座り込んだ。さすがに精神を消耗しているみたいだ。
「ステータス」
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名前:ショート・シンドウ
レベル:567
HP:100
MP:251
STR(筋力):100
DEX(器用さ):10
VIT(防御力):70
AGI(速度):100
INT(知力):236
スキル:スマホ所持、結界術、生命置換、空間障壁(NEW)、身体強化(NEW)
ユニークスキル:裏当て
魔法:雷、回復
称号:異世界転移者、
スキルポイント:130
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ため息が出た。
「スキルポイント130をどう振り分ければ、先ほどの魔物に勝てるというのか……」
それと疑問もある。
スキルの取得数の上限がある場合だ。ない場合も、使い切れない数を取得した場合は死蔵させることになると思う。
まあ、今はこの森から抜け出すことを考えなければならない。
わずかでも、生存率を上げる方向で考えよう。
俺は、MPにスキルポイントを割り振った。
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名前:ショート・シンドウ
レベル:567
HP:100
MP:381(+130)
STR(筋力):100
DEX(器用さ):10
VIT(防御力):70
AGI(速度):100
INT(知力):236
スキル:スマホ所持、結界術、生命置換、空間障壁(NEW)、身体強化(NEW)
ユニークスキル:裏当て
魔法:雷、回復
称号:異世界転移者、
スキルポイント:0
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