第13話 新スキル2

 目が覚めた。ゆっくりと起き上がる。


「良かった。結界術は残っていたか」


 結界術の魔力は、まだ尽きていなかった。もう少しで切れそうだけど。

 今は、二重に結界術を発動している。

 俺は、外側の結界術に追加の魔力を注入した。

 周囲を見渡す。

 数匹のゴブリン族が、俺を見ている。それと、大型の昆虫が一匹目に付いた。その昆虫の足元に、動物の死骸が残っている。


「……魔物同士でも戦うことがあるのか?」


 いや、今その検証は後回しだ。

 貧血を起こしているのだろうか? 頭がクラクラする。立ち上がれない。

 水筒の水を一口飲む。

 鈍い感覚の頭で考える。今すべきこと……。


「ステータス……」


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名前:ショート・シンドウ

レベル:488

HP:100

MP:251

STR(筋力):100

DEX(器用さ):10

VIT(防御力):70

AGI(速度):100

INT(知力):236

スキル:スマホ所持、結界術

ユニークスキル:裏当て

魔法:雷、回復(NEW)

称号:異世界転移者

スキルポイント:51

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 気を失う前の記憶を辿った。

 そう俺は、回復魔法を欲した。そして、それは叶えられたみたいだ。

 右手で回復魔法をイメージして自分自身にかけてみる。

 暖かい感覚……。

 確かに傷が癒える感覚がする……。

 だけど、それだけだった。


「左手の傷を治せないと、意味ないよな……」


 それと、コストパフォーマンスも悪かった。魔力を大量に持って行く割には、余り怪我は良くならない。

 俺は、諦めて回復魔法を止めた。


 ここで俺は、ステータスボードの〈回復魔法〉に触れてみる。

 また頭に声が流れ込んで来た。


『魔力を生命力に変換する。他属性との併用によりその効果を変化させ、また威力を上げられる』


 ……説明書を読まないで、操作してしまったか。

 俺が良くやる、失敗の方法だ。

 まず、回復魔法単体では、ほぼ意味がないんだな。

 今の俺には、雷魔法がある。雷魔法と回復魔法を同時に起動すれば良いのか。

 そして、魔法の同時起動を行ってみた。


 ──パリパリ


「発電で回復?」


 ……水魔法であれば、液体を塗るようなイメージで良いと思う。土魔法や風魔法であれば、大地や樹木から生命力を分けて貰うとかが、良いだろう。

 だけど、雷魔法による回復方法が思いつかなかった。

 出血により、頭が回らないのもあるかもしれない。貧血のような症状も出始めている。

 俺は近くの遺跡の壁に寄りかかり、手に発現した魔法を見つめた。


 雷とはなにか……。ここから入らないといけないと思う。

 俺のイメージでは、雷とは、バッテリーのようなエネルギー源であり、電波のように遠くに飛ばせる物。そして、貯められない物。

 雨雲に発生する雷は、光と音。落雷は、感電して発火を起こす。

 このイメージを持って回復を行う?


「……ダメだ。違う」


 発想が良くない。結界術の時を思い出す。剣と言う媒介を使って回転させるイメージを持てば、雷魔法と結界術の融合は果たせた。それも、とても有用な効果となって。

 回復魔法も同じであれば良い。

 再度、ステータス画面の説明を読む。


『魔力を生命力に変換する』


 これを、雷魔法によって再現する。


「……回復より上の再生であれば?」


 イメージする。傷口を塞ぐのではなく、魔力を直接細胞に変化させて傷を塞ぐイメージ。

 そう、魔力の物質化……。エネルギー源としての雷魔法。

 俺は、右手で左腕の傷を触った。


 ──パリパリ


 傷口を焼いて出血を止めるイメージ。だけど、細胞は壊死させない。細胞は、雷の回復魔法で一時的に壊してから、エネルギーを与えて修復させる。細胞は元の位置とは異なる位置で固定させる。細胞の新規整列だ。それを実現するためのエネルギー源としての雷魔法。


「傷を焼いて出血を止める……だけじゃない。その次だ。失った細胞を補うイメージ!」


 かなり痛いが、我慢する。

 痛みが引くまで、我慢すると傷口は塞がっていた。

 そして、ステータス画面には、新しいスキルが派生していた。


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名前:ショート・シンドウ

レベル:488

HP:100

MP:251

STR(筋力):100

DEX(器用さ):10

VIT(防御力):70

AGI(速度):100

INT(知力):236

スキル:スマホ所持、結界術、生命置換(NEW)

ユニークスキル:裏当て

魔法:雷、回復(NEW)

称号:異世界転移者

スキルポイント:51

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「生命置換か……。それもそうか、俺のイメージを言語化すれば、そうなるよな」


 俺は笑った。

 そして、全身に〈生命置換〉を施した。

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