第11話 結界術2
俺は、狼を取り囲むように剣を投擲して配置した。
狼は動かなかった。自分達を狙った投擲ではなかったからだと推測する。
もうこの時点で、逃げ場はないと言うのに。
俺は結界術を発動した。
狼達は、瞬時に危機を悟ったようだ。飛ぶようにその場を後にしようとしたけど、俺の〈結界の壁〉に阻まれて止まった。
「そうか。こういう効果もあるんだな……。閉じ込めて壁としての機能もあると。牢獄と言っても良い」
その後、俺の雷魔法が充填されて行く。
狼達は、何も出来ずに雷に焼かれて行った。塵となった狼の跡には、魔石が残っていたので回収する。
「雷魔法単体では、威力が低かったけど、結界術と組み合わせるとかなり強い……。まあ、金属を配置する手間はかかるけど」
独り呟いた。
考え方次第かもしれないな……。
◇
もうすぐ、日暮れだ。
アンデッド族が、また来るのかは分からない。だけど、警戒することに越したことはない。
俺は結界術を解除して、焚火用の枯れ枝を集め始めた。
幸いにも周囲は森であり、枯れ枝や枯れ葉など、燃やせる物は豊富だ。
言い方を変えると、森林火災など起こせば何処までも広がって行ってしまう。
焚火に火を付けて、とりあえず準備完了だ。
干し肉を齧りながら、地図を広げて周囲を見渡す。森の木より高い物は、山くらいしかない。三方向に山頂が見える。そして、日の出と日の入りの方向……。
読めない文字の地図から、現在地を割り出す。
「……ここしかないよな」
太陽と山、そして森という地形から、地図上の現在地を割り出した。
決め手になったのは、森の中の池の存在だ。文字は読めないけど、遺跡と池の存在と思われる記載があった。絵と言った方が良いか。
こうなると、どの方向に向かうかだ。
とりあえず、東西南北のどの方向に進んでも街はありそうだ。距離はさまざまだけど。
地図と山の方向を照らし合わせる。
一番高い山の方向に進むと街があることが分かった。距離的には、二番目に近い。
「方向も分かり易いし、距離的にも他より遠いとは感じない。移動はあの高い山を目印にするか」
少しずつだけど、準備が出来始めた。
そして、陽が暮れる。
──ガチャン、ガチャン
ここで、鎧の擦れる音が聞こえて来た。
俺は地図を仕舞って、立ち上がった。
ハンマーを握る。
「さて、掃除と行こうか。いや、パワーレベリングだったかな」
◇
リビングアーマーを倒した時に気が付いた。リビングアーマーの鎧の中は、魔力で満たされていた。
鎧が破壊されると、魔力が霧散して動かなくなる。
魔力が留められており、それが鎧を内部から動かしていると予想する。
「リビングアーマーを操っている術が、結界術になるのか?」
次々にわいてくるアンデッドを屠りながらだけど、余計な思考が過った。
「そうすると、スケルトンやグールなども何かしらの技能石を落とすんだろうか?
いや、熊や狼も来たんだ。それとクワガタもだ。ステータス上昇より技能石取得を優先した方が、生き延びられる確率は高いかもしれないな」
欲が出て来たかもしれない。
その後、屍犬や実体のない霧なども襲って来た。種類毎に技能石を落としてくれるのであれば、嬉しいかもしれない。
その後、一晩中魔物の討伐を行った。二日目の夜も、全てアンデット類だった。
少しだけ、法則性が見えて来た気がする。
◇
夜が明けたので、アンデッド族は帰って行く。追撃はしない。
「ステータス」
今の自分の確認だ。
それと、上げる項目も決めていた。
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名前:ショート・シンドウ
レベル:437
HP:100
MP:251(+150)
STR(筋力):100
DEX(器用さ):10
VIT(防御力):70
AGI(速度):100(+35)
INT(知力):236(+150)
スキル:スマホ所持、結界術
ユニークスキル:裏当て
魔法:雷
称号:異世界転移者
スキルポイント:0
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俺は、魔法特化で行こうと思う。
ハンマーを持った魔導師かな? 魔導剣士? いや、剣士じゃないか。
自分の職業の名称は、街に着いてからでも考えよう。
その時の俺は、笑っていた。
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