第11話 結界術2

 俺は、狼を取り囲むように剣を投擲して配置した。

 狼は動かなかった。自分達を狙った投擲ではなかったからだと推測する。

 もうこの時点で、逃げ場はないと言うのに。

 俺は結界術を発動した。

 狼達は、瞬時に危機を悟ったようだ。飛ぶようにその場を後にしようとしたけど、俺の〈結界の壁〉に阻まれて止まった。


「そうか。こういう効果もあるんだな……。閉じ込めて壁としての機能もあると。牢獄と言っても良い」


 その後、俺の雷魔法が充填されて行く。

 狼達は、何も出来ずに雷に焼かれて行った。塵となった狼の跡には、魔石が残っていたので回収する。


「雷魔法単体では、威力が低かったけど、結界術と組み合わせるとかなり強い……。まあ、金属を配置する手間はかかるけど」


 独り呟いた。

 考え方次第かもしれないな……。





 もうすぐ、日暮れだ。

 アンデッド族が、また来るのかは分からない。だけど、警戒することに越したことはない。


 俺は結界術を解除して、焚火用の枯れ枝を集め始めた。

 幸いにも周囲は森であり、枯れ枝や枯れ葉など、燃やせる物は豊富だ。

 言い方を変えると、森林火災など起こせば何処までも広がって行ってしまう。

 焚火に火を付けて、とりあえず準備完了だ。

 干し肉を齧りながら、地図を広げて周囲を見渡す。森の木より高い物は、山くらいしかない。三方向に山頂が見える。そして、日の出と日の入りの方向……。

 読めない文字の地図から、現在地を割り出す。


「……ここしかないよな」


 太陽と山、そして森という地形から、地図上の現在地を割り出した。

 決め手になったのは、森の中の池の存在だ。文字は読めないけど、遺跡と池の存在と思われる記載があった。絵と言った方が良いか。

 こうなると、どの方向に向かうかだ。

 とりあえず、東西南北のどの方向に進んでも街はありそうだ。距離はさまざまだけど。

 地図と山の方向を照らし合わせる。

 一番高い山の方向に進むと街があることが分かった。距離的には、二番目に近い。


「方向も分かり易いし、距離的にも他より遠いとは感じない。移動はあの高い山を目印にするか」


 少しずつだけど、準備が出来始めた。

 そして、陽が暮れる。


 ──ガチャン、ガチャン


 ここで、鎧の擦れる音が聞こえて来た。

 俺は地図を仕舞って、立ち上がった。

 ハンマーを握る。


「さて、掃除と行こうか。いや、パワーレベリングだったかな」





 リビングアーマーを倒した時に気が付いた。リビングアーマーの鎧の中は、魔力で満たされていた。

 鎧が破壊されると、魔力が霧散して動かなくなる。

 魔力が留められており、それが鎧を内部から動かしていると予想する。


「リビングアーマーを操っている術が、結界術になるのか?」


 次々にわいてくるアンデッドを屠りながらだけど、余計な思考が過った。


「そうすると、スケルトンやグールなども何かしらの技能石を落とすんだろうか?

 いや、熊や狼も来たんだ。それとクワガタもだ。ステータス上昇より技能石取得を優先した方が、生き延びられる確率は高いかもしれないな」


 欲が出て来たかもしれない。

 その後、屍犬や実体のない霧なども襲って来た。種類毎に技能石を落としてくれるのであれば、嬉しいかもしれない。

 その後、一晩中魔物の討伐を行った。二日目の夜も、全てアンデット類だった。

 少しだけ、法則性が見えて来た気がする。





 夜が明けたので、アンデッド族は帰って行く。追撃はしない。


「ステータス」


 今の自分の確認だ。

 それと、上げる項目も決めていた。


-----------------------------------------------------------------------

名前:ショート・シンドウ

レベル:437

HP:100

MP:251(+150)

STR(筋力):100

DEX(器用さ):10

VIT(防御力):70

AGI(速度):100(+35)

INT(知力):236(+150)

スキル:スマホ所持、結界術

ユニークスキル:裏当て

魔法:雷

称号:異世界転移者

スキルポイント:0

-----------------------------------------------------------------------


 俺は、魔法特化で行こうと思う。

 ハンマーを持った魔導師かな? 魔導剣士? いや、剣士じゃないか。

 自分の職業の名称は、街に着いてからでも考えよう。


 その時の俺は、笑っていた。

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