第8話 夜襲1
ナメクジのドロップアイテムは、何かの液体の入った瓶だった。それと魔石だ。
ドロップアイテムが増えて行くが、持ち運べるんだろうか? 捨ててくわけにもいかないし……、輸送手段も考えないとな。
それと、今後の方針だ。
ここは、危険な土地であり、長くは留まらない方が良いとメールに書かれていた。
では、何処に行けというのかな……。
東西南北も分からない。物資には、地図も入っていなかった。
スマホの地図アプリも、現在地を捉えることが出来なかったし……。
異世界転移の場所を間違えたのではないのかと思うほど、情報がなかった。
あの神様は、なにか間違ったんじゃないんだろうか……。
「せめて、スタート位置は街中とかにして欲しかったな……」
ため息を吐くと、空が暗くなって来た。陽が沈む。
これから、夜だ。
「現状を嘆いていても仕方ないか。今考えられる限りの準備をしよう。一度死亡しているんだし、これ以上悪くはならないはずだ」
独り言を呟いてから、俺は枯れ枝を拾い集め始めた。
◇
夜中だけど、焚火を三つ作ったので視界は良好だ。
背後には、池があるので、不意打ちはないと思う。
俺は、岩に腰かけて、ただ森を見ていた。
──ガチャン、ガチャン
金属が擦れる音がする。
予想はしていた。夜襲もあると……。
音が大きくなって行く。ナメクジと同じで、この平地に入れるタイプの魔物みたいだ。池の水が効かない可能性もある。
焚火が、魔物を照らし始めた。
「鎧を着た骸骨かよ……」
多分、スケルトンとか言う魔物のはずだ。
スケルトンは、俺を取り囲んで来た。そう、一匹ではなかった。視認出来るだけで十体はいる。
俺は立ち上がった。
初の対複数戦に臨む。
スケルトンの装備は、剣と盾だった。剣のみの個体もいる。
鎧もバラバラだ。胸胴だけの個体もいるし、篭手と靴だけの個体もいる。
それと、動きが凄く遅い。
俺はとりあえず一匹にハンマーを振るった。
ハンマーは、盾で防がれる。だけど、それが狙いでもあった。
衝撃と雷魔法が、スケルトンを襲う。
数秒の後、スケルトンは粉々になった。その後、塵になる。
俺は、笑った。
「骸骨とは、相性が良いな……。盾で受けてくれるのであれば、衝撃を浸透させられる。なによりも、動きが遅いので、避けられることがない」
その後、ハンマーを振るう度に、スケルトンは砕かれて行く。
剣の間合いの外からの攻撃が可能だ。俺のハンマーは二メートル近くあるので、反撃されることはまずない。
そして、ハンマーが触れれば、スケルトンは粉々になってくれる。
数分で殲滅出来てしまった。
「剣や鎧は残るのか……」
今は拾わない。
さらに金属音が聞こえ始めたからだ。
足場を悪くしておく。それだけでも、俺には有利に働いていくはずだ。
「第二陣は、動く鎧……、なんて言ったっけ? リビングアーマー?」
全身鎧だが、兜の中の顔がなかった。多分、中身はないと思う。
またもや、装備は、剣と盾だ。口元がにやける。
スケルトンと違うのは、全身が鎧であり中身がないくらいかな?
鎧が重いのか、スケルトンよりさらに動きが遅い。
俺は、ハンマーで突いた。
リビングアーマーの鎧が砕かれた。手足をバタつかせているが、最終的に塵になる。
動きの遅いアンデッド系の魔物……。正直、雑魚だ。
足場も悪くしているので、足元の剣等を踏むとバランスを崩してくれる。
とりあえず、怪我を負わなければ負ける要素がなかった。複数に襲われても、無傷で撃退出来るだろう。
「ここで、レベルを上げられるだけ、上げさせて貰うか……。経験値になってくれよ」
第三陣のアンデッドモンスターに、俺は静かに宣戦布告した。
◇
夜が明けた。異世界転移後、初めての朝日だ。
夜明けと共に、アンデッドは来なくなった。
昼間は何処に潜んでいるんだろうか? 巣を探して、叩き潰しに行っても良いかもしれない。
だけど、少し眠いな。もう、二十時間くらいは、起きていることになる。
──ピロン
ここで、スマホが鳴った。メールを開く。
『しばらくは、襲撃はありません。眠っても大丈夫ですよ。神様より』
信じても良いかもしれない。
だけど、少し保険をかけておくか。
俺は、足元に落ちていた剣に雷魔法を付与してみた。纏雷の応用だ。魔法だけあって、自然放電はされない。
その剣に、小石を投げ当ててみた。
──パン
大きな音が鳴った。簡易的だけど、地雷系のトラップの完成だ。
昨日一日で、雷魔法の知識が少しだけ深まったのを感じる。
その後俺は、散らばっている、鎧や剣に地雷トラップを付与して回った。
空飛ぶ魔物がいた場合は、効果がない。投石などにもだ。だけど、保険としては十分だと思う。
そして、廃墟の壁を背にして、瞼を閉じた。
すぐに、眠りに付く。
◇
目が覚めた。
音を拾った訳ではなさそうだ。太陽を見るとまだ高い。睡眠時間は、体感的に四時間くらいだろうか?
池の水を水筒に入れて飲んで、頭の覚醒を促した。干し肉を齧りながら、遺跡の壁を登ってみる。
「……一晩中襲撃されたのだから、そうれはそうか」
俺の周りには、剣と鎧が散乱していた。それも大量にだ。
剣だけでも、百本以上ある。
「さて、ドロップアイテムの回収と行くか」
ここで気が付いた。
ドロップアイテムなのか、元から持っていたのかは分からないけど、カバンが複数個目に入った。
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