第8話 夜襲1

 ナメクジのドロップアイテムは、何かの液体の入った瓶だった。それと魔石だ。

 ドロップアイテムが増えて行くが、持ち運べるんだろうか? 捨ててくわけにもいかないし……、輸送手段も考えないとな。

 それと、今後の方針だ。

 ここは、危険な土地であり、長くは留まらない方が良いとメールに書かれていた。

 では、何処に行けというのかな……。

 東西南北も分からない。物資には、地図も入っていなかった。

 スマホの地図アプリも、現在地を捉えることが出来なかったし……。


 異世界転移の場所を間違えたのではないのかと思うほど、情報がなかった。

 あの神様は、なにか間違ったんじゃないんだろうか……。


「せめて、スタート位置は街中とかにして欲しかったな……」


 ため息を吐くと、空が暗くなって来た。陽が沈む。

 これから、夜だ。


「現状を嘆いていても仕方ないか。今考えられる限りの準備をしよう。一度死亡しているんだし、これ以上悪くはならないはずだ」


 独り言を呟いてから、俺は枯れ枝を拾い集め始めた。





 夜中だけど、焚火を三つ作ったので視界は良好だ。

 背後には、池があるので、不意打ちはないと思う。

 俺は、岩に腰かけて、ただ森を見ていた。


 ──ガチャン、ガチャン


 金属が擦れる音がする。

 予想はしていた。夜襲もあると……。

 音が大きくなって行く。ナメクジと同じで、この平地に入れるタイプの魔物みたいだ。池の水が効かない可能性もある。

 焚火が、魔物を照らし始めた。


「鎧を着た骸骨かよ……」


 多分、スケルトンとか言う魔物のはずだ。

 スケルトンは、俺を取り囲んで来た。そう、一匹ではなかった。視認出来るだけで十体はいる。

 俺は立ち上がった。

 初の対複数戦に臨む。


 スケルトンの装備は、剣と盾だった。剣のみの個体もいる。

 鎧もバラバラだ。胸胴だけの個体もいるし、篭手と靴だけの個体もいる。

 それと、動きが凄く遅い。

 俺はとりあえず一匹にハンマーを振るった。

 ハンマーは、盾で防がれる。だけど、それが狙いでもあった。

 衝撃と雷魔法が、スケルトンを襲う。

 数秒の後、スケルトンは粉々になった。その後、塵になる。

 俺は、笑った。


「骸骨とは、相性が良いな……。盾で受けてくれるのであれば、衝撃を浸透させられる。なによりも、動きが遅いので、避けられることがない」


 その後、ハンマーを振るう度に、スケルトンは砕かれて行く。

 剣の間合いの外からの攻撃が可能だ。俺のハンマーは二メートル近くあるので、反撃されることはまずない。

 そして、ハンマーが触れれば、スケルトンは粉々になってくれる。

 数分で殲滅出来てしまった。


「剣や鎧は残るのか……」


 今は拾わない。

 さらに金属音が聞こえ始めたからだ。

 足場を悪くしておく。それだけでも、俺には有利に働いていくはずだ。


「第二陣は、動く鎧……、なんて言ったっけ? リビングアーマー?」


 全身鎧だが、兜の中の顔がなかった。多分、中身はないと思う。

 またもや、装備は、剣と盾だ。口元がにやける。

 スケルトンと違うのは、全身が鎧であり中身がないくらいかな?

 鎧が重いのか、スケルトンよりさらに動きが遅い。

 俺は、ハンマーで突いた。

 リビングアーマーの鎧が砕かれた。手足をバタつかせているが、最終的に塵になる。

 動きの遅いアンデッド系の魔物……。正直、雑魚だ。

 足場も悪くしているので、足元の剣等を踏むとバランスを崩してくれる。

 とりあえず、怪我を負わなければ負ける要素がなかった。複数に襲われても、無傷で撃退出来るだろう。


「ここで、レベルを上げられるだけ、上げさせて貰うか……。経験値になってくれよ」


 第三陣のアンデッドモンスターに、俺は静かに宣戦布告した。





 夜が明けた。異世界転移後、初めての朝日だ。

 夜明けと共に、アンデッドは来なくなった。

 昼間は何処に潜んでいるんだろうか? 巣を探して、叩き潰しに行っても良いかもしれない。

 だけど、少し眠いな。もう、二十時間くらいは、起きていることになる。


 ──ピロン


 ここで、スマホが鳴った。メールを開く。


『しばらくは、襲撃はありません。眠っても大丈夫ですよ。神様より』


 信じても良いかもしれない。

 だけど、少し保険をかけておくか。

 俺は、足元に落ちていた剣に雷魔法を付与してみた。纏雷の応用だ。魔法だけあって、自然放電はされない。

 その剣に、小石を投げ当ててみた。


 ──パン


 大きな音が鳴った。簡易的だけど、地雷系のトラップの完成だ。

 昨日一日で、雷魔法の知識が少しだけ深まったのを感じる。

 その後俺は、散らばっている、鎧や剣に地雷トラップを付与して回った。

 空飛ぶ魔物がいた場合は、効果がない。投石などにもだ。だけど、保険としては十分だと思う。

 そして、廃墟の壁を背にして、瞼を閉じた。

 すぐに、眠りに付く。





 目が覚めた。

 音を拾った訳ではなさそうだ。太陽を見るとまだ高い。睡眠時間は、体感的に四時間くらいだろうか?

 池の水を水筒に入れて飲んで、頭の覚醒を促した。干し肉を齧りながら、遺跡の壁を登ってみる。


「……一晩中襲撃されたのだから、そうれはそうか」


 俺の周りには、剣と鎧が散乱していた。それも大量にだ。

 剣だけでも、百本以上ある。


「さて、ドロップアイテムの回収と行くか」


 ここで気が付いた。

 ドロップアイテムなのか、元から持っていたのかは分からないけど、カバンが複数個目に入った。

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