第3話 準備1
「まず、現状を確認させてください。今の俺は、どういう扱いになっていますか? それと……肉体は?」
「前世は、車で轢かれたことになっていますが、遺体は残していません。ただし、靴は現場に残っているので、行方不明扱いですね」
「今のこの体は? 遺体ではないのですか?」
「前世のイメージですね。物質化は、まだしていません。魂の形をイメージ化しただけです。それと、体は心配しなくて良いですよ。異世界転移が決まったら、私が再構成しますので。それもおまけ付きでね。もし、異世界に行かない選択を取るのであれば……、元の世界に体を再構成させて戻します……。その場合は、明確に死亡します」
女性はとても良い笑顔だ。営業スマイルのつもりかな。
しかし『おまけ』か。不利益ではない事を祈るしかない。
それと、異世界行きはもう決めている。家族を人質に取られたようなものだ。
従う以外の選択肢はない。
先ほどの、スマホの預金額が本当かどうかも分からないが、信じるしかない。
「え~と。従うのは良いけど、何をすれば良いのかを明確にして欲しいです」
「まず、私の管轄の世界の説明からですね。魔物と呼ばれるちょっとだけ怖い生物が多くいます。そうですね。恐竜みたいなものと考えてください。それで、その魔物が多すぎて、人類が繁栄出来なくて困っています」
「魔物を駆逐すれば良いと?」
「かなり違いますね。駆逐してしまうと困ります。多すぎるので適度に間引いて欲しい……、程度で。それと、現地にも人族がいます。彼等を助けてあげてください」
良く分からない……。
「現地の人達では、対応できないのですか?」
「う~ん。できなくもないのですが……。芳しくないのが現状です」
「例えばですけど、俺が火薬の知識を持ち込んだらどうなりますか?」
「あ~。そういう人はもう送り込んでいます。少し物理法則の異なる世界でして……。魔法がある世界なのですよ。なので、銃はあまり役に立ちません」
かなり分からない。そんな世界に俺を送り込んで何をしろというんだ?
「魔法ですか? 俺には縁遠いと思うのですが。それでも、俺に期待することがあるのですか?」
「期待……。まあ、そうですね。あなたなら、何かしてくれそうだから選びました」
ため息が出た。期待はされていないのか……。
「確認します。『魔物を討伐すればするほど、俺の家族を裕福にしてくれる』で合っていますか?」
「認識はそれで合っていますね。でも、討伐以外でも、世界に貢献してくれれば認めます。発明なんかも良いですね。それと、裕福は違うかな。お金以外の幸福を与えます。お母様には病気の治療を、妹さんには運命の相手を紹介するとかも含まれます」
お金以外か。先ほど、『幸福』と言った。
期待せずに、覚えておくだけに留めておいた方が良いかな。
「それでは、案内してください」
「あはは。異世界物を知らないのですね。これから、ここでキャラメイクするのですよ?」
知らないものは知らないし、キャラメイクってなんだ?
◇
女性に話を聞くと、目の前に画面が浮かび上がった。
ステータス画面なんだそうだ。
『RPGでおなじみの、ステータス画面です』と言われて納得しろと言われてもな……。未知の技術だと思うんだけど。
その後、説明を受ける。
「自分の能力を決められる……、ね」
ステータスを見るとSTRが高く、DEXが低い……。これが客観的に数字化した俺なんだろう。
「極振りでも良いのですよ?」
要は、余っているSTR値を他に割り振っても良いと言うことみたいだ。
だけど、せっかくなので、このまま筋力特化で行くことにする。
しかし、ここで馴染みのない項目が出て来た。それが『魔力』だった。
まず魔法を使うのであれば、マジックポイントが必要とのことだった。МPだ。
そして、魔法属性だ。
複数属性を取っても良いのだそうだけど、その分デメリットもあるらしい。
「属性……か」
悩んでも仕方がなかったので、〈雷属性〉を選んだ。
〈火属性〉とも思ったけど、デジタル機器が使えることに期待したい。だけど、多分他の属性の方が有用性があるんだろうな。
使い方次第で、チートになる属性もありそうだけど、俺には思いつかなかった。想像出来なかったからだ。
そして、次にスキルの項目だ。
まず、目に止まったのが、ユニークスキルだった。
・ユニークスキル:裏当て
俺は、あまりファンタジーには詳しくない。いや、これはファンタジーの用語ではないと思う。
「『裏当て』ってなんですか?」
「そこからですか……。あなたの前世から引き出されたモノなんですけどね」
その後、空手の映像を見せて貰う。
瓶を並べて、空手家が手前の便を殴ると、花の刺さった瓶が割れた。
これが俺の前世に関係があるのか?
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