退廃した人類

はんぺん

人類最後の日

 今人類は窮地に陥っていた。とは言っても、前々から数々の大災害や、何回もの戦争によって、破滅への道は着々と近づいてはいた。それに気付き始めたのが、ごく最近と言うだけなのである。


 世界中の学者達が集まり、話し合い、何とかして打開策を練ろうとした。結果としてこの星の未来はなく、生きるとするならば遠いどこかの惑星に移り住むことしか道はなかった。危険で、奇跡を願う程に成功確率はひくかった。「やめよう」と言う声も勿論あった。しかしこのような状況下で話を聞けるほど、皆は余裕がなかったのだ。


 計画は実行された。特別大きいロケットに人を出来る限り積み込む。重量オーバーにならないギリギリの範囲を狙うと、この星に残るものが出てしまった。計画が始まり、最初の別れはここにあったのだ。


 住み慣れた地球から遠く離れ一週間が経とうとしていた。乗員の不満はかなり溜まっており、狭い空間で共に過ごす事はかなりの苦痛であることがそこから見て想像できた。船内の空気は最悪だった。そこから更に時は流れ、一ヶ月が経った頃。乗員たちの不満が爆発したかのように、船内は騒がしかった。ルールを守らない者や、短気になりすぐ喧嘩を売ってくる者など、混沌としたその状況は数ヵ月にも及んだ。


 数ヵ月後、皆静かだった。この数ヵ月で死者がかなりの数になった。そして気付いた頃には乗員は半分まで減っていたのである。死体は後に自動で宇宙へ放たれる。それが実行されてしまうと、しばらくして皆はその人の事を忘れてしまう。しかし恐らく、そんな事を考えている程皆の心に余裕はないのだった。また、乗員は気が触れた者の割合が多くなった。独り言をぶつぶつ喋る者や、急に叫び出すもの。この者共も相まって逆に普通であることが難しい問題だった。


 そしてとうとう一年が経ち、目的の場所へ到着しようとしていた。目的の星が窓越しに見えても、誰も除くものは見当たらなかった。船内は誰もいなくなっていたのである。まだ人が生きていた名残であるゴミや、生活用品も全て宇宙と言う広大な空間に投げ捨てられてしまい、まるで何も最初から何も居なかったかのような空気感を漂わせていたのである。そして安全に他の星に到着した。自動でゲートが開かれるが、誰も出てくるはずがなかった。そしてやがてその星の住民がこのロケットを見つけ、こう言った。

「ああ、これが神からの贈り物なのか!?たった一人しか居ないこの星に、こんな物を寄越してくれるなんて!」


 

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退廃した人類 はんぺん @nerimono_2

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