義肢の生徒の多いミッション系の学校、聖ノーレア女学院に編入した少女のお話。
現世から隔絶された閉鎖環境における、不思議な信仰または因習の物語です。あるいは、ミッション系女学校ものの百合作品。
主要なモチーフである身体的欠損の扱い方がすごい。単に装飾的にフェティッシュな雰囲気を醸すにとどまらず(これはそもそも作中の登場人物ら自身が己の欠損をそのように扱っている部分がある)、明確に「持てる者」と「持たざる者」の隔絶に触れてもいたりする。
作品自体は非常にホラー的であり、少女たちの倒錯的で歪んだ価値観がひとつの見どころなのですが、しかしそれを安易に「倒錯的」「歪んだ」と断じる、その資格が果たして自分にあるのかと、そう問われるようなところがあるのがもう本当に最高でした。こういう何か、物語の矛先というほどではなくとも、主題に関わる部分の一端がこちら(=物語の外側にいるはずの読者)に向く瞬間が好きです。フィクションなれど、決して無関係な立場でいさせてくれない感じ。
中盤以降の、あの急転直下の不穏さが好き。一人称体ならではの芸当というか、急にどんどこ出てくるようになったヤバげな単語たち。そこに一切の説明のつかないところと、でもそれ以外はまったく正常であるところ。静かな狂気がしっかり根を張るような感覚がたまらないお話でした。