第一章 国立曙トランセンダー育成高等専門学校
第1話
あの日、突如としてこの世界に現れ人類を虐殺して回った『
六年が過ぎた今も、現在進行形で被害者数は世界中で増え続けてはいるが、一番の混乱期ともいえる最初の三か月間の死者数と行方不明者数を合わせると――――数十億人を優に超える地獄。
そこから一年という歳月をかけて、どうにか人類が再び安息を得るまでになった主要要因は、『
彼等彼女等を、世界共通で『トランセンダー』と呼称し、新たな人類種であり特権階級の誕生として人類は認識せざるを得なかったのだ。
それは偏に、人類の兵器一切が効かない『モンスター』を討伐することを可能とし、更に僅か五年弱で大多数が破壊された都市群を復活させた代物を、通常の人類が絶対に入れないうえ、電子機器類を始め人類の生み出した物の持ち込みが不可能な『
『
更に人類皆が認められない事実として、既に人類は『
――――4月7日 沖ノ鳥島 曙市 曙第一空港。
人類が新たな秩序の中、迎えた何年目かの春。
本土と、『
噂通りに、沖ノ鳥島が存在する場所としてはあり得ないほど、日差しは関東圏の春と言えるだろう優しさ。
海や港が近いからだろうか、どこか海風を感じることにも少年少女等は感慨深そうに見える。
何故かと言えば沖ノ鳥島にある空港の内、海に近いこの特別な空港へと乗り入れる飛行機に今日乗れた者は、世界的にみてもエリート中のエリートであることが確定したからだ。
既に『アーカス』となっていた少年少女等は、唯一『トランセンダー』となる資格を有し、確かにその時点で既に特別な存在となってはいたけれど、それでも才能差はあるもの。
いくら足が速いとはいえ、その地域では。
次に都道府県、更にそこから国のトップクラス、そして世界でのトップ。
何を才能とするにしても、世界で一番と誰もが明確に分かるレベルと、小さなコミュニティレベルとでは天と地程に違うものだ、通常は。
それがより顕著なのが『トランセンダー』となれる資格有りと分かった『アーカス』と世界共通で呼ばれる存在。
彼等彼女達は、15歳の誕生日から48時間以内に必ず『アーカス』となった資格である、瞳と腕を中心に紋章が顕れる。
それを検知するシステムを世界で初めて作り出したのが日本であり、世界中が日本のシステムを導入した。
その際に一悶着があり、『トランセンダー』に対する畏怖というより恐怖を人類の心に刻み込む結果となったのだが……
ともあれ世界中の常識として、自らの国の国籍を持つ彼等彼女等をより強力に教育する為も兼ねて、『アーカス』に覚醒した者等は彼等彼女達専用の全寮制の学校に全て入学するのは義務だ。
それが分かるからこその不法行為や犯罪をやらかす者も後をたたない。
『アーカス』の段階で誘拐し、自らに都合の良い存在にしたてようとする存在が国だけではなく、あらゆる団体、個人含めて乱立している現状、『アーカス』になった直後に自国で保護が当たり前なのだ。
とはいえ国の保護も成り立たない場合も多く、『トランセンダー』が設立したとある団体が世界を股にかけて動いているのが現状だった。
既に世界中で有名な話だが、総じて瞳を中心に紋章がある『アーカス』となった者の方が『トランセンダー』に覚醒した際に上位クラス以上となることが確定していたからこそ、この空港に集められた少年少女達も皆が瞳を中心に紋章が輝いているのを互いに確認し、顔ぶれを覚えようとしていた。
彼等彼女等に憧れて、瞳を中心に刺青をする人間が若い者に多いのが社会問題となっている。
『トランセンダー』の中でも特に英雄視される場合や神聖視、恐怖や憎悪、嫉妬を向けられる上位『トランセンダー』の一部を、マスメディアやSNSに敢えて露出させ、世論操作に用いている副産物だ。
彼等彼女達無しには人類が立ち行かないのもあるが、実物の『トランセンダー』は皆容姿が世界的な俳優モデルが逆立ちしても勝てない程良いからこそ、戦う姿はさながら映画やゲームが現実化した様に見えるのも加わり、彼等彼女達は世界中で圧倒的且つ熱狂的な人気を博す結果となったのだが、結果として『アーカス』又は『トランセンダー』と偽る人間が後を絶たなくなっている。
常人には見分けがつかないのが問題を余計に増長させていた。
そんな問題を気にもかけない選ばれた者が大半の少年少女等は、周囲を囲む護衛を乗せた車を横目にしながら、次々と護衛付きの見るからに高級そうな小型バスに十人強で区分けされて乗っていく。
どうやらそのバスに乗る順番は飛行機の席がハイクラスであった順らしい。
その順位と各々の顔をほぼ皆が頭に叩き込む。
どこまでも、どこまでいっても強さから示される序列は絶対。
それが『トランセンダー』であり、その卵の『アーカス』だった。
――――だからこそ『トラセンダー』はただの人間に支配されることを何より厭う…否、本能から絶対の拒絶をするのだ。
そんな彼等、彼女達の拠り所であり庇護者となっている『トランセンダー』のみが所属出来るとある団体は、国を超えて『トランセンダー』の信奉者と所属する者を加速度的に増やしていた。
喧騒を巻き起こしていた少年少女等が全員運ばれ終わってしばらくした昼過ぎ、彼女は緊急の任務を完了したかと思えば、すぐに専用の技術と快適さをこれでもかと注ぎ込んだプライベートジェットで、この特別な空港に連れてこられた。
更に豪華な特殊通路を護衛を兼ねた者達とのんびり歩きながら、その少女をしても強行組であったにも関わらず、平和そうに大きく伸びをして嬉しそうに微笑む。
――――彼女の名前は、
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