378話 空間魔法

王城では、決死の戦いが続いていた。

魔王は圧倒的であり、並の兵士では近づく事すら出来なかったが、メイに持たされた魔道具を駆使する事で、死者は出ていなかった。

「めんどくせえな。後ろでふんぞり返ってるのかと思えば、ちまちまやりやがって、邪魔するじゃねえよ。」

「すまないが時間を稼げばこちらの勝ちなんだ。変に攻めたりせずに、守りに入らせてもらうよ。」

「なら、テメェから先に殺ってやるよ。テメェは強くねえ。強いのはその魔道具だ。テメェを殺して魔道具を壊せば、人間ごとき簡単に殺せる。」

「私を狙うとタイムリミットが短くなるよ。」

「テメェはさっきから何を言ってるんだ。いいから死んでろ。」

「うわ!」

「チッ!また魔道具か。」

「こんな事ならかさばるからって他の魔道具置いてこなければよかったな。」

魔王の魔法を結界の魔道具でなんとか防ぐが、一撃でヒビが入ってしまった。

魔王はそれに追撃を加え、結界を破壊する。

「ウグ!」

「弱い、弱すぎる!」

倒れた辺境伯を踏みつけ、力を込める。

「ウワアアア!」

「この程度のヤツらしかいないのか?興ざめだぜ。…!」

その瞬間、魔王は後ろへと飛び退いた。

「貴様、何者だ?」

「私は護衛です。私の護衛対象が世話になったようですね。この落とし前はキッチリとつけさせてもらいますよ。」

「来るのが遅いんじゃないのか?」

「魔道具を使えばもう少し耐えられると思っていたのですが、私の魔道具はどうしたんです。」

「大半が屋敷にあるよ。」

「持ち歩くように言っていたのに、私の忠告を無視するからこうなるんですよ。」

「いやー、すまないね。」

「まったく、早く下がってください。巻き込まれても知りませんよ。」

「テメェは棒を投げてきたヤツか?こんなガキだったとは驚きだぜ、人は見かけによらないってヤツだな。」

「あなたのせいで一日の予定がぐちゃぐちゃです。こんな事が無いように芽を摘んでおかなければ。」

「は!人間ごときにやれる訳ないだろうが。」


両者は剣を構えず脱力した状態で睨み合っていたが、会話が終わった瞬間空気が爆ぜた。

2人が立っていた場所の中間でぶつかり合った2人は激しい打ち合いを繰り広げる。

奥の手を隠した状態でほとんど互角という状況だったが、メイは焦っていた。

今の状態で互角なら魔法が使われれば趨勢がひっくり返るかもしれないという不安に襲われていたのだった。

そんな感情は表に出さず、淡々と最適解の動きをするメイ。

腕力は互角だが、小柄なメイの方が的が小さく素早い、少しづつではあるが魔王を追い詰めて行った。


魔王は一旦距離をとり、剣を振り下ろす。

メイは体勢を整える暇を与えるべきではないと判断して追いかけるが、剣を振り下ろす姿を見て直感的に射線上から飛び退いた。

ゴロゴロと転がって後ろを向くと剣が当たるはずのない距離までキレイに両断されていた。

メイはその魔法を知っている。

「空間魔法…」

「よく避けたな。次は避けられるか?ハハハ!」

魔王は勝ちを確信して笑うのだった。

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