334話 初仕事の邂逅

カイトとサキは王都に到着し、屋敷に向かう。

「どうも、お久しぶりです。」

「あら、あなた達カイト君とサキちゃんじゃない。王都に用事?」

「はい。おっさん…旦那様から頼まれた事があるので。」

「そうなの。王都にはさっき着いたんでしょ?ゆっくり休むといいわ。」

「ありがとうございます。」



「ホントに疲れたわ。カイトが馬に乗れないせいで、馬車を動かしてたのずっと私だったし。」

「しょうがないだろう。なぜか馬みたいな騎乗する動物にだけ嫌われるんだから。」

「犬や猫には懐かれるのにね。なんでかしら?」

「俺が知りたい。」

「休んでるから、何かあったら呼んで。」

「おう。」



屋敷に到着してしばらくすると、屋敷の周りを取り囲まれていた。

「囲まれてるな。動きは良いが、気配を消せていない。これは俺達に感知させるためにワザとやってるのか。本当に質が悪いのか。どっちなんだ?」

「カイト」

「サキ、お前も気づいたか。」

「ここまであからさまだとね。」

「ちょっと外に出てみるか。」

庭に出て周りを見渡すと、人影は見えないものの、視線を感じた。

「ふむ、そこか。」

カイトは気配をあまり隠していない人物に向けてナイフを放つ。

「そこにいるのは分かっているぞ。話をしたいなら出てこい。」

「…よく分かりましたね。多数の人員を配置していたのですが、ピンポイントで見抜かれるとは。まずは自己紹介をしましょう。私はジョン、以後お見知り置きを。」

「俺はカイト、そっちはサキだ。前置きはどうでもいい。俺達の仕事はなんだ?」

「この手紙に書いてあります。」

「結構分厚いな。」

「説明事項をすべて書いたので、読み終わった後は処分してください。お願いしますね。」

「分かった。次会う時は仕事が終わった後だな。」

「そうですね。それでは失礼します。」

そう言って、ジョンは去っていった。



「本名言って良かったの?ジョンって名無しの権兵衛みたいな名前でしょ?」

「どうせ、向こうは俺達の事を調べてる。偽名を使う意味は無い。」

「フーン、それでなんて書いてあるの?」

「情報を盗んで来いとさ。」

「いつもとやってる事変わらないわね。」

「そうだな。後は警備状況とか建物や周辺の地図、失敗した時とか盗んだ後の行動なんかも書かれてるな。」

「断ったらどうなるの?」

「最悪俺達どころかヘイミュート辺境伯家はお尋ね者だ。嬢ちゃんとかおっさんの信用が減る程度済むなら安いくらいだな。」

「まずは行動する事が前提の話なのね。」

「これは単なる金のやり取りじゃない。やれと言われたらどうにかしてやるしかない。」

「責任重大ね。」

「俺たちだけで無理だと思ったなら、嬢ちゃんも呼ぶくらいの事は考えておかないとな。」

「私この仕事受けたのちょっと後悔し始めてる。」

「後悔先に立たずってヤツだな。諦めてどうするか話し合うぞ。」

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