287話 刹那崩し

試合が終わると戦闘で破壊された舞台を補修するために一旦休憩となった。


「アリュール」

「メイちゃん、勝てると思ったんだけどな。悔しいよ。」

「強くなりましたね。私の本気には敵いませんけど。」

「魔法ほとんど使ってなかったのになんであんなに強いのよ。」

「度胸があればいけますよ。」

「炎の中に飛び込む度胸なんていらないよ。しかも生身で」

「師匠、アリュール。お疲れ様、さっきの試合すごかったぞ。」

「クレソンくん、できるだけ消耗させておいたから仇はとってね。」

「そうか…俺あの試合の後にやるのか…アリュールって俺よりも強いんじゃね?」

「さあ、どうだろ。メイちゃんはどう思う?」

「まだ秘密にしておきましょう。」

「えー」

「補修が終わったようですし、私は行きます。クレソン、先程のような派手な試合をする必要はありません。あなたはあなたの戦い方をしなさい。」

「ハハッ、そうだな。できないことをやる必要は無いか。」

「そういうことです。」



メイは後に控える選手を瞬殺し、あっという間にクレソンの出番になった。

「もうちょっと手加減してあげて欲しかったな。アイツらちょっと落ち込んでるんだけど…」

「相手が悪かったと言ってあげてください。」

「素っ気ないねえ。まあいい。行くぞ師匠、さっきの試合で師匠のスピードに慣れたからな。」

「何度か見ただけで対応できるほど、私は甘くありませんよ。」


2人が言葉を交わした後、試合が始まった。

「白銀流…うわ!」

「悠長に構える時間があると思っているんですか?」

「タンマ!」

「タンマなんて無い!」

「だよね!?痛い!」

「チッ、カスっただけか…」

「アリュールの時は待ってあげてたのに、これだから師匠は…」

「何ぶつくさ言ってるんですか。叩き切りますよ。」

「一々物騒だな。いくぜ。武の極地«縮地»」

クレソンが1歩踏み込むと、メイの前に移動する。

だが、それは素早く移動したのとは違う違和感のあるものだった。

「極地だなんて大袈裟ですね。」

「軽口叩きながら、受けきるんだもんな。まいったぜ」

「極地なんて言ってこれだけですか?」

「やめろ、連呼するな。恥ずかしくなるだろ。そんなに言うならもう1つ見せてやるよ。武の極地«一突»」

クレソンは剣を突き出して顔を狙う。

だが、その突きは1回に見えて何度も剣を突き出しているのだ。

メイは顔を横に逸らし、回避しながら、腕にカウンターを狙う。

「危ねぇ。腕斬られるかと思ったぜ。」

「荒削りですが、良い技なんじゃないですか。武の極地wとやらは」

「なにわろてんねん!もういいよ!」

「悪かったですよ。いじけないでください。」

「次で最後だ。フラスと協力して作り出した技、よけずに受けてくれるよな?«刹那崩し»」

「なるほど、いいでしょう。もし、破れたのなら免許皆伝でもあげますよ。白銀流«刹那»」

刹那が超高速で移動する抜刀術なら、刹那崩しはカウンターを狙う返し技だ。

メイが踏み込み消えた瞬間、クレソンはメイが目の前に移動する前に行動を開始した。

メイの頭が来るであろうところに木刀を振り下ろす。

それはメイにクリーンヒットしたが、慣性によりメイの木刀はクレソンの脇腹に深く喰い込んだ。

クレソンは肋骨が何本も折れ、メイは数メートル吹き飛ばされた。

クレソンは口から血を吐きながらも、なんとか立ち上がったが、メイは脳しんとうをおこして立ち上がれなくなっていた。

「師匠、今回は俺の勝ちだな。」

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