288話 心の成長

クレソンはメイとの試合で全力を出し尽くしており、残りの4人を倒すための余力はなかった。

ここで負けてたまるかと奮起し、3人は倒したもののそこで力尽きた。



「クレソンくん、メイちゃんは先鋒だって忘れてたね。」

「師匠と戦ってるのに、余力残して戦えは無理だって…」

「今頃メイちゃんはほくそ笑んでるかもね。」

「師匠ならありえる。元々勝つ気が無かったみたいな。」

「結果オーライとは思ってそうだね。」

「ダメだ…もう一歩も動けねえ。明日は筋肉痛だなこりゃ」

「メイちゃんに勝ったのに、結局負けちゃったし、休めるね。」

「なんかトゲを感じるな。」

「クレソン、アリュール」

「あ、メイちゃん。倒れてたのに、もう大丈夫なの?」

「大丈夫ですよ。もう元通りです。」

「血を流してたよね?」

「はい、ケガの修復をしてたら負けてました。骨は早く治ったんですけど、脳の損傷が少し酷くて…」

「なんで歩けてるの?」

「なぜ私が脳の損傷程度で動けなくなると?」

「おっと?」

「師匠は身体がグチャグチャになっても死なねえんだよ。なんつーか、身体が本体じゃない?的な」

「アンデッド的な?」

「どちらかと言うと逆なんですけど…それは置いておいて、もう少し、シャキッとしたらどうなんですか。」

「今日は試合も無いし、休ませてくれよ。本当にヘトヘトなんだよ。」

「クレソンは免許皆伝なのでうるさく言うつもりはありませんけど。あ、これを証としてあげましょう。」

「なにこれ」

「小さな宝石を付けた腕輪ですよ。安物ですけど、免許皆伝の証なのでなくさないでくださいね。」

「ヤッターって、もうちょっと、豪華にできなかった?」

「自分で買い換えればいいんじゃないですか?最近、金欠で」

「俺もだわ。まあ、文句言っても始まらねえか。ありがとな師匠。」

「私はもうあなたの師匠ではありませんよ。」

「師匠がしっくり来るから師匠でいいんだよ。それに、師匠全力じゃなかっただろ?魔法使ってなかったし。」

「さあ、どうでしょう。」

「アレが実戦だったら俺は負けてるんだ。俺は師匠を殺す術を持っていない。でも、師匠は一撃掠らせるだけで、俺は戦闘不能になる。タダの試合だから勝てたんだよ。試合に勝って、勝負に負けるってヤツだ。あの時俺は師匠との力の差を実感したんだよ。」

「…安心しました。あなたが私に勝ったことで増長しているのではないかと心配していたのです。身体だけでなく、心も成長していたようですね。」

「俺を見くびるんじゃねえ。タダの悪ガキは何年も前から卒業してるんだよ。」

「それは否定したいですけど、今はやめておきましょう。」

「そうだね…」

「なんでだよ!?」

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