286話 油断大敵
「見せてあげる。私の本気。木刀なんかで防げるとは思わないでよね。」
「そう言われると俄然やる気が出てきますね。」
「いくよ。レイ、ルウ。精霊纏」
アリュールが使用した精霊纏は以前メイが使用したモノとは違い、2体の精霊を用いることで2色の衣となっていた。
「さっさと片付けちゃおう。」
「やれるものならやってみなさい。」
アリュールの攻撃に合わせて一気に前進するメイ
「レイ!」
『任せろ』
メイの進行方向に火炎を発射し、足止めを行う。
触れれば一瞬で消し炭になると判断したメイは様子を見ようとする。
だが、一瞬動きが止まったメイを氷の弾丸が襲う。
メイは迎撃せずに後ろに下がった。
「単純故に厄介ですね。」
「そうでしょう。本気を出すなら今なんじゃないの。」
「言ってくれますね。私は本気ですよ。」
メイが木刀の刀身をなぞると、氷が木刀の周りを覆った。
「これで大丈夫でしょう。」
「そんなモノで対処したと思われるのは心外だよ!」
そう言うや否や氷と炎の弾丸がメイを襲う。
だが、その弾丸は試合の序盤に放たれていたモノとは一味も二味も違う。
どれだけ強化したとしても元がタダの木刀に耐えられる道理などなかった。
迎撃の最中に折れた刀身を拾い、全力で投げつけるメイ
その威力は氷の壁を貫通するほどだった。
「うわ!危ない!」
「戦闘中に目の前を塞ぐのは賢いとは言えませんよ。」
目にもとまらぬ速さで背後に回ったメイは回し蹴りを叩き込む。
アリュールに当たる寸前、炎の手がメイの足を掴み取った。
掴まれたメイの足は火傷で誰もが目を覆うような状況になっていた。
『いくらキサマがバケモノでも、素手ではどうにもできまい、降参しろ。』
「それはどうでしょうか。」
その瞬間、大爆発が起こった。
「な、なにが…」
『これは、キサマ!何をした!』
「レイ、あなたの身体には燃料袋とも言うべき器官があります。私はそれにキズをつけ、漏れだしたエネルギーに火をつけたにすぎません。」
『いつの間にそんなことを』
「私が刀身を投げたでしょう。その時にキズがついたんですよ。運が良かったんです。」
『してやられたようだ。エネルギーの流出が止められん。オレはここまでのようだ。後は頼んだ。』
そう言うと、レイは顕現を解除し、アリュールの身体から離れた。
「まさか、その状態でやられるとは思わなかったよ。」
「少し運が良かっただけですよ。狙いはしたんですけどね。」
メイは折れた木刀の先に氷の刀身を作り出し、構えた。
「白銀流«刹那»」
「精霊術«アイシクルキャノン»」
砲弾と刃が交わり、氷が砕ける。
砲弾は衝撃が加わると砕け、小さな礫となってメイを襲った。
全身にキズを負うも、メイは止まることなく、剣はアリュールを捉えたのだった。
凄まじい攻防を見ることになった観客達は、審判の判定が出るまで、声を出せなかった。
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