282話 おお、喋った

『なんだか久しぶりね。』

「そうね。もう悪さしたらダメよ。」

『しないわよ。私だって死にたい訳じゃないし。』

「それならいいわ。」

『どうして私を消さないの?後悔しても知らないわよ。』

「あなたは私が生み出したもう1つの人格。それを消してしまったら私の罪に目を背けてしまう事になるわ。罪は無くならない。私だって一生贖罪し続けろとは言わないけど、忘れる事は絶対にあってはならないわ。…答えになってるかしら。」

『そう。いい答えなんじゃないかしら。』

「どうして上から目線なのよ。」

『脳内お花畑のアンタ達にはこれくらいで十分よ。』

「なによそれ。」

『四六時中イチャイチャやってるくせに』

「そそそ、そんなことしてないわよ!?」

『吃どもってる時点でお察しね。』

「グヌヌ…」

「準備が終わったので、ここに寝転んでください。」

「わ、分かったわ。」

「麻酔をかけるので起きた頃にはすべて終わっていますよ。」




「…ん」

「起きたか。」

「カイト、いたんだ。」

「さっき来たところだ。気分はどうだ?」

「ちょっとしんどいかも。」

「そのダルさは麻酔の副作用です。処置は上手くいったので、安心してください。」

「そうなんだ。」

『おはよう、寝ぼすけ』

「うわ!急に話しかけないでよ。」

「ん?アナが何か言ってるのか?」

「サキさんの口を使って話せるはずです。やってみてください。」

『ちょっと、私で実験しないでくれる?』

「おお、喋った!」

「なんだか不思議な気分ね。」

「多重人格の患者が今までいなかったので、良いサンプルになりそうです。」

『真顔で言うんじゃないわよ。アンタの場合ウソかホントか分からないのよ。』

「私が2人で実験なんてするハズないじゃないですか。」

「それは俺でもウソだって分かるな。嬢ちゃんはするだろ。」

「絶対にするわね。」

『腹黒め。』

「それただの悪口じゃないですか。」



ランメル視点


追手を躱しながら数日かけて別の拠点に移動したランメル。

「ようランメル。王国の拠点をまた潰されたんだって?何やってんだよ。」

「うるさいなぁ。お前に関係ないだろ。」

「お前が逃げなければならない敵、俄然興味湧いてきた。戦ってみたいぜ。」

「やめろ。対策も無しに勝てる相手じゃない。」

「じゃあどうするんだ?」

「ヤツを監視して1つだけ方法を見つけたんだ。さあ、どうやって料理してやろうかな。クヒヒ」

悪意は確実にメイを蝕もうとしていた。

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