281話 悪党

メイの研究室


『サキと一体化させるって言ってたけどまだなの?』

「呪いが身体に馴染んでいないので、まだです。不測の事態が起こる可能性がありますからね。」

『ふーん。それはそうと、アンタの力の本質って…』

「しー、みんなには内緒ですよ。」

『いや、別にイイんだけどさ。何があったらあんなことになってるのかちょっと気になるんだけど。』

「大昔に色々あったんですよ。」

『アンタまだ13歳でしょ?』

「もう14歳ですよ。」

『そういう事じゃないわよ。』

「あなた達と同じですよ。」

『同じって、もしかしてバレてる?』

「もうバレてますよ。」

『…ちなみに何がバレてるか聞いてもいい?』

「転生のことですよ。」

『ああ、バレてるんだ。という事はアンタも転生したんだ。こんなこと話していいの?サキに記憶は全て引き継がれるわよ。』

「あなたとサキさんの意識は完全に一緒にならないですよ。」

『え?なんで?』

「カイトが駄々をこねたので、一体化はやめにしました。」

『何やってんの?』

「カイトに聞いてください。サキさんも了承したんですよね。」

『そうなんだ…』

「母親を殺したことを考えていますか?」

『それをどうしてって、アンタ記憶を読めるんだったわね。』

「あれはどういうことですか。」

『サキはね、カイトにかなりの執着心を持っていたわ。自分以外の女がカイトに近づくことが許せなかった。友達はもちろん、母親もね。でも、前世の経験から人間恐怖症になっていたサキは何も出来なかったわ。負の感情がどんどん流れ込んできたわ。もしかしたら、あの頃が私の最盛期だったのかもなんて思ったりね。』

「それで?」

『私はただの子どもだったし、ずっと大人しくしてたわ。でも、そんな時ランメルを見つけた。一目で分かったわ。アイツは人の幸せを憎む最低なヤツだってね。だから私はランメルの前でどれほど幸せか語ってやったの。もちろん家の場所も教えてあげたわ。』

「それにまんまと引っかかったと。」

『そういう事。あの時は笑いが止まらなかったわ。誘導した通りに動いてくれたんだもの。…この事をサキは知らないわ。最近は起きていたみたいだけど、昔は眠っていたしね。』

「なるほど、今はどうなんですか?」

『今?もうしないわよ。サキから流れてくる負の感情はほとんど無いわ。私が消えるのも時間の問題よ。』

「そうですか。悪党どうし話が合うかもと思っていたんですけどね。」

『この事、2人には言わないの?』

「私たちは互いに秘密を打ち明けた仲じゃないですか。」

『そう、私も利用する気なんだ。』

「サキさんが出来ないと言うなら、あなたがすればいい。違いますか?」

『性格悪いってよく言われるでしょう。』

「いたいけな美少女を捕まえて性格悪いなんて酷いですね。」

『いたいけねえ。腹黒って言うのよ。でも、その考え方、嫌いじゃないわ。』

「フフ、引き返すことは叶わない地獄へようこそ。」

『地獄…ね。地獄でもなんでもやってやるわ。』

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