126話 研究棟の変人

「君たち、ちょっと待ちたまえ!」

突然大声で呼び止められた。

10mほどの距離を小走りで走ってきただけで息を切らしているところを見ると、まったく運動ができないらしい。

「ハァハァ、そこの君、名前はなんと言うんだ。」

「わ、私ですか。私はアリュールです。」

「そうか、ではアリュール君、僕と一緒に来たまえ。必ず君のためになるだろう。」

男はアリュールの肩をガッチリと掴むとどこかへと連れていこうとした。

「ちょ、ちょっと待ってください!あなた誰ですか!」

「これは失敬。僕はこの学園の教授でニコラスという。精霊術に関する研究をしていてね。研究室まで来てくれないか。」

「え、ええ。メイちゃん。」

助けを求めるような顔でこちらを見るアリュール。

だが、精霊術の研究をしている教授ならば都合がいい。

「アリュール、私もついて行きますから、行ってみましょうか。」

「そんな!?」

親に捨てられたような顔をしているが、そこまで嫌なのか。

「お友達もそう言っているし、さあ行こうじゃないか!」

「ふぇぇぇ…」

ニコラスは先程の運動能力が嘘のような走りでアリュールを抱えて走って行った。



「ここが僕の研究室だよ。」

「うわ、汚い。」

ニコラスの研究室は書類や書物が大量に散乱していた。

「こんなので研究なんてできるんですか。」

「大丈夫さ。論文を書く時は奥の部屋でやるからね。」

「研究室って全部こんな感じなんですか。」

「知らないよ。他の人の所なんて行かないし。」

うわ、ニートだ。

「なんか悪口を言われた気がするけど、まあいいか。これに腕を通してみてくれ。」

先ほどからゴソゴソとしていたかと思うと輪のついた何かの機械を引っ張り出してきた。

「この機械はね、精霊との親和性を調べる機械なんだよ。僕の見立てでは70以上の数値が出ると思うんだ。」

「70以上と言われても平均が分からないのでなんとも。」

「普通の精霊術士は50くらいだよ。70は希代の英雄が出せるレベルだよ。」

「私にそんな才能あるはずありませんよ!」

「ちなみに最大値は?」

「最大値は100だよ。ただ、100は数百年前にエルフの巫女姫が記録した以外の記録は無いんだ。さぁ、やってみてくれ。」

「メイちゃんも否定してよ!それに、目が血走ってて怖いです!?」

「まあまあ、やってみればいいんじゃないですか。」

「うう、じゃあやってみるよ。」

アリュールが機械の輪に通すと、メモリが一周した。

「こ、これは!!100を超えただと!こんな逸材がいたなんて!」

自分の出した数値が信じらないようで、目を剥いていた。

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