98話 宣言
翌朝、昨日書いた手紙を商人に届けるようお願いして、もう一度森に入った。
「今度こそ呪いを解かないと、完全に忘れてましたからね。」
冒険者がいない地点まで移動し、聖術を発動する。
聖術«プリファケイション»
結界術«プリズンライト»
光で浄化する。すると、闇の塊が逃げようと実体化する。それを逃げられないように牢獄に閉じ込めることで、完全な浄化ができるようになる。
闇に逃げられると、他の誰かに取り憑く可能性があるので、絶対に逃がしてはいけないのだ。
「ふぅ、これで終わりですね。後は後片付けをしないと。」
猛烈な地響きが近づいてくる。
強力な聖術を二つも使ったことで、かなり広範囲の魔物を呼び寄せてしまったらしい。
全方位から襲いかかってくる魔物の攻撃を避けつつ、こちらも攻撃の手は緩めない。
もし、防戦一方になるとジリ貧なってしまうからだ。
「何をしておるのだ。貴様は。」
「あれ?なんでいるんですか?」
「何か巨大なエネルギーが発生したから見に来てみれば、貴様がいたんだろうが。」
「完全に忘れていた目的を叶えに来たんですよ。」
「呪いを解いたのか。」
「気づいてましたか。」
「当然だ。あんな禍々しい気配を発していたのだぞ。それが今は綺麗に無くなっているからな。」
「解呪だけなら簡単なんですけどね。その後の処理が面倒なんですよ。」
「確かにな。あの量の魔物は巨大な都市ですら破壊できるだろうな。」
「周りに迷惑かけないようにここに来たんですけど、あなたに迷惑かけちゃったみたいですね。」
「これくらいは迷惑にならん。それに、何かあれば手助けをしてくれるのだろう。少しくらい迷惑かけられても問題はない。」
「そうですか。あ〜疲れた。さすがにあの量はしんどいですね。」
「普通は軍が出る規模だからな。」
「まぁ、目的は達したので帰ります。」
「達者でな。」
「お世話になりました。」
「もう帰っちゃうのね。この家にいた時間は少なかったけど、寂しくなるわね。」
「嬢ちゃんが命の恩人だってこと忘れねえ。何か困ったらここに来な。いつでも大歓迎だ。」
「恩なんて既に返し終えてますよ。ここでの一時は楽しかったですから。」
「ピーターのやつ挨拶しない気か?おい!いい加減下りてこい!」
「別にいいですよ。ピーター君お世話になりました。また会いましょう。それでは本当にお世話になりました。」
「次はバーチル商会ですね。」
「メイさん!俺、絶対強くなる。メイさんを手伝えるくらい強くなるから!そうしたら俺と!」
「その続きは今度会ったときに聞きましょう。強くなりなさい。護りたいものを護れるように。」
「ごめんください。」
「メイさんじゃありませんか。どうしましたか?」
「帰るので挨拶にと思ったんですけど、何してるんですか?」
「バーチル商会を畳むことにしたのですわ。新天地で初めからやろうと思いまして。」
「そうなんですか。タイミングが悪かったですかね?」
「いえ、ちょうど良かったですわ。途中まで護衛していただけませんこと?この前のように賊に襲われるかも知れませんし。」
「うーん、行き先も同じだしいいですよ。」
「それは良かったですの。もう少し待ってくださいまし。もう少しで馬車が用意できるはずですわ。」
「随分少ないですね。」
「全部売り払うことにしましたの。荷物は服や換金用の宝石くらいですわ。」
「なるほど。これなら移動も速そうですね。」
「お嬢様、準備ができました。」
「それでは参りましょう。いざ新天地へ!」
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聖術«プリファケイション»・・・最上位聖術。大量の聖気を使用するため数十人規模で行われることが多い。
結界術«プリズンライト»・・・光で出来た結界。術者が結界を解くまで何人たりとも出入りすることはできない。
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