フリーのルポライターと風俗嬢の二足の草鞋を履く女性が、新宿歌舞伎町を舞台に、ちょっとした騒動に遭遇するお話。
まさに現代ドラマ、という趣の現代ドラマ。タイトルにもある「アンダーグラウンド」、それも現実社会に存在するそれを(なにしろ舞台が実在の有名な街)、真っ直ぐ描き出してくれる物語です。
リアリティラインの引き方、作中の出来事や法則が、決して現実からはみ出ないところが好きです。あくまで現実に起こりうる(どこかで起こっているであろう)物事を描きながら、でもフィクション的な作劇はしっかりしている。ちゃんと物語としてのカタルシスがある。この相反する要素の両立というか、線引きがしっかりしているのが魅力的でした。
主人公が楽しいです。いや楽しいとか言っちゃいけない大変な日々を送っているのですけれど、でもそれを乗り越えていく姿勢の逞しさ。現実をシビアに見つめる瞳に、ある種の人情味とドライさの同居する感覚。
ハードでダークな世界を描きながらも、でも読後に心地よい晴れやかさが残るのは、彼女のこのタフなキャラクター性があればこそだと思います。いやストーリーの流れそのものも結構気持ちいいんですけど。主人公の語りの雰囲気が楽しいお話でした。