ルージュ学園

 ここは由緒正しき歴史をもつ魔法学園、ルージュ学園。


 名だたる名家のご令嬢やご子息の中でも、トップクラスの魔力をもつ者だけが学園の門を叩くことを許される。


 そんな超名門学園に、なぜ私のようなものが入れたかと言いますと。先に言いますが裏口入学じゃないですわよ?


 闇魔法は使い手というだけで優遇されるようです。魔法には亜種魔法が時おり発現するのですが、闇と光は特に発現率が低いのが原因ですわ。


 そのためクラス訳でも、亜種は亜種属性科のクラスに分けられます。ですのでライアン様とは別のクラスになる……はずだったのですが。


「ティアと同じクラスになれてよかったよ!」


 なぜか同じクラスに!

 これには原因があって、ライアン様の固有スキルに関係しています。


 彼の固有スキルは以前にも話していただいたのですが、すべての属性を操れる「全属性保有」


 つまりどのクラスにも入れちゃうのです。

 むしろすべてできるため、出来ないものを学びたいと本人が言い出しての亜種属性科編入ですわ。


 ……私と同じクラスになりたいから、わがままをいったように見えるのは気のせいかしら?


 まぁ、かわいいからいいですけれど。

 ちなみにクロロ殿も一緒です。闇魔法と光魔法の使い手には護衛が一人つけられるそうで、彼は護衛枠で一緒に登校しています。


 そして今日は、初登校日ですわ!

 教室の前にたつと、すでにホームルームが始まっているようで中は静かでしたわ。


 この場合は先生が呼んでくださるはずですので、それまでは待機ですわね。


「そろそろ入ってきてください」


 先生にそういわれて教室にはいると、痛いほど視線が刺さります。


 うーん、これは私は歓迎されていない雰囲気ですわ。見ればわかります。


 皆様私を見ればこそこそお話合いをされてますし、まるで魔物でも見るような目を向けられています。


 しかしライアン様達はその目に触れられておらず、むしろ私に巻き込まれた可哀想な人たち、と言うような同情の目を向けられています。


「歓迎されておりませんわね、私だけ」


「闇魔法使いはもともと悪党が多いから、変な偏見が持たれてるんだよ……」


 あぁ、なるほど。さながら闇に落ちた令嬢に見えているのですね。まぁ、間違いではありませんわ。


 そんな歓迎されてないムードの中、一人だけ私に微笑むかたがいらっしゃいました。


 その方は身なりは一応ドレスを着ていますが汚れていて、あまり良いとは言えません。なのでよけいに目立ちました。


 彼女だけまた、このクラスに馴染めていないように見えたのです。


 もしかして、平民の方かしら?

 だとしたら貴族ばかりのこのクラスに馴染めないのは仕方ないですわね。


 平民でも特殊な魔法を使う場合は特待生として学園にはいることが、ごく稀にあるそうですから。


「初めまして、シェスティアと申しますわ」


「僕はライアン・レイヤード」


「護衛のクロロっぺ~!」


 三人とも自己紹介をして、各々の席へと向かいます。その最中でもヒソヒソ声が聞こえてうっとうしい。


 ここでなにか問題でも? と噛みついても良いことはありません。何せ喋っている証拠もないですし、しゃべった、しゃべってないの水掛け論は一番無意味ですもの。


 こういう嫌がらせはよく物語などではありますが、実際自分が体験すると気分が悪いですわね 。


 こうしてあまり居心地のよくない雰囲気の中、授業が始まりましたが授業事態は学ぶことが多くて楽しいですわ。


 こうしてあっと言う話に昼休み。

 本来は学園の食堂があるのでそちらでいただくのですが……。


「ごきげんようライアン様」


 お昼時になった瞬間、ライアン様が令嬢に囲まれる事態に。

 まぁ、そうなりますわよね、だって未来の国王ですから。御近づきになりたい令嬢なんて、ごまんとおりますわ。


 令嬢に囲まれたライアン様、視線で助けてと言われましたが私は知らぬ顔。


 だって私、およびでないですもの。

 早めに切り上げようとしたライアン様に、一人の令嬢が近づいてきました。


 その途端、取り巻きだったらしい令嬢たちが下がりました。


 明らかにその方だけオーラが違います。いえ。身なりとかも違うのですが、ある意味別格と言いますか……。


 簡単に言えば、このクラスのカースト1位でしょうね。


「ごきげんようライアン様。私、エルフの国第1王女、名をエルフィンと言いますの」


 ……エルフの国?

 私もライアン様も顔色が変わりました。

 私は目でライアン様に合図をすると、彼も頷いて……にこやかにエルフィン嬢に笑いかけました。


「ご挨拶どうも、エルフィン嬢」


「まぁ、気軽にエルフィンとお呼びください。よろしければ、学園内をご案内いたしますわ」


「本当かい? 助かるよ」


 ライアン様、うまく取り入ってくださったみたいですね。私のため、となると嫌いな令嬢でもお相手してくださるのです。


 あとでたくさん愚痴をききませんと。


「クロロ殿、ライアン様についていってくださいな」


「え、離れてよか?」


「いいですわ。それよりも、彼女に取り入って情報を入手してほしいのです」


「了解っぺ~!」


 せっかく見つけた、エルフの国の糸口。

 逃してなるものですか。


 クロロ殿はとことことライアン様のところへいきましたので、わたくしは一人で食堂へと向かいました。


 ……まさかこの後、胸くそ悪いものを見ないといけなくなるとは知らずに。

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