王位継承権

 魔物の国……の………王位継承権……。

 それは時期、魔王になると言うことですわよね……?


 なぜそれが、私に?

 えっと、話がついていけませんわ。


 あまりに突拍子が無さすぎて私は目が点となっていました。


「グロード……流石に結論すぎる。ティアが話についていけてないよ」


「うむ、やはりまずかったか……」


 どうやら話が通じているのはこのお二人だけのようです。全く、犬猿の仲のように見せかけて実は仲良しではないですか。


「えっと、ティアは魔物の国の王がどうやって決まっているか知ってるかい?」


 王の選定方法……?


「そんなの、王の子供に受け継がれていくものではありませんの?」


 普通はそうですわ。レイヤード国もアリバトス国も現に代々その息子が王位を継承しておりますもの。


 しかしライアン様は首を横に振りました。


「魔物の国は特殊でね。代々闇魔法の使い手が王になるんだ」


 ……え?

 その言葉にグロード様を見ると、彼は小さく頷きました。


「左様、私も闇魔法を使う。生まれは貴族ではない。孤児だ」


 な……なんと……元孤児が王になってますの!?

 それもかなり衝撃的ですが、闇魔法の使い手が王になるだなんて、王位継承権がいくつあっても足りないのでは?


「本来闇魔法の使い手は100年に1度程度しか出現しない。私が力に目覚めたのが200年ほど前だ、時期としてはおかしくはないのだが……」


 あらグロード様、さらっと年齢が200歳以上と暴露しておりますわね。そんな歳には見えませんのが、恐ろしいですわ。


「よりにもよってお主とはな。とにかく詳しい話は後日にした方が良さそうだぞ」


 辺りを見渡すグロード様はそうおっしゃられて気づきました。遠くから騒がしい音が聞こえます。この方角は……アリバトス国一番の軍事力を誇る街アリバートがありますわ。


 恐らく叔父様が援軍を呼んでいたのでしょう。

 でも領主の首は落とされた。なにもかも、手遅れですわ。


「ここを落としたのは魔物の国ということにしておこう。いいだろうグロード?」


「ん……? 構わんが……わざわざ領地をくれると言うのか?」


 ライアン様の発言に不思議に思ったグロード様は首をかしげられました。整った顔ですのでなにしても美しく見えるのは、ずるいですわよ……。


「ティアがよければ、だけど」


「私は構いませんわ、興味ございませんし。でもどうしてですの?」


 するとライアン様、にっこりと微笑みました。


「だってグロードのものは時期に、君のものになるんだから。そうだろう時期魔王様? あ、いや魔王女かな?」


 ……ライアン様、それ洒落になりませんわよ。

 私まだ王位の話はイエスと入っておりませんのにっ!


 もう二人揃ってその気満々じゃないですか!


「と言うわけで僕らは退散しよう。ティア、立てるかい?」


「えぇ、なんとか……きゃぁっ!?」


 立ち上がることはできましたが、うまく足に力が入らず転んでしまいました。転ぶ寸前、ライアン様が体を支えてくれましたので、怪我はせずにすみましたけど……。


 全然体が動きませんわ! なんですのこれ!!


「いきなり高出力の魔法を使ったんだ、体への負担が大きいんだよ」


 そういうと、ライアン様は軽々と私を持ち上げました。お姫様だっこですわね、これ。


 それをみたグロード様、やれやれとため息をこぼしております。べつに見せつけてませんわよこれ! 緊急事態ですから!!


 なんて目で訴えながら、私たちは馬車に乗り……こまずなんとライアン様、足で魔方陣を書き始めました。


「はは、これずーとやりたかったんだよね」


 ライアン様はそう楽しそうにいいながら魔方陣を起動させました。


 一体何をするつ……


 グァアアアアッ!


 ギャーーーー!!!


 突然魔方陣がなくなったかと思ったら、そこに大きな赤色のドラゴンが現れたのです。


 え、え、ドラゴン……なんでぇぇ!?


「以前いったろ、ドラゴンだって呼べるって」


 そ、そういえば……腕輪で魔法が使えないときにそんなことを言っていような、言っていなかったような……。


 ん? このタイミングでドラゴンを呼び出すって……まさか……。


「さ、乗るよ!」


 ですよね!!

 動けない私に拒否権はありませんが!! これ普通に! 怖い!!


「きゃぁああああっ!!」


 とんでもないスピードで上昇されれば、これまた猛スピードで前進するドラゴンに振り落とされるんじゃないかと、私は悲鳴をあげまくり。


 そんな私を見てけらけら笑うライアン様。鬼ですわ、この人……っ!


 馬車だと半日ほどかかる屋敷にも、わずか1時間でついてしまいました。

 でもその1時間で私はくたくたですわ……いえ、すでにくたくたでしたけども。


「お帰りっぺ~!」


 中庭に降り立つと、ちょうどクロロ殿とサリーが話していたらしく、出迎えてくれました。さすがのサリーも、ドラゴンには目を丸くしてその場に固まっておりました。


 そりゃ、そうですわよね……私だって固まりましたもの。


 クロロ殿は、魔物の国で見慣れてるのでしょうか? ドラゴンともすぐ仲良くなっておりますわ。


 魔物の国……いったことはないので、どんな国なのかは存じ上げませんが。一度きちんと見てみる必要があります。


 エルフの国と、魔物の国……

 この二つの関係性も、明日きちん問いませんと……ね。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る