第8話

「ええ。私はなるべくこの洋館の外には出ないようにしようと思います」

「そのほうがいいですね。俺もそうしようと思います」

「それでは」

アンノウンは一枚のDVDを手に取ると、出て行った。

俺はしばらく考えてから適当なものを探し出し、それを持ってミニ映画館を出た。

パッケージを見て少し期待をしていたのだが、その時見た見知らぬ洋画は、驚くほどつまらなかった。


次の日、食堂兼台所でももさんに会った。

「二度目ですね」

「そうね。私、あまり部屋にこもらないようにしたからね」

「そうですか。ここには八人いるそうですが、みんなに会いましたか?」

「ポンチさんとみゃあちゃん。それにノーレッジさんとキングと言う人に会ったわ」

キング。初めて聞く名前だ。六人目だ。

「へえ。キングさんて、どんな人なんですか?」

「おじさんよ。小柄でしょぼくれた感じの人よ。口数も少なくてね。おとなしいと言う以外、どんな人なのかはよくわからなかったわ。名前はキングだけど、印象はまるで正反対ね」

本人が聞いたら、さぞかし気分を害するだろう。

俺はそう思ったが、もちろん口には出さない。

「そうですか。俺はまだ二人しか会っていないですね」

「やっぱり他の人のことは気になりますよね」

「そうですね」

俺がそう言うと、もも皿に食料をのせて「それじゃあ」とその場を後にした。

俺も適当に朝食を作り、部屋に戻った。


昼に娯楽室に行くと、なんとアンノウンと知らない男が将棋をしていた。

――キング? ノーレッジ? それとも。

「どうもアンノウンさん。ところでこちらの方は?」

「ああ、くまちゃんですよ」

「どうもくまちゃんです」

「初めまして、ポンチです」

キングでもノーレッジでもなかった。

体格のいい三十代に見えるくまちゃんという男だった。

「いやここで一人将棋をしていたら、アンノウンさんが一緒にやりませんかと声をかけてくれましてね」

「私は将棋が好きなものですから」

「私もですよ。そこで一勝負ということになったわけです」

俺は将棋のルールくらいは知っているが、あまり得意とは言えない。

だから誘われても断ろうかと思っていたが、二人とも将棋に集中しているようで、それ以上は俺のほうには目もくれず、将棋盤を見つめている。

俺はそのまま娯楽室を出た。

とにかく俺以外の三人に会い、七人の存在を確認した。

――あと一人は誰だろう?

少なくとも俺が知っている限りでは誰とも会ったことがない人物だ。

ゲームなんかだとラスボス感が漂うが、最後の一人になったのはたまたまであり、おそらく部屋に引きこもっている時間が長いためだと思われる。

それだけのことだ。

今後もしばらく会わないかもしれない。

俺はそう考えたが、その考えはすぐにくつがえった。

なんと娯楽室を出て自分の部屋に戻る途中、背が高くてやけに細身の三十代と思える男に会ったのだ。

俺はすぐさま声をかけた。

「初めまして。ツアー参加者のポンチです」

俺がそう言うと、男が返してきた。

「あっ、初めまして。参加者の社畜です」

キングでもノーレッジでもない。

なんと八人目だった。

俺がそのことを告げると社畜が言った。

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