第36話 結婚式前夜

 出来上がった食事にありつく。今日は本当に疲れたな。


「ねぇねぇ2人で何話してたの? すっごい長かったけど」


「うーんまぁ男同士の話ってやつだよ」


「そうじゃな」


「ふーんそっかー。でもなんか仲良くなったみたいでよかったよ。結婚しても仲が悪いなんて嫌だったからね」


「そういえばドワルフ。お主の両親はどうしたんじゃ?」


「いやーそれが……」




★   ★   ★




 俺はドーコに話したようにこの世界の住人でないことや自分の境遇に関して伝えた。


「まさか本当にポッとでの男だったとはの」


「まぁそう言うわけでこっちの親と話すことはできないな」


「仕方あるまい。じゃあワシらがお主のこの世界での家族となるわけじゃな」


「そうだねあんた。それにしてもこんな立派な息子ができてママは嬉しいよ」


 なんだか気恥ずかしいな。前世の俺はとてもじゃないが褒められた人間ではなかったからな。こんな風に両親から愛されてた訳でもないし。だからかどこか体がむず痒く小っ恥ずかしい。


「もーママがそんなこと言うからドワルフが照れちゃったじゃない」


「べっべつに照れてなんかない!」


「意地張っちゃってーこのこの!」


 ドーコが弄ってくれたおかげでなんとかどこか恥ずかしい空気から抜け出す事ができた。


「ドワルフお主の夢はなんじゃ?何故ドーコに力を貸した?」


 真剣な顔で俺を目を見るドウェイン。


「簡単だ。魔物に怯えなくても良いくらいの最強装備を作って安全にスローライフを満喫することだ。あっでも配信者の頂点にも立ちたい」


「最強装備となるとオリハルコンでフルアーマーを作るつもりか?」


「いやまだ分からないが、そんなに生き急ぐようなものでもないし、もしかしたらもっと俺にあった装備があるかもしれない」


「配信の方はどうするつもりじゃ? ワシらはあんまり詳しくないから分からんが、何か算段でもあるのか?」


「前の世界だったらなんとなくは想像がついたがこっちの世界となるとなー。本当に1から始めることになるから他の配信とかを見て勉強しながらやっていくよ。でもひとつだけ方法思いついた方法があるぜ」


「何をするの?」


 ドーコも興味ありげだ。


「それはなドワーフもエルフもヒューマンもみんなが見れる配信にするんだ。それは俺にしかできないだろうしな。混血って言うのは俺の短所でもあり長所でもあると思ってる。それはここで証明できたしな」


「ふむ確かに混血であることは今までは忌むべき存在であった。だがこれからお主が世界を変えていってくれることをワシも願っておる」


「そんな世界を変えるなんて大それた事を言われてもな。俺は俺が出来ると思ったことをボチボチやっていくだけだよ」


「ワシらはお主を応援するし協力もする。いつでも助力を求めるがよい」


「それはありがたいな」


 なんだかただ配信を伸ばしたいだけなのにとんでもないことにをお願いされたような気がする。


「そういえばドーコはマジックアイテム作りの他に夢とかってあるのか?」


「うーんそうだねー。私も最強装備が作りたいかな。せっかく重戦士になったんだしもっと戦えるようにもなりたいかなぁ」


「ドーコは何で最強装備を作るか決めてるのか?」


「私はもちろんドワーフと1番相性の良いオリハルコンだよ!」


「嫌な予感がするんだがオリハルコンを取りに行くなんて言い出さないよな? オリハルコンって魔王側の獣人が管理してるんだよな?」


「よく気付いたね! どうせ配信伸ばすなら獣人も取り込めば良いじゃん!」


「そんな簡単に言うなよ! そもそもまだ魔族がどんな強さかも知らないのにそんな約束できないぞ!」


「マジックアイテムだってあんな一瞬で作っちゃちゃんだからドワルフなら出来るよ!」


「そんなこと言ったってほらドウェインも反対だよな!?」


「オリハルコンよろしく頼んだぞ」


 駄目だ八方塞がりだ。


「じゃあ俺たちの目標はこれからヒューマンの国で金を稼いで冒険者を雇って、エルフの里に向かってエマとの約束を果たした後、獣人の王国に向かいそこで魔族側じゃなくこちら側につかせるようにしてオリハルコンを市場に流れるようにするってことか?」


「そうなるね」


「俺のスローライフが遠のいていく……」


「でも配信者としてはより一層成長するよ!」


「だからってどうやって獣人を説得するんだよ」


「さー? でも魔王が現れてから変わっちゃったんだから、そこに何かあるんじゃない?」


「この世界には勇者がいるんだよな?」


「うんいるよ。1番人気の配信者でもあるけどね」


「そりゃ勇者ぐらい人気のある個性があったら1番になるよなぁ。確かに勇者に勝つにはそれぐらいしなきゃでもなぁ」


「そのまま魔王も倒しちゃおっか? そしたら確実に1番になれるよ!」


「俺はスローライフを満喫したいんだよ。折角こんな素晴らしい鍛冶技術があるんだしな」


「うーんだったらパパみたいに勇者パーティーに武器を作るとかかな?」


「次期長のお主だったら問題ない。それに腕もワシより上じゃしな」


「ん? ちょっと待て今話が飛躍しなかったか?」


「どこで?」


「ドウェイン! 勇者パーティーの武器を作ってるのか!?」


「まぁ鎧なんかは装飾が入ったものがいいなんて言いおったから作っておらんが、確かにワシが勇者のロングソードなんかを作っておるぞ。気に食わんガキだったが、どうしてもヒューマンの王が作ってくれというからな」


 確かにドワーフは認めた相手にしか作らないと言っていたがまさかドウェインが勇者パーティーの武器を作っていたなんてな。


「俺だったら絶対に勇者の剣を作ってることをアピールポイントに配信してるぞ……」


「ドワーフは配信というか他種族への関心が薄いからねぇ。仕方ないよ」


 もしドウェインが配信をしていたら間違いなくライバルになっていただろう。


「そういえばドーコは配信を見てたみたいだけどどんな感じだった?」


「殆どは冒険配信だね。それ以外は全然人気が無いね。あっでも勇者の防具を作ってる人は凄い人気だったよ」


 多分以前見つけた人だろう。ヒューマンの国に行ったらまず会わなければ行けない人だ。


「あー多分その人なら俺も知ってる。俺が越えなくちゃいけない壁だな」


「手っ取り早く越えるならやっぱりランクの高い冒険者装備を作る事かな?」


「そうなるか。だがヒューマンの国で俺たちは全力で鍛冶仕事してもいいのかドウェイン?」


「ワシらが認めた相手にしか売らないのは雑に扱われて魂の込めた一品を粗末にして欲しく無いからじゃ。別に掟がある訳でもないし好きにやれば良かろう」


「よかったよ。これで掟破りだなんてなったら俺は詰んでたぞ」


「追放にはもう慣れたし大丈夫じゃない?」


「大丈夫なもんか!!!」


 一同が笑い今日の晩御飯は楽しく終わった。さぁ明日はドワーフの村で最後の日、そして結婚式だ。

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