第13話 これからについて

 ふー。何やら凄いものができたのはわかったが、MPを持っていかれ過ぎるのが問題だな。MPを増やすトレーニングなんてのは無いんだろうか。


「ドーコ。とりあえず今日は家で早めに休もうか。流石に今日くらい早めに作業を終えても罰は当たらないだろ」


「そっそうだね。これだけ凄い魔術を使ったんだもん。引っ張ってきてごめんね」


 何やら反省しているらしい。俺もまさかこんなに疲れるとは思わなかったし、俺の自己管理不足なのだが。


「謝ることはないぞ。俺も全力を出したものがどんな威力か見たかったしな」


 そういえば今日のマイページ確認を忘れていた。


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名前 ドワルフ

レベル  20

視聴者数 1

フォロワー 3


メインジョブ 配信者

サブジョブ なし


スキル なし


ユニークスキル 【エルフの知恵】 【ドワーフの神】 【ヒューマンの良心】


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 レベルがかなり上がったな! やっぱり今回の宝石魔術は相当な技術を要するものらしい。それにしても視聴者数とフォロワーが全然増えないな。それに最近ドバンが見てない気がする。まぁドワーフには配信を見る文化がそんなに根付いていないらしいし仕方ないのかも知れない。


 【エルフの知恵】は相変わらずそのままだな。やっぱり【ドワーフの神】の進化条件と同じく、扱える種類が重要なんだろうか? 全属性と後は錬金術師とかそういったやつも含まれるのかな? だとしたら相当大変そうだな。


 確認も終わったし配信を切り、ドーコと一緒に家に帰ることにするか。




★   ★   ★




 そういえばずっと晩御飯はドーコに任せっきりだったな。俺としても手伝いたいのが毎回限界近くまで作業をするから出来てないな。


「すまんなドーコ。毎回晩御飯を任せてしまって」


「いいっていいって! それに1人でずっと食べてたからドワルフが来てくれて毎日宴会ができて嬉しいくらいだよ!」


 そうか。考えてみればドーコもドワーフの村ドヴァルグから追放されて、ずっと1人だったのだ。俺は幸いこの世界に来てから追放こそされたが、すぐにドーコと出会い寂しい思いをせずに暮らしてきた。


 そう思うとより一層ドーコの事が愛おしく感じた。MP切れでフラフラとした足取りだがゆっくりとドーコに近づき後ろからそっと抱きしめる。


「ちょちょっとどうしたのドワルフ? 危ないよ」


「ちょっと愛おしくなってしまってな。ドーコお前の夢は間違ってないし、それを叶えた。俺はドーコの追放されても研究を続けた事に敬意を表する」


「あれ……おかしいね……私今玉ねぎなんて切ってないのに、涙が止まらないよ」


 ――しばらくの間、ドーコは泣いた。


「でっでもまだ私のマジックアイテム作りは完成してないんだからね!」


「え? そうなのか? だってあんな凄い竜巻が出来たじゃないか」


「確かに風属性のマジックアイテムは出来たけど他の属性がまだまだだもん! ちゃんとドワルフとエルフの里に一緒に行ってもっと沢山の魔術を覚えてもらわなきゃね!」


「なんともまぁ長い計画だな。その前にヒューマンの国で冒険者を雇うために一仕事しなきゃならないことを忘れてないだろうな!」


「あーそうだった。うーんいち早くエルフの里に行きたいのに!」


「あっあといつまでくっついてるの? まぁ私は構わないんだけど料理が作れないよ」


「あー悪い悪い!余りにも心地よかったんでついな」


「もう……料理が終わった後ならまた抱きしめてもいいから」


 何度、赤面するのだろうか。料理が終わるのを待ってから、気まずいので話題を変える。意気地なしなんて言うなよ。なんせMP切れでフラフラだしな今日は無理だ。


「「かんぱーい」」


「もう食料の在庫が少ないようだが、もしかして俺が来たせいで食糧難に陥ったりしてないか?」


「確かに普段より減るのは早いけど問題ないよ。明後日にはヒューマンの商人が来るからね。私の装備はドワーフの村ドヴァルグの練習品と違って一級品だから結構な人気があるんだよ」


「そういえば、ドーコは師匠に認められて印を持ってるんだったよな。師匠って一体誰なんだ?」


「……パパ。でっでも贔屓とかじゃなくてちゃんとみんなにも認めてもらったんだからね! 髭が生え始める年齢より前から印をつける事が認められた神童って呼ばれてたんだから!」


 そんな神童でも髭がないってだけで追い出されるのかー。なんとも恐ろしい髭社会。装飾を学ぶのが以上に早かったのは単に【ドワーフの神】の力だけじゃなくドーコ自身の能力の高さがあるのかも知れないな。


「それでパパって誰なんだ?」


「まっまぁその話はいいじゃない! それよりドワルフにも印をつける許可を与えるよ。本当ならもっと前に言うべきだったんだけどあんまりにも色々ありすぎちゃったし、忘れちゃってたよ」


「そんな簡単に免許皆伝なんてしていいものなのか?」


「いいんじゃないかな? もし、いちゃもんをつけてくるドワーフがいてもドワルフの技術を見たら何も言えなくなるよ」


「そう言う事ならありがたくこれからは印をつけていくよ」


「そういや明後日にはヒューマンの商人が来るなんて随分と都合が良いもんだな。どうやって連絡したんだ?」


「ドワルフもよくやってるじゃない。配信だよ! 商人ギルドではよくサブジョブに配信を入れて連絡がしやすいようにしている人がいるんだ」


「あーそういう使い方もあるのか。やっぱり配信は最高だな。それにしても売れるような商品なんてあったか?」


「……だから明後日なんだよ」


 嫌な予感がする。


「もしかしてだが、明日の予定は朝から商人が来るまで鍛冶仕事だったりしないよな? 俺はMP切れでフラフラなんだぞ!」


「鍛冶仕事にMPは関係ないでしょ! ドワルフのことだしどうせ1日で回復するよ」


「マジックアイテム作りは良いのかよ!」


「うっ確かにそうだけど、それで餓死しちゃったら身も蓋もないでしょ!」


 頭脳労働と肉体労働が交互に来やがる。早く安定の日々をーーーー


「ほら! エール飲んで早く寝るよ!」


 よーしこうなったら、ちょっと意地悪をしてやろう。


「今日は一緒のベッドじゃなくていいのか?」


「バッバカ!! 部屋まで肩貸してあげないからね!」


「悪かったってだから待ってくれー」

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