第12話 作ったマジックアイテムは規格外だった

 ――流石に昨日は飲み過ぎたのか、体が重い。いや違う何かが纏わり付いている。


「ドドドドドーコ!?!?」


「ふぁーーなんなの? 騒々しいなぁ、私昨日飲み過ぎて疲れてるんだけど」


「そっそうじゃなくて同じベッドってことはもしかして!?」


 察したのかドーコの顔が赤くなる。


「ちっ違うよ! 昨日ドワルフにキスした後倒れちゃったでしょ! それで私頑張ってこのベッドまで運んだんだよ、それで私も酔っ払っててそのまま一緒に寝ちゃっただけ! ドワルフの想像してることなんてまだしてないから!!!」


「まだって事はその予定があるのか!?」


 そう言ってその事を想像してお互い顔を赤らめる。


「もっもう! とにかくそんなことはしてないから! さぁ今日も作業するよ。ぐっすり寝ちゃったせいでもうお昼だよ」


 初めての経験が酔った状態で覚えてないと言う最悪は避けられたしよかったのか? それとも酔った勢いで済ませた方が楽だったのか。そんなことを考えながらドーコと一緒に昼ご飯を作る。


 何気に初めて一緒に厨房に立つな。


「それにしても保存が効く塩漬けのものばかりだな。何か他に野菜とかないのか?」


「エールに合わないからねー」


 どこまでも基準がエールなのか……


 簡単に食事を済ませ昨日の実験の続きを始める。MPはエールが本当に効いたのかは知らないが回復した様に感じる。


「ドーコ、エマが来るかも知れないし配信つけるぞー」


「うん、私としても昨日の装飾について聞きたいしね。結局昨日は他の話で全然話せなかったし、私はもう少し装飾の練習するね!」


 装飾について前向きになったことは良いことだ。これでヒューマンの国に行った時にも、よりお金を稼げそうだ


 配信をつける。


〔エマ:遅かったじゃないの。昨日と同じ時間くらいに始まると思って待ってたのに!〕


 異世界初めての待機勢だ。嬉しくて少し泣きそう。


〔ドワルフ:あーすまんすまん。昨日は色々あってな〕


〔エマ:まぁどうせMPもまだ無いでしょうし、することも無さそうだしね〕


〔ドワルフ:いやMPなら多分回復したぞ、ほら〕


 そう言って、無色の宝石に魔術を込める。


〔エマ:嘘でしょ? あーわかったわ、MPポーションを飲んだのね。ドワーフの村にもあるなんて初めて知ったわ〕


〔ドワルフ:いやー飲んだものといえばエールくらいだな。流石に魔術を使えないドワーフの村にMPポーションは無さそうだぞ〕ドワーフの村ドヴァルグ


〔エマ:エールでMPが回復するなんてそんな馬鹿げた話あるわけないでしょ!! それにしてもそんな短時間であれほどのMPを回復するなんて……〕


 何やらまた考え込んでしまっている。昨日の装飾について聞きたがったが、仕方ないエマはとりあえず放っておいて、本命のエメラルドに魔術を込める。


 昨日の斬撃ではなくもっと風を意識してより強力に、より絶大に。そう考えながら魔術を封じ込めた時昨日とは比べ物にならない疲れがきた。


「大丈夫!? なんか凄い顔色が悪いけど」


 ドーコが駆け寄ってくる。余程俺の顔色が悪いんだろう。


「大丈夫じゃ無いかも知れない。なぁエマこれが力がドッと抜けて頭がガンガンするんだが、これがMP切れか?」


〔エマ:ほらやっぱりまだ全開してたわけじゃ無いのよ! いくら【エルフの知恵】持ちだからってそんなことがあっていいわけがないわ!〕


「で、これがMP切れってやつなのか?」


〔エマ:そうね。出来るだけ立っていないで座るか、横になっておきなさい。あとMPポーションもないことだし念のため2、3日は魔術を使うのを控えておくのよ〕


 そんなにも全開に時間がかかるのか。確かに今日の体調は万全だったはずなんだがなぁ。


「そうだ、ドーコあの事を聞いたらどうだ」


「あっそうだね! エマさんエマさん! これを見て!」


〔エマ:ふーん。凝った装飾がついてるわね? ドワーフにも美的センスってものを持った人がいたなんてね〕


「そうじゃなくて装飾をつけると能力が上がったりするの?」


〔エマ:いやそんなことは聞いたこともないけど、そもそも宝石魔術はそんなふうに大斧にはめ込んで使うものじゃないわよ、お嬢ちゃん〕


 言ってはいけない事を……


「ムカー! ドワルフ外に行くよ! ほらしっかり立って!」


「俺はMP切れてフラフラなんだが」


「ドワルフが来ないとこのエルフに見せられないでしょ!」


 引っ張らないでくれー




★   ★   ★




〔エマ:あーそう言うことね。ドワルフに魔術を通させて使うってことかしら? 確かに試したことはないけど、その方がイメージしやすくなって使いやすいかもね。でも筋力の少ないエルフじゃそんな大斧は使えないから残念ね〕


 そういえばエマにはこの大斧の効果を見せてなかったな。


「おいおい俺はMPが切れてるんだぞ。使うのはもちろんドーコだ」


「えっへん!」


〔エマ:何がしたいのかさっぱり分からないわ。まぁ気が済むまでしなさいな〕


「見よ!これぞ現代に蘇ったマジックアイテムの力だー!」


 ザザザシュッ


 あぁまた罪のない木が倒されていく。


〔エマ:どどっどういうこと? あなた髭が生えてないしあなたもエルフとのハーフなの!?〕


「髭は生えてないけど、純血のドワーフだよ!!」


〔エマ:だとしてもどうやって斬撃を飛ばしてるのよ。魔術を宝石に封じ込めて発動時に少ない魔力で最大の効果を得るのが宝石魔術なのよ〕


「まーそう言われてもだな出来たもんはできたんだよ、マジックアイテムってやつがな」


〔エマ:だとしてもありえないわ。その大きさの宝石だったらそこまでの風魔術を出すことは不可能よ〕


「そこでさっきの質問に戻るわけなんだ。これを作る前に装飾なしで試したんだよ。その時はここまでの威力は無かったんだ。そのあとに装飾を入れてみたら効果が倍増したんだ。そう言った事例を何か知らないか?」


〔エマ:そんな事例は聞いたことがないけど、もしかしたらその装飾がルーン文字の代わりになっていて効果が倍増したのかも……それにしたって〕


 またエマが考え込んでいる。エルフっていうのはよく考える生き物なんだなぁ。


「そうだドーコ俺が今日作ったこのエメラルドで試してみないか?」


「うん! それもそうだね!」


 そう言ってドーコは宝石を付け替える。無色の宝石であの効果だったんだ。エメラルドだったらどんな効果になるんだろうか。そう考えてるうちにドーコが大斧振り上げ切る構えに入っている。


「いやちょっと待てドーコ、もしかすると大変なことに」


 ズドゥルルルルー


 遅かった。振り下ろしたと同時に斬撃が円を描き竜巻となり辺り一面の木を切り倒してしまった。ドーコも想像外だったのか腰を抜かしている。


「今度から木で試すのはとりあえずやめようかドーコ」


 ブンブンと激しく頭を上下させるドーコ


〔エマ:これはもう伝説級のマジックアイテムね……まさかこんな所でお目にかかるとはね。私ちょっと衝撃で頭がクラクラするから今日は落ちるわね。〕


「あーありがとう。俺も今日は色々と疲れたから明日は配信ないかもな。来てくれてありがとう」


 全員満身創痍といった感じだな。今日は流石に宴会もないだろう。MPが回復するかも知れないから少しだけエールを飲んで寝るか。昼に起きたせいで一日短く感じたな。

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