第9話 伝説のマジックアイテム製作 その2

 うーんどうにも魔術を封じ込めるのに上手く行かないな……鍛冶仕事はあんなにも順調にいったからてっきりこっちも【エルフの知恵】で上手く行くと思ったんだが、何か隠された条件でもあるんだろうか?その時


〔ふーん、宝石魔術をしているのか。もしかしてエルフかしら? それにしても鍛冶場にいるエルフなんて見たことがないわ〕


 おっもしかして初見さんか?しかも口ぶりからしてエルフっぽい


〔ドワルフ:こんにちは! 私はドワーフとエルフの混血なんです。もしかしてエルフの方ですか? よければ宝石魔術に関してヒントを頂きたいんですが〕


〔確かに私はエルフよ。ドワーフとエルフの混血ねぇ。変な子。でもそれならもしかして……教えてあげてもいいけど、1つ約束をしてくれないかしら?〕


〔ドワルフ:どんな約束でしょうか? 私ができることでしたら〕


〔私の元、エルフの里に来て欲しいの。詳しいことはそこでまた話すわ〕


 エルフの里か。確かにミスリルの加工の為向かおうと思っていたから問題ない。


〔きっとドワーフの村ら辺にいるんでしょうけど、そこからエルフの里に来るには途中にあるヒューマンの国に行くといいわ。そこで冒険者でも雇ってエルフの里に来なさい〕


 親切だな、冒険者を雇えってことはエルフの里に行く道中は魔物が出たり危険ということだろうか?


〔ドワルフ:申し訳ないんですが、お金も少なく冒険者を雇うには一儲けする必要があるんですが、お時間は大丈夫でしょうか?〕


〔幸いエルフの寿命は長いのよ。そのくらいあっという間だわ。だから安心しなさい。でも絶対来るのよ、

フォローしておいたから暇つぶしにでも見ておくわ〕


 ふむふむどうやら時間の方は問題なさそうだ。


〔ドワルフ:フォローありがとうございます。自己紹介がまだでしたね! 私はドワルフ、メインジョブ配信者 サブジョブはなしです〕


〔やってることもジョブも全部めちゃくちゃね……私の名はエマ、メインジョブゴーレム使い サブジョブは土魔術師よ〕


 メインジョブゴーレム使いか。どんな感じなんだろう、さっぱり想像が付かない。言葉使いから聡明な印象を受けるな。


〔エマ:あーそうだったわ。宝石魔術だったわね。私も専門じゃないからそこまで詳しくはないけど留める方法くらいだったら教えられると思うわ。まずあなたの適正属性は何かしら?〕


〔ドワルフ:多分、風属性だと思います。でも一応エリクサー作れたんですが、何属性なんですかね?〕


〔エマ:え? 嘘でしょ? 見てないからなんとも言えないけど、エリクサーっていうのは全属性を扱える錬金術師にしか作れないものなのよ!? それをメインジョブ配信者のしかもドワーフとの混血が作っただなんて……〕


 どうやらとんでもないものを作っていた様だ。これも【エルフの知恵】様様というところか。


〔エマ:まぁきっと勘違いよ。ハイポーションとでも勘違いしたんでしょう。とっとりあえず、風属性の宝石魔術だけどどんなものを作る予定なのかしら?〕


 んーどんなものか。ドーコは大斧を作ってるし、それに合う様より切れる様なものを作ろうかな。それとも斬撃が飛ぶ様なものとか。そう考えた瞬間、初めて鍛冶仕事をした時の様にどうすれば良いかが頭の中に流れ込んでくる。頭に流れ込んでくる呪文をそのまま唱えながら手に持った無色の宝石の中に魔術を封じ込めていく。


〔エマ:ねぇ ねぇってばさっきからコメントをスルーするなんていい度胸してるわね。それでそんなものを作りたいの〕


〔ドワルフ:えーっとそれなんですけど、どうやら出来たみたいです〕


〔エマ:はい? 私まだ何も教えてないんだけど?〕


 ちょうど大斧ができたドーコがやってくる。


「どうやらこっちは出来たみたいだぞー。合わせてみる前に昼食食べようか」


「もっもう出来たの!? 早く試したいけど、せっかく作ってくれたんだし食べよっか」


「「いただきまーす」」


「それにしてもやっぱり【エルフの知恵】って凄いんだねー」


 あっ隠してたのに……


〔エマ:ちょっと待ちなさいよ! 【エルフの知恵】!? そんなの伝記でしか聞いたことないわよ? でもこの成長速度、本当に持っているのかも、でも……〕


 聞いたことがある展開だ。相手を驚かせない様に隠してたのに。しかし俺の持ってるユニークスキルは全部チート級のものなのか? でも最後の【ヒューマンの良心】だけはしょぼそうだ。


 とりあえずエマは置いておいてドーコの作った大斧に魔術を封じた宝石を埋め込む。俺が振ってうっかり魔術を込めてしまってはいけないのでドーコに大斧を返す。


「「ごちそうさま」」


 昼食を済ませたことだし次は実践だ。


「外に出て試しに振ってみてくれ」


「うん! わかったよ!」




★   ★   ★




 近くの森に来た途端にドーコが


「じゃあ早速」


「ちょっと待って! もうちょっと離れてからじゃないと!」


 ズバッ

 

「なんか今出たよ!?!? てっきり昨日のナイフみたいに切れ味が増すくらいだと思ったのに一振りで木を切り倒すなんて……」


「いやそれだけじゃない、奥の木も見てみろ」


 バターン


「斬撃……?」


 放心しているドーコ。まさか2本も木を切り倒すとはな。俺自身も驚いている。


「……やった、やったよーー!!! これ! これ! これだよ! 一流戦士でしかできない事が私でも!! 私がずっと作りたかったマジックアイテム! ありがとーーーードワルフ!」


「まぁ俺もお世話になったし、恩返しができて良かったよ。だがまだ俺は全力を出してないぜ!」


「どういうこと?」


「俺の推測だが宝石の色にはそれぞれ対応した属性があるんだ。そうだよなエマ」


 テンションが上がってついタメ口が出てしまった。


〔エマ:急にタメ口なのね。まぁいいけど、そうよ宝石魔術にはそれぞれ適した宝石と属性があるわ。無色の宝石は何にでも出来るけど器用貧乏でどれも一番の性能は出せないって言われてるのよ。きっとドワルフは風属性が得意だからエメラルドだともっと効果が出ると思うわ〕


「やはりそうか。じゃあ明日はエメラルドで試してみようか」


「えー! まだ夜は来てないよ! 今日中に作ろうよー」


「そうしたいのは山々なんだが、俺のMPが切れてしまったみたいでな」


 1人で何回も魔術を込めようとしたときに相当量のMPを消費したらしい。そもそも自分のMP量が見えないから感覚でしかないが。


「うーんそれなら仕方ないのかなー? 魔術に関してはさっぱりだからねー」


〔エマ:ほぼ最初から見てたけどあれだけの量の魔術、結構修行を積んでるみたいね。一人前のエルフと言っても問題なかったわ〕


〔ドワルフ:いや今日が初めてだが?〕


〔エマ:あーもうどれだけ規格外なのよ。でも気をつけなさい。MPが0になった時の苦しみっていうのは相当きついわよ〕


〔ドワルフ:ご忠告感謝する〕


〔エマ:私、全然力になれた実感が無いんだけど約束は守ってもらえるのかしら?〕


〔ドワルフ:いやそんなことはない。エマのヒントがなかったら辿り着けなかったかもしれない。それに多分【エルフの知恵】の発動にはエルフ族との関係がなければ発動しなかったと思う。〕


〔エマ:そんな発動条件があったなんてね。まぁ力になれた様だし、約束よろしく頼んだわね〕


そういえば今日はまだマイページをまだ見てなかった。


--------------------------------------------------


名前 ドワルフ

レベル  14

視聴者数 2

フォロワー 3


メインジョブ 配信者

サブジョブ なし


スキル なし


ユニークスキル 【エルフの知恵】 【ドワーフの神】 【ヒューマンの良心】


--------------------------------------------------


レベルが上がっているな。ちゃんとエルフの修行でも上がるらしい。それにしても、今日はドバンは忙しかったのかな。


〔ドワルフ:あぁ気長に俺の配信でも見て待っていてくれ。とりあえず今日の配信は終わるよ。フォローしてくれてありがとうな。じゃあまた〕


〔エマ:おつかれ〕


 配信をオフにする。というわけで明日からどうしようか?このままマジックアイテムを作りを続けることになるんだろうか?それにしても俺はまだ風属性しかまともに扱えないし、しっかりと学ぶためにもエルフの里へと向かいたいなー。


「ねぇねぇ! 今ドワルフって風属性しか使えないんだよね? じゃあ私と一緒にエルフの里に向かおうよ!」


「それは願ったり叶ったりだが、いいのか? ここを離れて? この鍛冶場を作るのに相当な労力がかかったんじゃないか?」


「よりいいものを作るために場所を変えるのは仕方ないよ。それにドワルフと一緒にいた方が1人で待ってるより楽しそうだしね!」


 俺がエルフの里に行きたがってたのはバレバレだったか。


「まぁその前に明日はエメラルドでマジックアイテムを作ってね! 冒険に役立つだろうし!」


 どうやらまだスローライフには程遠いらしい。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る