花と蝶々(仮称)
ため
第1話
ホテルの一室で、顔を拭いながら呼吸を整えようと、深く呼吸をする。袖には赤黒い血が絵の具の
ようにべっとりとついていた。拭いきれなかったものが乾燥してきたのか顔がパリパリとして鬱陶しかった。自分だけではなく、部屋中が鉄臭い気がした。生理になったときに下着を下ろして匂うあれとは比べ物にならなかった。ゴクリと唾を飲む。吸血鬼の気分だった。
女はベットの上で、既に肉の塊となった男に跨っていた。首に刺さっているナイフを動かすとコリコリと骨に当たる感覚がした。そっと抜いて、今度は心臓の位置に思い切り突き刺す。男は声を上げなかった。
ふう、と一息ついて天井を見上げる。ベットの上は鏡張りになっていて、心臓にナイフが刺さった男と、それに跨る赤黒い女が写っている。女は鏡の自分に向かって笑いかけた。
「幸せになれるね」
花と蝶々(仮称) ため @tame5
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