第41話 秘密の要塞
「まさかここにいるとは思わなかったよ」
「最適だろう、足は機械で、武器にもなる」
「残念ながらウソだな、本当だったら面白いけれど」
「多少は乗ってくれよ、全く、サムライは冗談のセンスだけは学べないようだな」
「日本人は外国語を話すだけで頭がいっぱいさ」
「私は半母国語だ、君には申し訳ない。日本語は途中で諦めたよ、完全に引退したら老後の楽しみにやるつもりだ」
「ボケ防止には最適か・・・な・・・」
先生は開の事件後すぐに海外へと飛んだ。ある場所へ、無理に近い願いを届け出た。
「まさか、本部が君の願いを受け入れるとは思わなかったよ」
先生と歩いているのは日本人ではない男性、年齢は先生よりも少し上の同じ仕事をする仲間だった。
レオナルド・ダ・ビンチ法の本部の建物は、様々な国際機関が集まった建物の中にあったが、ここは全く別の所にあり、建物の内部は常に一定の温度に保たれていているが、そう広くはない。建物全てがシェルターの役割も果たすので、コンクリート打ちっぱなしではないにせよ、生活感の全くない、分厚い壁がずっと続いている。
「とにかく良かった、君の部下の子が単純な骨折だった事を神に感謝したよ」
「開が無事だったのは君のおかげでもある。あの事故での細かな報告があったからこそだ・・・本当にありがとう」
そう言われた彼は、すこし自分の足下を見た。彼の義足は衣服に下にかくれ、また歩き方も自然なため、それとは全く気が付かない。
「あの、若者らしい叫びはワザとかな、自分の仕事がばれないようにするための」
「さすがの開でもそこまでは考えていないだろうさ、あの子らしくはない物の言い方だよ。でも本心だろう」
「だが、本当に優秀だ。飛行機で着いた日に違反者を見つけるなんて、さすが君の弟子だよ」
「弟子ね・・・もうライバルかな」
「ライバル? 」
その言葉のあと多少の沈黙が訪れたが、先生は聞かなければならないことを確認した。
「彼は目覚めてどれくらいたつんですか? 」
「一日と何時間らしいよ・・・だが・・・まあ・・・とんでもない問題児らしい」
「生まれたてといえばそうだから」
「被検体になって、多くの子供達を救ったが・・・そんなことをした人間とは思えないというのが、ほとんどの人間の意見らしい。もともと彼を被検体にすること自体「危険」と言う意見がかなりあったらしいから」
「それは、まあ・・・男の嫉妬ってやつかな、とも思うが。で、外部の情報はどれくらい彼の中にあるんだ? 」
「外部の通信とはシャットアウトだそうだ、まあ・・・とにかく、君が一番長く話すことになる、心してかかってくれ、幸運を祈るよ」
「そう、危険ではないだろうけれど」
「それがどうだか、ここだよ、じゃあ後で」
「ありがとう、じゃあ」
先生はドアノブに手を伸ばし、重たい扉を開けた。
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