第38話 行動、行動、行動


 証拠隠滅のためにアンドロイドが自爆したのは、今まで世界中で2例あった。その時に先生の同僚が瀕死の重傷となったため、このことに対する事細かな情報、つまりそうする前に、「アンドロイドは基本的にどういう動き、音がする、時間は何秒かかるか」ということを僕たちに詳しすぎるほど教えてくれた。

「十年以上前の出来事だけれど、絶対に忘れないように」

僕たちがアンドロイドに心を救われたと思っていると同時に、先生には体を守ってもらっていると感じている。そのことがあるから、僕たちはこの仕事を嫌になること無く続けていけるのだ。


開さんは特に例の一件以来、先生が感心するほどに仕事をスマートにこなすようになっていた。その冷静な開さんが、正体を明かすように叫んだのだ。そう、開さん以外には考えられない。別の人の可能性は、限りなくゼロに近いのだ。


僕は完全に手が止まってしまった。パソコンに映したいくつかの画面の中の、建物の壊れた所だけをぼーっと見ていた。


すすり泣きが聞こえる、さっき初めて聞いたフーさんの声だ。


指はもう動くことを止めて、自分の体なのに、自由に動かすことも出来ないように感じた。皆もそうなのだろう、キーボードを叩く音がしない。


 でも、その中で大きな声がした。


「開は用心深い、ちょっと馬鹿かと思えるみたいに。建物で追い詰めようと思ったとき、その構造も頭に入れるって言っていた。喫煙所がどこにあるとか言うことも。

そこまでしなくてもって俺言ったことがある。でもその時に開が言ったんだ。

「先生が言ったろう? 「爆発したらどういう動きをするかも考えておけ」って。だから、どの部分が安全かって考えておきたいんだ」って・・・あいつ・・・・・本当にすごいよ・・・・・

なあ、だから見つけよう! こんな時でも映像を撮っている人間がいると思うんだ! いや、こんな時こそ必要なんだ! 探そう!!! 」

ブンさんだ。

「そうだ! そうだよ! 開さんを信じよう!! 捜そう!!! 」

「うん! 」「よし!! 」

 

僕ももう一度、指を動かし始め、一般客がネット上にあげている映像を片っ端から見始めた。


「急ごう、もたもたしていると、消される可能性がある」

道徳上そうなる可能性が高かったからだ。

この事件での重傷者の数が、どんどんと増えて行く中、僕たちは休む事無く指を動かし続けた。でも途中で一号か二号かのどちらかが


「みんな、ヘッドホンをつけて、音が混じってしまってわからない!! 」


珍しく上からモノを言いながら、手荒くヘッドホンを配り始めた。


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