第37話 秘密基地


 黒板がメインスクリーンに変わることはそう不思議では無かった。学校の様に白いスクリーンをシャッターのように下ろすのだろうと思っていた。

しかし、モンさんが黒板前の教卓の内側のどこかを押すと、黒板の横から障子のような感じでスッと黒板よりも黒い薄い板が左右から現れ、中央で止まった。


「一号、前に教えたこと覚えている? 君のパソコンを主体にして写す、とにかく現状のニュース映像を、海外のでもいいから」モンさんは

落ち着いて言った。

「はい、やってみます」

「二号は皆のパソコンをここに映せるようにして」

「はい、わかりました。みんな自分のものを立ち上げて、ネットにつないで」


 でも僕もママ子もフーさんすぐには動けなかった。確かに黒板の上下に小さなレールがある事気が付いていたけれど、そう、そんなことよりも、とにかく、不安と恐怖が完全に体を支配し、されてピクリともしなかった。ほんの少し顔を動かし、ママ子を見たけれど、彼女はブルブルと幼い小動物のように怯えきっていた。


「ママ子ちゃん、心配なのは皆一緒だ。とにかく詳しい情報を探ろう、さあ、緑も、とにかく一つでも多くの情報を得よう。わからなかったら、翻訳システムがあるから」


「はい」

そう答えて、急いでパソコンからニュース映像を拾ったが、建物の二階か三階部分の狭い一部分が完全に崩れ落ちていた。でも建物自体が巨大なため、他の部分は全く無事で、それが一層僕たちの不安をあおった。


「く!! 」

と苦しそうな声をあげたのは、翻訳システムを見事に使いこなしているブンさんだった。

そして程なく、モンさんも小さな声をあげた。僕はちょっと二人の画面をのぞき込むと、若い女の人、幼い子供を持ったお母さんだろうか、そんな人が興奮気味に何かを言っている。僕もその映像を見付け出し、同時通訳を入れてみた。

もちろん彼女は日本語では言っていないのに、僕にはその時に確かに聞こえたような気がした。


「男の子が! かしこそうな東洋人の男の子が、急に叫んだの!! 「あのアンドロイドは音がおかしい、危険だからこの場所からすぐに離れろ! 」って・・・ちょっとたどたどしい英語だったけど、すごく真面目な感じだったから、私たち家族はすぐにその場を離れたけれど、半分くらいの人は笑って聞かなかった・・・それでも必死にその子は・・・・」


メインスクリーンに誰もそれを映そうとはしなかった。


「開さん・・・・」


消え入るようなママ子の声が聞こえた。


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