第34話 法改正
「塾宛に郵便が届いているんだけれど、どうしよう」
「へえ、珍しいね」
塾には中学生の僕たちしかいなかった。
「高校生達が来るまで待ってみようか」
「そうだね」と二人にはちょっと広めの教室でママ子と話をしていた。
「もうすぐ仕事再開だろうけれど、何だかちょっと難しくなりそうね」
「そうだね、以前みたいなバレバレは無くなっていくだろう。でもどうかな、違反者の数って、ママ子の感ではどう? 」
「ねえ、緑まで止めて・・・あんまり、感が良い、感が良いって言われると、何だか逆に鈍ったり、有頂天になって鼻がポッキリ折られそうな気がするの」
お互い同学年だから、正直に言いやすいのだろう。確かにその点での話しやすさはあるので、僕はママ子とお互いの結束、というか意識を深めるためにこう言った。
「じゃあ、増えるか、増えないか、現時点でどう思っているかせーので言ってみる? 」
「それ、面白いね、じゃあ緑、かけ声お願い」
「オッケー、じゃあ、せーの」
『増える!! 』
ママ子の目は今まで見たことの無いような自信と、覚悟を持った強い眼差しだった。
「一緒だったね、その増え具合だけど、ママ子」
「急増すると思う・・・・」
その言葉と同時に逆に暗い眼差しになった。
「ねえ、緑・・・何だか・・・なんだろう・・・あ・・・」
ママ子が届いた郵便を見つめていると、高校生達が無言でなだれ込むように教室に入ってきた。
「届いていた、ああ、コレだ」
モンさんが急いで封を開けながら
「先生から連絡が来て、この書類を皆で読んで理解して欲しいって、でも悪いけど、僕が先に読ませてもらうよ」
「どうぞどうぞ」
ブンさんが少し冗談ぽく言ったが、数枚の書類を見たモンさんの表情が、みるみる真剣に、緊張感を帯びてくるのを、他の六人はただ待っていた。
待つことしか出来なかった。
そして数分後、顔を上げたモンさんは、責任というものを背負い、こう言った。
「レオナルド・ダ・ヴィンチ法に、大きな改正が加えられる。
記憶を移し替えることだけは合法化されることになった」
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