第32話 大昔の学校


村塾入って僕が、先輩全てが経験している事は


「温故知新」だ。


というか過去に逆戻りしたといった方が良いのかもしれない。僕らがお互い話せるのは塾とその行き帰りだけ、つまり昔々の学校と一緒だ。

何故なら「僕たち同士での通信は厳禁」となっている。違反はかなり厳しく、今までの報酬の半分が罰金として持って行かれる。

僕ももちろん個人用の時計を持っているけれど、そこに村塾メンバーの連絡先は入っていない。理由は簡単、「盗聴、もしくはたまたま聞かれること」に対する完全防御策だ。でもみんなお互いの家は知っていて、何かあったときは、駆けつけることが出来るようにしている。

そして今回のニュースで、僕たちはお互い連絡が出来なくて「良かった」と思った。もし出来たら、長電話間違いなしだったろう。だから、僕は次の日出来るだけ急いで塾に行った。



「また、緑がビリ! 」

「え! 親に怪しまれない程度の早い電車で来たのに」

「それがお前の考えすぎているところ、俺なんて朝六時過ぎ! 」

「誰もいないでしょ、ブンさん・・・・」

「う・・・・そう、何のために来たのか・・・」

「とにかくここで十分に話しておかないと外でしゃべってしまうよ」

「適度なら良いんじゃない? 」

「その適度がヒートアップしたら絶対に危険」

「ハハハハハ」


もちろんママ子もいたから、皆はちょっと気を遣うように


「ママ子ちゃん的にはどう? 奥さんの通報ってありだと思う? 」

「え! その質問なの? 勘弁して、結婚後何十年のカップルのことは想像しがたいんだけれど」

「ハハハ、そうだよね。でもまあ・・・コレで多少は違反者が減るかな? それとも・・・」

トラベラーズ一号のこの言葉が皆の最終結論であろうと思う。

「この前、緑の担当のアンドロイドはひどいと思ったけれど、まだ何倍もましだよな、実際のアンドロイドになれているんだから」

二号の意見も全員一致だ。


「とにかく簡単な詐欺だよ。言葉だけで信じさせる、一番初歩的で単純で悪質なヤツだ」

「でも、その人選って・・・すごいわよね」

「そう、下調べがすごく緻密だったって話だろう? そうだ! ここで情報を見ようか、色々」

「うーん、それは止めた方が良いかもしれないよ。どうして村塾の中高生は「授業中にネットを見ているのか、しかもアンドロイドのこの事件ばかり」になるよ」

モンさんがそう言った後 皆が一斉に腕にとても小さな振動を感じた。着信だ


「先生か!」


文字通信だった。


「今からそれぞれに勉強の課題を送るので、しばらくは本当に塾生になって欲しい。全国的に素人が面白がって、アンドロイドの首実検をやっている様なので、巻き込まれないように用心しよう。

この機会を利用して必ず勉強するように。

また連絡する、それぞれがんばってくれ」


しばらく無言だったけれど、


「ここで勉強するって久しぶり!! 」


何だかちょっと楽しくなった。



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