第28話 僕らが動く理由
「なるほど、もう先生の情報が完全に相手側に漏れているということなんですね」
「そういうこと、だから、先生は塾には絶対に来ないんだ。ここの塾は
「リモート」で教えていることになっている。親御さんにもそう伝えて。ああ、パンフレットと入会申込書はこの封筒の中にあるからね」
「開、お前本当に何でもできすぎるよな、悪いけど、いじめていた人間の気持ちも多少はわかる。男の嫉妬って怖い」
「それって女性に対してじゃないの? 」
「そうだったっけ」「ハハハハハ」
笑い声が部屋に響いた。このときも、そういえば男会議だった。
「でもちょっと反省はしているんだよ、中学の時は上から目線過ぎたって。高校に入った今は落ち着いているけれど」
「緑か・・・格好いい名前だから呼んでいて楽しいね。中学校のクラスではもう大丈夫? 」
トラベラーズの二人も心配そうに聞いてくれた。
「ええ、まあ夏休み明けはまた少し怖いけれど」
「うん、それは気をつけた方が良いよ。実はね、僕たち二人を会わせてくれたのも彼だったんだ。「あの中学に君によく似た子がいるけれど、従兄弟かい? 」って具合だったんだ」
「そうなんですか、面白いですね」
とにかくここにいる全員にとって、あのアンドロイドが恩人であることが、絶対的な結束を促していた。
「仕事は君がやった事と同じだよ。でも基本的にはアンドロイドに直接話しかけない様にする。そうでなければどこかに「記録されてしまう可能性がある」からね。
先生から情報をもらって、僕たちがそれを確認、つまり「人間である証拠」を見つけることだ。それから先は大人の仕事になる。とにかく僕たちのことを知っているのも日本で数人しかいない、そして本当に「僕らだけ」なんだ。だから全国的に動く。高校生になったら、本格的に調査旅行をやってもらうよ」
「わかりました」
「あ、それと、先生の電話番号は消去しておいて。別の、君用の腕時計が来る」
「僕用なんですね」
「そう、だから僕の時計を君がはめたら作動しないんだ。電源すら入らないようになっている。発見連絡は小さな声で、その声も電話が吸収するようになっているらしいんだ」
「すごいですね・・・」
「確か平清盛が「平家の悪口を言っている者」を見つけるために子供を使ったってあるだろう? でもコレはそれ以上だよ、法律を守ることだから」
「正義といえば正義、
完全じゃないにしても」
そう言ったのはフーさんだったけれど、その時の顔はまるで僕より十歳以上年上に思えた。
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