第27話 先輩、後輩
「え! 詳しいこと何も聞いてないの? 」「先生丸投げ?? 」「ハハハ、開がこの前やらかしたから罰だぜ、きっと」「まあ・・・君たちが導け、的なのかな」
「それは責任重大」
そう言いながら、塾の中でお菓子とジュースで盛り上がっていた。
僕はとにかく、昨日あったこと、そしてその前のアンドロイドに会った話をした。
「でも、そうか・・・戦争といじめは似ているか・・・彼が言いそうだね」
「本当だ、進化していないか? 」
「それは失礼だろう」
皆あのアンドロイドを知っている様だった。
「緑君、彼が誰かわかるかい? 」
「誰、というか・・・元々が人間だったのはわかります。だとすれば・・・その・・・要はレオナルド・ダ・ヴィンチぐらいにすごい人ということですよね」
「半分正解」
そう開さんは言った。
危険な仕事をしたので、しばらくは塾で勉強という「謹慎処分」を食らっていたのだった。だから詳しい説明係も彼だった。
「正確には彼は「レオナルド・ダ・ヴィンチ法の被検体」なんだよ」
「でも、どう見ても・・・話をしていても・・・とても立派な人だとわかりました。
それでも違うんですか? 」
「この点のいきさつは僕たちもざっくりとしか教えられていない。だって先生だって実は本物に会ったことはないんだ。管轄が完全に違っていて、情報漏洩を防ぐためにも彼の事を知っているのは、世界でも数人なんだそうだ。
それに・・・実験体になってくれと頼みこまれたから、数年だけそうしているらしいよ」
「そう、なんですか・・・じゃあもう一度会うことは出来ないのかな」
「僕たち全員手紙を書いたよ、ただ返事は来ないけれど。マミちゃんなんてすごくたくさん書いたんだろう? 」
「え? 女の子もいるんですか? 」
「ああ、今日は急にお休み、まあ、今日のこのジューズのコップとかお菓子とか用意してくれていたんだけれど、その時からちょっときつそうだった。君に会うのを楽しみにしてたんだけどね、中一だから同級生だろう? 」
「女の子が、このことをやるんですか? 」
「ああ・・・・」
その時だけクラスの雰囲気ががらりと変わった。
「どうしたんですか? すごく可愛い・・・とか・・・」
「ハハハ、あ!笑っちゃ失礼だな、まあ・・・普通のいい子だよ。気も利くし優しい。だからいじめられたんじゃないかとも思うんだ」
「え! どうしてそうだといじめられるんですか? 」
「これは一部の研究者が言っていることなんだけれど、要はマミちゃんは
将来的に「メスとして優秀」ということなんだよ。子育てとかも上手にやるだろうと思う。つまりそういう人間をいじめる者は、その能力が元々乏しいから、優秀なメスを「排除しよう」と考えるらしいんだ。
だとしたら・・・まあ・・・動物的本能なのかなと思うけれど」
「でも小学生だよ、そこまで思うかな? 」
「生き物としての深層心理?」
「いやいや、愚かだよ。人間社会は動物と違って「密集」した社会なんだから。人をいじめる人間をよく思う人はいないって」
「そうそう、でも・・・まあ、分かっていても、俺たちもうまく脱出できなかったよな、本当に彼に救われたよ」
この言葉でも教室はシンとなった。
「でもさ、凄いんだぜ、緑君、男と女ってこれほど違うかと思うよ、ママ子ちゃん、まあそう俺は呼んでるけど、勘がめちゃめちゃ鋭いんだ! すごいよな」
「本当、習いたいぐらい」
がやがやと楽しい感じになったけれど、それをちょっと制するように
開さんが改めて言った。
「で、緑君、どうだい? 僕らと一緒に「偽アンドロイド」を発見しないか? 報酬はもらえる事になっている。
でも・・・もちろん誰にも言えないよ、家族にも友達にも。
どうする? 」
しばらくの沈黙の後、僕は答えた。
「お願いします、僕も手伝わせてください。やってみたいんです。
それに、僕は一番年下ですから緑でいいです。
みなさん、これからよろしくお願いします」
明るい気持ちで頭を下げたのは、本当に久しぶりだった。
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