第22話 似ているもの似ていないもの
「そうではないと思われますか? 」
アンドロイドは僕に尋ねた。
それは違うという顔を僕がしていたからだろう。
武器を使い多くの人の命を奪うことと、学校のクラスという小さな世界の出来事を一緒になどできないだろうと思った。
もしかしたらこのアンドロイドには別の考えがあるのかと、何も言えずにいると
「戦争は傷ついたものが目に見える、しかし、あなたの場合はそうではない、装って笑ったりもするでしょうから」
僕の今の苦しみなんて、戦争に比べれば大したことは無いと言われるのかと思っていた。家が壊れる訳でも、小さな子が犠牲になるわけでもない、しかも無差別に。
「ありがとう・・・ございます・・・・」
今もどこかで銃撃戦があり、爆弾が爆発して人が逃げ惑う。その光景を目に浮かべながら、アンドロイドの横で僕は泣き始めてしまった。
「辛かったでしょう、あなたはまだ幼い、でも今から大人になり始める、きっと急激に。いじめと戦争はなかなか抜け出せなくなるのも似ています・・・私は・・・アンドロイドだから・・・こう言うのでしょうか」
「いえ・・・そうかもしれません。一度こわれた関係を元に戻すのは・・・きっと難しいのです、僕もその努力をしたかと言われたら・・・」
「それは年をとっても、大人になった人間でも難しい事です。ましてやあなたの人生もこれからなのです、色々と不安もあるでしょう。
でもそれを持ちながらでも、あなたの正しいと思うことをやってください。私はそれがきっと、良い人間の社会を作ると思っています」
「ありがとうございます、あの・・・お名前は・・・」
「私は試作品なので・・・番号も告知してはいけないことになっています。でももし状況が悪化したならば、やはり大人にお話しすることが良いですよ。
いじめている人の心を変えるというのは難しい事です。それには専門の人間が必要で、あなたの年齢では行えないでしょう。
あなたの心もすぐには晴れないでしょう、でもどうか・・・生きてください。
あなたのような人は生きなければ、この世の中を良くするためにも」
「あ・・・ありがとうございます、でも僕はこれからそんなに立派な人間になれるかどうかわかりませんが・・・」
「では、人をいじめますか? 」
「いえ、それはしません」
「素晴らしいです、あなたの年で。
ああ、私も行かなければいけません。
それでは。
この傘はあなたに差し上げます」
アンドロイドは、雨の中、少しスピードを上げて歩いて行った。
「きれいな歩き方、最新式かな・・・・」
感謝をしながら、そう思った自分がとてもおかしかった。
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