第21話 同じ感情
「横に座ってもよろしいですか? 」
「ええ・・・どうぞ・・・」
アンドロイドは持っていた傘を、僕の方に半分以上ずらした。
「濡れるのは、アンドロイドのあなたには良くないでしょう? 」
「ありがとう、優しいですね。でも私は雨にも強く作られています。むしろ開発者のためには実験をした方が良いのですよ」
まるで微笑んでいるようだった。そして
「あなたの傘は? 」
とてもやさしい声だった。アンドロイドなのにと思ったけれど、僕はポツポツと今まであったことを彼に話し始めた。
「心理カウンセリングロボット」
実はそれは十数年前まで存在していた。しかしながら、その存在に人間が「依存」してしまうことが世界的に多発してしまい、結果消滅させたものだった。僕もそのことは知っていたけれど、ロボット、アンドロイドの世界は目まぐるしく変化するので、それこそ「実験的な復活」なのかもしれないと話しながら思った。
アンドロイドはじっと僕の話に耳を傾けて、穏やかな雰囲気で聞いてくれた。僕はこの事を相談できた「初めての人」に、できるだけ感情的にはならないようにと思った。
教室での孤独感、「僕と話すこと禁止」を受け入れたクラスメート。でも僕が反対の立場であったら、やっぱり僕もそうしてしまうかもしれないということまで正直に告白した。
僕がそこでいったん話をやめると、アンドロイドは僕の方を見た。その眼差しに不思議な感じはしたものの、きっと僕の体温や脈拍、血液の流れなどを分析しているのだろうと思った。
病院の検査ロボットに近く、それにほんの少し心理的なものを加えたものだろうと想像していた。私立の学校では警備用のアンドロイドがこの役目に近いものを担っているという。
でも、このアンドロイドから聞かれた言葉は、僕の想像以上、励ましてくれるとか、慰めてくれるとかそんな次元ではなかった。
「全く意味のないことです、人をいじめることも戦争も。
二つはよく似ている、罪のない人を死に至らしめるという点で」
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