第19話 公園で

 

 日曜日のお昼の公園は、面白いほどに天候に左右される。晴れれば家族でピクニック、仲間と遊ぶ若い人達。明るい声と、時々聞こえるどこ演技じみた泣き声がいつも響いている。

でも今日は天気予報通りにポツポツと雨が降り始めた。

会議が終わった僕は、まだ公園の入り口付近だったから、人々が

「ああ、火山灰で服が汚れちゃう」

と急いで家路や雨をしのぐ場所に向かう人とすれ違った。何人かは傘を差している僕をちょっとだけ不思議そうに見つめたが、その目にほんの少しの不思議さと優しさのようなものもあったので、微笑んで大きな公園の中に入って行った。


「やっぱりここは大丈夫」


と僕は大きな木の側のベンチに一人座った。傘さえ差していれば横殴りの雨でない限り、屋根の代わりをこの大木が果たしてくれる、そのこと中学校に入学してすぐにわかっていた。

腰を下ろし、誰もいなくなった公園を眺めた。でもここで一年以上前に感じた強烈な孤独感も、仲間といる人たちに対する羨望と嫉妬とがぶつかり合ったような感情もなく、不思議なくらい穏やかだった。塾で聞いた重たい話も、本当に「皆で分け合い軽くなる事」が実感できた。


「友情、連帯、信頼か・・・・あの日までは全否定だった・・・中一としてはあり得ないよな」


あの時の感情がよみがえった。

そんなものがあるとしたら、それは幻影か別の世界のことで、今の自分には到底その「楽園のような感情」を持てない。そして起きている時間の半分を過ごす中学校のクラスでは、もしかしたら僕以外にとってそこは楽園で、たった一人の罪人が僕であるような気さえしていた。


「あの日は、もっとひどい雨だったね、ねえ、覚えているかい? 」


冗談のように木に向かって話しかけたけれど、あの頃はこんなことも出来はしなかった。

今がそうでないとは言え、思い出すだけでも辛い、僕にとっては急に地獄に落とされたような出来事だった。


そしてその地獄から救ってくれた僕のヒーローは、世界でその当時はたった一人だけの

「永遠の命のための被験者」だった。




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