第18話 新しい結束


「ごめん、自分達だけじゃ決めることが出来なくて」


「いやいや、話してくれて良かったよ・・・久々のいい話だよ・・・」

「ほんと」「そうそう」

ブンさんたちはそれぞれそう言った。


「ごめんね、緑」

「いえ、謝ることじゃないです。僕だって判断出来ないことですから。

でも、そんな人がいるんですね・・・やっぱり・・・似てました? 」


「似てたなんてものじゃないよ、最初にラウンジに入ったときから・・・

ああ、何だか懐かしいって思ったんだ」

「違反者とは思わなかったんですか? 」

「まずは最初どう見ても怪しいと思ったよ。夜中に出歩くのはおかしいだろう?  年配者は急な病状の変化とかもあるんだから。でもすぐに・・・不思議と消えた、話しているうちに、本人でないのに感謝したかったよ」


「そうだな・・・もう・・・出来ないもんな」


部屋の空気は一つになった。でもその中で


「でもさ、トラベラーズが俺たちをそんな風に頼ってくれているのがすごくうれしい! 」

「そうだね、ホープの開がいなくなったから、ちょっと不安だったけど、何だか新しいチームワークが出来た気がする」

「これからはさ、悩んだら相談しよう、俺たちは基本「一蓮托生なんだから」

「結構難しい言葉使うじゃないですか、先輩」

「お前後輩なのに先輩をいじってるだろう? 」

「ハハハハハ」

「そう言ってくれると僕たちも助かるよ、これから全国だよ、がんばろう! 」

「おう!! 」

ママ子がいないので、男だけでかなりの盛り上がりを見せた。でも僕は同級生なので、やっぱり彼女のことが気になっていた。


「緑、ママ子ちゃんにはさ、オブザーバー的に情報を見てもらうつもりなんだ、もちろん日帰りはお前とペア」


「え? 」「うれしいくせに」「違いますよ!! 」「顔赤いって」

僕の方が今度はからかわれていたけれど、トラベラーズから


「このこと、ママ子ちゃんには話す? 」

という言葉が出ると、一瞬で部屋は静かになった。


「そうだな・・・だまっておいた方が良いかもしれない」

「どうしてですか? 」

「泣かれてみろ、面倒じゃないか。それ見て俺たちが「可愛い」とか思ったら・・・仕事に差し支える」

「ブンさん・・・考えてる! 」

「違う、彼女に泣かれて困ったことがあるからだよな」

「こいつ!! 」

「ハハハハハハ」


もちろんこの部屋にも監視カメラがある。先生は知ろうと思えば知ることも出来るのだ。

それを承知で僕たちは話をした。

時間稼ぎと、

今回ばかりは、裁きを天に任せるために。





  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る