第14話 ターゲットとなるもの
「年々、大人が馬鹿になってないか? 」
「今の言い方、ブンにそっくり、珍しいね、ぶっきらぼうで」一号が二号に言った。
「馬鹿馬鹿しい・・・・やりがいのない仕事」
「簡単過ぎるね」
二人は昨日の夜話したように、朝早く町に出た。温泉の湯気と朝靄が更に視界を狭めてはいたけれど、それでも、道の横のベンチに座り、たった一人で歩くアンドロイドを、見て見ぬふりをしていた。そしてそのほとんどが「偽物である」と思った。
「ああ、やっと本物登場」
そのアンドロイドも一人だった。しかし歩みはとてもゆっくりで、止まっては何かを確認していた。年配者が歩いたり、車椅子の走行に危険と思われる場所には、近づいて内部カメラで写真を撮っているようだった。要は下見に行くことをプログラムされている。このあと、一緒に観光するためだ。
つまり、ただ黙々と歩く介助用アンドロイドなんて、おかしい、つまり「人間」ということだ。
「こうしなきゃいけないのに・・・・何て馬鹿なんだろう、手本が横にあるのに、「しまった! 」って思わないのかな? 」
「年を取ると、考えることも出来なくなるって言うじゃない、人の振り見て将来のこと色々学ぼうよ、大分先だけど」
「はあ・・・違反者のデーターが多すぎて、時計がパンクしそう」
「大丈夫、もしかして知らなかったの? 」「何? 」「僕たちのだけ、データー皆の倍だよ」「わお! 極秘事項? 」「まあね」
早朝の観光地の監視カメラなんて、誰も確認することなどしないことを、二人はよくわかっていた。
日が高く昇ってから、二人は先生へ連絡した。
「ありがとう、私が起きるまで、気を遣ってくれたんだね、でもすぐで良いよ。頭脳部分を入れ替えられたら逮捕できなくなるから」
「休みがないですね、先生」
「仕方が無いさ、こういう仕事だ。だが君達は終わり、逆に普通に楽しんでくれ、怪しまれないように、高校生らしく」
「わかりました」
二人ともそれは素直に受け取ろうと思った。
それからは一般の観光客にまぎれる事にちょっと努力をした。地元の食べ物、伝統ある建物、品物。それらは途切れることなく続いていることに、二人は小さな感動と、「永遠に近いもの」を旅ごとに見つけることが出来た。
「皆と旅行するのは良いと思うんだ、東京にずっといると、違反者のことばかり考えてしまう。まあ仕事もしなきゃいけないけど、終わったら、気分転換もすぐに出来るから」
「そうだね、でも二人組の方が良いかな? 」
「色々なパターンがあっても良いんじゃない? ああ、結局塾のこと話してる」
「まあ、いいさ、本当に気の合う仲間だから」
「開さんと喧嘩したなんて、信じられないけど」
「詳しいこと話さないんだよな、コッソリ聞こう!! 」「ハハハ」
そうして、その日の夜、慰労と感謝の言葉が先生から送られてきた。次の日も二人は観光をしたが、その雑踏の中で
「昨日の夜、何だったのかしらね、警察官、刑事さんなのかしら。フロントは「お客さんが物を盗まれたと騒いで警察を呼んだんです、でも見つかりました、お騒がせして申し訳ありません」って言っていたわよね」
チェックアウトを済ませてからの事だったので、詳しいことは「神童」で話そうと決めた。
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