第13話 初日の笑い


「こんなに怪しい人間ばかりなのかな」

トラベラーズは少々ぼやいていた。


連休の温泉地とはいえ、介助用のアンドロイドが「多すぎる」ほどいる。


そして若い女性の二人組も、とても多い。中には彼らに色目を使う様な人たちもいる。しかしながらトラベラーズの方が何倍も旅行経験豊かなので、こういう「若い男の子をおもちゃにする」様な女性には近寄ることは決してしない、精神、金銭、将来と、色々な面で「危ないから」だ。


「温泉地の硫黄等にも平気です、って触れ込みのヤツが多いみたいだけれど・・・」そこで二人の目は光った。彼らの方が緑より先輩なのだから、そのアンドロイドたちが「廉価版の偽物」であることは簡単に見分けることが出来るのだ。それは彼の趣味である鉄道によるところも大きい。最新の素材、塗装の仕方など、知識があるからだ。



「ああ・・・・疲れた・・・・・」


高校生二人は、どちらかというと普通の日本間の部屋に泊まることにしていた。準A級の資格であれば、もっと豪勢な所も可能なのだが、逆に「妙な目」で見られてしまう事まで、二人にはわかっていた。

そうして、先生から書面通信が入ってきた。


「君達の連絡をしてくれた物の半数が怪しい。すごい確率だよ。これから彼らの詳しい資料、宿泊先などを送る。ゆっくり出来なくて申し訳ない」


二人でため息をついたが、もう夜も遅いので、ゆっくりと温泉につかることにした。しかし、このホテルにも容疑者がいるので、半分は仕事のようだった。


そして風呂上がり

「先生からの通信! ほら、見て! アンドロイドはいないけれど僕らが一番怪しいと思っていた、外国人と日本人の二人組がいたろう? 」

「ああ、あのこそこそした感じの? 」

「あの二人、ほら!! 」

「ミシュランの調査員??? 人騒がせだなあ!!! ハハハハハ」


部屋の監視カメラが完全に切られた状態の中、二人は楽しく笑い合った。

この状態を得ることができるのは、実は準A級の特権だった。




 カメラの劇的な進化は止まらなかった。小型化軽量化は、野生動物の観察などには最高の結果をもたらし、次は渡りをする昆虫、例えばアサギマダラ蝶などヘと開発はさらに加速している。だがそうすると、当然人間の「盗撮」も問題になってくる。


故に昔と今の最大の違いは「盗撮」に対する刑罰がかなり重いと言う事だ。罰金、社会的な制裁などで、逆に「厳しすぎる」という意見さえある。実は警察でさえ、事件の容疑者を写し続けることはかなりのリスクを伴う。万が一違った場合、高額な賠償金が当然「税金から支払われる」事になるからだ。

 だが、一般的な旅館などにおいて、監視カメラで本当に「監視しているか」というとそうではない。大きな旅館になれば「自動監視システム」があり、コンピューターが「宿泊者の異常行動を察知」し警告をしてくれる。

もちろん、病気の場合もである。

そして国際A級になるとこの監視カメラの電源を入れるか入れないかを完全選択できる。傾向として、年配者はつけっぱなしが多く、若い人間は「消してくれ」と頼む、むしろ当然のことだ。



「朝早起きしようか、きっと元人間は朝の散歩をするだろうから」

「そうだね、そうしよう。どうせ何故だか朝早く目が覚めるんだから」

「寝台車みたいに? 」

「いいさ、神童でゆっくり眠ろう」

「そうだね、お休み」「おやすみなさい」


忙しい朝に備えて二人は眠りについた。





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