第10話 忙しい現実


「今回は調査旅行だったんでしょ? 」僕は二人に聞いた。

「そうだったんだ。海とか温泉地とか、現時点でロボットがあんまりいないところを調査してみた。つまりロボットは好んでは行かないけれど、人間は大好きって場所。実際にロボット制作会社の人もいたよ」

「でも・・・偽物かも」

「そう! ブンさんの発見があったから、先生に調べてもらった。本物だったよ、表面の腐食具合とかを調べていたらしい。でも旅先で会った何となく怪しいロボットたちは、片っ端にリストに挙げたよ、先生大忙しだと思う」

「俺たちが調べることが出来たら、めちゃくちゃ早いのにな」

「さすがに未成年に国民の個人情報は教えてくれないでしょう」


 フーさんの言うことが現実なのだ。だから最近先生はずっとパソコンの前から動けないそうで「君達が年々優秀になってくれるのは有り難いけれど、椅子に長時間座ったままがこんなにきついのかと思った。今まで事務方を馬鹿にしていた罰かな」と笑っている。


「先生って、海外でも有名だったって噂でしょ? 」

「そう、だから開は引っこ抜かれたって事だよ。いいなあ、先生の功績とかも全部知ることが出来るんだから」

「モンさん、将来もこの仕事続けたいですか? 」

「ウーン、考え中かな。でもやってもいい」

「だとすると、それは可能になると思う。明らかに劣悪なアンドロイドが増えている。緑の会った違反者もそうだけれど、「金さえ払えば、永遠に生きられる」と思っているみたい」


「それは馬鹿だろう!! 」部屋中でみんなの声がした。

「メンテにいくらかかると思っているんだ? 」「考え無しだよな」「頭使えよ」

「年だけとった子どもだ」「いやな大人」「恥とかないのか? 」

まあ罵詈雑言が飛び交ったが


「自分がそれだけの人間かどうか判断できるだろう? あ! すいません、俺も絶対に永遠に生きられるほどの能力は無いけれど」

「ハハハハ! 」


大体こうしてこの話はいつも終わる。僕たちだってこの仕事をしているプロなのだから。でもその日は違った。トラベラーズの表情が悲しげだったから。


「どうしたんですか? 」

「緑、僕らは・・・僕らも寝台列車で会ったんだ。でも・・・その人は、その夫婦は・・・決してひどい人たちじゃ無かった・・・」


確かに、法令違反者の中にも、時々心ある人がいる。


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