第8話 夕日の色
村塾最大の特徴は7時過ぎには終わると言うことだ。それはアンドロイドは夜中にうろつくことが少ないし、また僕たちぐらいの年齢の人間が何かをしていると、警察沙汰になってしまう恐れがあるからだ。
「いいよな、緑の行っている塾、時間が短くて。俺もそっちの方がいいな」
「残念だけど、先生が少数じゃないと教えられないって言っているから、空きがないんだ」
「そうか・・・」
クラスメートが残念な顔をするのは、皆見たことがあるそうだ。
僕はママ子と駅の方向が一緒なので、いつも二人で歩いて帰る。
「それ、きれいな色のカーデガンだね」
「ああ、これね、色を吸収しやすい素材なんだって。だから夕日に染まっているのかな」
「普通は何色? 」
「白」
「え! 火山灰が降るのに? 」
「それも落としやすいんだって、鳥の羽みたいに」
うっすらと赤いカーデガン、それはママ子によく似合っていると思ったけれど、白を着てきた気持ちもわかるような気がした。きっと今日あたり、開さんが来ると思っていたんだろう。
ウエディングドレス、どこかにその願いがあった白のカーデガンだったのかもしれない。
「ねえ、緑・・・」
ちょっと改まった感じだったので、僕はドキッとした。
「私・・・もう塾にいない方が良いかな・・・確かにこれから違反者が増えていくだろうけれど、私は皆と一緒に旅行は出来ないでしょ? この前先生と二人で、ちょっと遠くに行っただけで、警察ロボットから「どういうご関係ですか? 」って聞かれちゃった」
「ハハハ、それは聞いたよ。昔だったら「娘です」で済んだだろうけれど、今はそうはいかないからね、未成年と、親でない男が一緒にいるとしかロボットは考えないから」
「でしょ? だったら・・・」
「同年代で日帰りだったら、デートで済むじゃない」
「そうか・・・でも相手がコロコロ違ったら、「要注意女子中学生」になっちゃうかも」
「かもね、ハハハ。大丈夫だよ、ママ子。ママ子にはいて欲しい、先生も僕らもそう思っている。だってママ子の感は僕らとは違うから」
「それだって、たまたまよ」
「たまたまが三回もないよ、実力だって」
その僕の言葉に、ママ子は自然に微笑んだ。
「わあ! 夕日の富士山きれいね」
「ほんとだ」
その日は僕にとってもママ子にとっても忘れがたい一日になった。
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