第7話 中学生と高校生


「どうして三人とも黙っているんだ? 何か僕の言ったことがおかしいんだ。

何だ? 何か重要な事を忘れているのか? 」


ママ子もこの目の前の難問に、自身で必死に格闘しているようだった。


 僕たちがアンドロイドか人間かを判断する場合、時間は重要だ。

例えば今回の様にアンドロイドに水がかかった場合、アンドロイドは声を出すのが遅れる。それはまずは「水」という機械にはあまり良くないものに対する被害状況の確認の方に、回路がまわるからだ。だから言葉を発するのがどうしても少し遅くなる。だがそれもそんなに遅くはならない。

どうも僕たち、この仕事をやっている人間は、一秒よりも短い時間でその異常を察知する。

今回は人間にしては「少し遅い」ぐらいで、アンドロイドとしては極端に早い方と感じた。それにあの言葉

「気をつけろ」なんてアンドロイドは・・・・


「あ!!!!! 」

「やーっと気が付いた緑、良かったまだお前も中学生だな。先輩と高校生の意地が勝利したかな? 」


それから数秒後だった。


「そうか!! そう! 気をつけろ、なんて言わないように作られているはずなのに「言っている」と言うことは、脳だけのデーターの入れ替えがすごく楽に出来るようになったということだわ」


「ママ子ちゃん、そう言うこと。だから開は早々に引き上げたんだ」

「でも結構長く話していたけど」

「緑、話していたの十分位よ」

「本当! すごく長くしゃべった気がする」

「開って話す内容が濃いから、そう思えるんだよな」

「つまり、手土産ができたってことだ。日本はレオナルド・ダ・ビンチ法違反者の実験場所みたいになっているから」

「開さんは主戦場に、僕らは大実験場にいるって事ですか? 」

「そういうことになるだろうな、だからトラベラーズが大活躍って事。

そうそう、今度トラベラーズがそれぞれ別れて、俺たちと一緒に仕事することになるらしいよ」

「そうですか、それは楽しみですね」

「えー じゃあ私置いてけぼり? 」

「ママ子ちゃんは大丈夫、強いから」

「何ですか、それ」

「復刻版、ご当地リカちゃん買ってくるから」

「プラスお土産で手を打ちます」

「ハハハハハ」


ママ子は頭の回転も速いから、話していて楽しい。でも女の子が一人なのは可哀想だなと思ったけど、先生が言うには


「この仕事は特殊だよ、女の子はマミちゃん以外に入れるつもりはない。一人だからって、女王様ぶるわけでもなく、お嬢様気取りでもない。貴重な子だよ、ねえ緑」

だそうだ。

だが、しばらくしてママ子がちょっと席を外して男だけになった時、こう言われた。


「緑、明日日曜だけど、ここで男だけ会議するから、いいか? 」

「はい・・・わかりました」


その後しばらくして、僕らは塾を出た。



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