3F 黄色いカーディガンの先客2
「なんでここに来たか、わかったでしょ」
絶望の浮かぶ表情にしては高い、
わたしはこくりと頷いて、恐る恐る、腰を下ろした。
「
「別に、怯えてなんかないわ」
「じゃあ、どうして震えてるの」
「っ……!」
しかし、消えてはくれなかった。
少女はじっとわたしを見つめてくる。汗が一筋、
「いいよ。話してあげる」
わたしが
吹きつける風は、初夏とは思えないほど冷え切っていた。
""""""""""""""""""""""""""""""""""""""""""""""
父と母が離婚した。始まりはそんな
だから、悲しくはなかった。あの
けれど、母が再婚した後、私は、地獄だと思っていたそれまでの生活が、どれほど
私は涙と
まずは母に
「そんなことあるはずない。彼がやったという証拠を見せなさい」
次に、教師に訴えた。助けを求めた。しかし、眼鏡の教師は微笑をたたえて、あたかもこれこそ最善策であるかのように言った。
「そういう専門の機関があるから、そこに相談した方がいいと思いますよ」
言われるがまま、私はその施設に行き、
私に残された道はもう一つだけしかなかった。
傷を隠すためにカーディガンを羽織り、マスクをして、県外に引っ越していた実父の家を訪問した。
一緒に暮らしていた時には、どうしようもない人だと見下していた父親だったが、
カーディガンを
しかし。
「悪いけど、俺にはどうにもできない」
父は
「相談所とか、学校とか、いろいろあるだろ。そういうところに行くのが一番いいだろ」
(行ったよ。もう。でも、どうしようもなかったからここに来たんだよ)
その瞬間、私は、誰も信頼できなくなった。
大人たちの言うことは、
扉の閉じる音。その日、私は希望を失った。しばらく家の前で立ち
降り出した
彼はひとしきり私の顔を、腕を、腹を、背中を、殴り、蹴ると、言った。
彼は私を問い詰めた。緊張と痛みと恐怖とで、気を失いそうになると平手打ちが飛んだ。
(あぁ……)
心の中の、やけに冷静な自分が呟いた。
(結局、だれも助けてくれないんだ)
全てが空回りだった。逆効果だった。私にはもう、どうすることもできなくなった。
何笑ってんだ、と
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます