2F 背の低い先客2
いじめが始まったのは中学生の頃だった。
小学校時代の友だちは皆、別の学校に通うことになり、私はたったひとりで
不安はあった。けれど、期待もあった。これから新しい出会いが
初めは何も問題なかった。少ないながらも、話せる友人が出来た。
「何も問題ないじゃない」
そう言って少女は
「そこまでは、何の問題もなかったんです。でも、二学期になってから、みんな、話してくれなくなりました」
「突然?」
「はい」
その時こそ
無視から始まった。次第に持ち物がなくなることが増えた。
こんなことになるなら約束を断ったりしなかったのに、と何度も後悔した。
「女の世界は怖いからね」
彼女は笑う。どこか疲れたような、大人びた笑みだった。
しかし、少女は「それだけのことで?」と眉をひそめて言うことはなかった。他人なら、普通そう言いそうなものなのに。
「でも、中学生の頃はまだましだったかもしれません。身体を傷つけられることはなかったから」
中学校を卒業するとき、高校生になれば大丈夫だと思った。
しかし、そんなものは都合のいい
「やっぱり、みんな、わかるんですかね。この人は
中学時代に私を
それなのに、私を取り巻く環境は変わらなかった。それどころかさらに悪化した。
涙が
「さあね」
少女はぐぐっと
「トイレの中に閉じ込められたこともありました。靴の中に
「……」
「
「それで、結局通い続けてるのね」
「はい」
「家出るふりしてどっかで時間つぶせばいいじゃない」
そんなこと、私だって何回も考えた。けれど、そんなことできるわけない。理由は母に現状を言えなかったのと同じだ。
「いずればれますよ、そんなの。そのとき、何て言えばいいんですか。どうやっても、言わなきゃいけなくなるでしょ。私の、現状を」
「うん……」
いつからだろう。少女の顔から薄笑いが消えていた。相談じゃないと、彼女は言った。その割に彼女は私の話を真剣に聞いているらしかった。
「でも、辛いのに変わりはないから、だから、ここに来たんです。ここから飛び降りたら全部終わるからって」
「そう」
「けれど、私にはそんな勇気さえなかったんです。このまま生き続ける自信もないし、死ぬ勇気もない。そんな私は、いったいどうすればいいんでしょうね」
ここは生と死の境界だ。
飛び降りる、すなわち死。引き返す、すなわち生。
そのどちらを選ぶことも辛いけれど、どちらかを選ばなければならない。
「あなた変な子ね」
「えっ?」
首をかしげて少女を見ると、なぜか彼女も同じ仕草をしていた。
「何が、ですか?」
そう聞くと、少女はくすっと小さく笑って言った。
「だって、悩まなくていいことで悩んでるんだもん」
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