街を守る戦い−2

イボーグが照屋時生の作った異次元に突っ込んでから、空に見たこともない異次元の歪みと同時に聞いたことも無い異音が響き渡たり、それを愁達も違う場所から目の当たりにしていた。



(ここからは愁の語りでお送りします)


「三条先輩‥あれは何ですか!?」


初めて見る衝撃的な光景に僕は驚きを隠せずに声を上げ、すぐ隣にいた三条先輩は厳しい目を向けて言った。


「あの場所に居るのは葉也だ」


(アリア)「えっ?という事は‥」


前から聞いていた篁社長の息子の、怪人イボーグに変身する葉也くん。状況がよくわからないが彼が大変だと言う事だけは皆んな解っていた。


「このままではやばい。行くぞ」


三条先輩が急ぐように言うと、僕と三条先輩と水池先輩、アリアはその方向に走った。向かった先の異次元の真下には、ストロークとアノメイオス、照屋時生がいた。


「葉也はどうなった」


三条先輩の言葉にそこに居た照屋時生が勝ち誇るように笑みを浮かべて言った。


「はっはっはっ、葉也君は自身が生まれ変わりたいという願望ディザイアの元に、私の元に来た。

彼は最高の前奏曲オーバチュアだ。イクアージョンから生まれた我らのディサミナージョン、それをいくつも 集め出来た私の異次元はイボーグの手によって最高の侵略へと導くのだ」


「葉也、お前は騙されている、戻れ!」


「篁社長、今ならまだ間に合うかもしれない、僕、葉也君を救いに行きます!」


僕が篁社長ストロークの気持ちを鎮めようと、やみくもな正義感でそう言った時、水池先輩が音もなく前に出た。


「ただ行っても駄目だ。彼はあの異次元に取り込まれ、更に同化しようとしている」


水池先輩はぱっと見は無関心なようで、自分と同じような性能を持つ照屋時生の異次元に対抗心を持っているようだった。先輩は空に奇怪な電子音を立てて動き続ける異次元を見据えイクアージョンを胸に翳すと変華し、ディメンションと時生の持つ異次元同士の戦いが始まった。


「君、どうせなら私の世界においで。こっちの方が楽しいよ!」


ディメンションは異次元の中で浮遊するイボーグにそう言ったが‥その誘い方もどうかと僕は思った。


「時既に遅し、すでに彼は私の手の中だ」


冷酷に失笑する時生をよそにディメンションはその場から動かず何かをし出した。すると点の集大成が紫のオーロラのようにイボーグを取り囲む異次元の周りに集まると、その周りだけディメンションが作り出したフィールドが出来、照屋時生の異次元を自分の世界に変えたのだ。


「僕、あの中に行ってきます!」


「水池君、私も行くわ」


僕の後にアリアもディメンションの異次元の戦いに参戦しようと言ってきた。しかし僕は首を振って言った。


「僕一人で大丈夫だよ。水池先輩ディメンションの世界には何度も行っててあの中では結構レベル高いんだ。今なら勝てる筈だから」


「そう、解ったわ‥気をつけて!」


そう言ってイクアージョン スラッシュに変華した僕は一瞬視界が乱れディメンションに取り込まれると、彼の世界に入って行ったのだ。


今までの景色がまるでゲームグラフィックのように変化し、僕は空の異次元世界というフィールドを確認するように辺りを見渡した。鶫のように細かく羽ばたきながら、空中でのCG酔いをどうにか解消させながらも注意深く目の前に居るイボーグに対峙した。


彼が強いのは自覚している。だけど建前的にもアリアにカッコいいところも見せたかったんだ。しかもこの世界での僕は多分三条先輩達よりレベルが高い。筈‥


「これをゲームだと思っているのか?そんな子供騙しに容易く倒せるのならばこの世界はとっくに我の手だ!」


照屋時生は失笑しながら僕を見ている。たしかにそうなんだ。けど、僕は彼を倒さなければいけない。この世界に居る僕ならきっと、いとも簡単にクリア出来る!そんな慢心の気持ちでイボーグに炎の攻撃を放ち続けた。


その時、異変が起こった。照屋時生の異次元と一体化していくイボーグは圧縮されたように突然特殊な光を放った。


「な‥何だ‥これ!?」


巨大なイクアージョン、否、ディサミナージョンと言えるような一塊へと進化した。

更に稲妻が轟と共に天地を貫くと、そこから新たな人型のイクアージョンやディサミナージョン と同じような者が現れ飛び出してきた。


「愁くん!」


現実の世界からアリアの声、更に照屋時生の声が聞こえてきた。


「彼らは人を解さなくても戦う事が出来る人外戦士ディスペラージョンだ。ディスペラージョンよ、奴らのイクアージョンを全て奪い取れ!」


僕は想定外の事で思考回路が狂い出した。「水池、愁を戻すんだ」と言う三条先輩の声も聞こえ、格好悪いと共に焦る気持ちの中で僕は意を決した。


僕は最大級の力でディスペラージョンに立ち向かう!

空中で身を低く、片足を滑らせながら回転するとつま先から摩擦で出来た大きな炎輪が発生した。それが炎の嘴ファイヤービークとなった鋭利な突起物を何個も作り出し、ディスペラージョンに向けて飛び放った!!


鳥のように追いかける炎のファイヤービークは次々とディスペラージョンに直撃し、その周りを赤い火花が舞い散らした!


『やったのか!?』


僕がそう思ったその時、僕の放った炎をものともせずにディスペラージョンが構えた。


ぼっ!

ディスペラージョン自身が真っ赤になった瞬間、灼熱の塊が僕に向かって飛んで来た!


「ぎゃぁあ、火の、火の塊が飛んで来たぁ!」


突如自分の作り出した炎より更に巨大なマグマが現れた。巨大な灼熱の塊を目の前に、僕は炎に直撃しようとした‥



僕の視界はテレビの砂嵐のような粒子に覆われ、気がつくと自分の世界に戻っていた。


僕の視界にはディメンションが異次元の中のディスペラージョンに立ち向かっていた。


「私の中でお眠りなさい!」


ディメンションは叫びながら自分の攻撃力とゲージを上げ続けた。しかしディスペラージョンのマグマの攻撃に追いつかず一気にディメンションのゲージが下がっていく。


「このままで水池は終わる!解除しろ!」


0になる寸前で、水池はディメンションを解除し、異次元の中のディスペラージョン達もこの世界に姿を現した。

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